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第五十八話 第一回報告会

有織はべりです。

拙文ですが、お読みいただき、楽しんでいただけると嬉しいです。

 球技大会の片付けも終わり、放課後になった生徒会室。そこには俺と天崎、そして久しぶりに会う神さまの3人がいた。ホワイトボードには天崎の字で「5月の報告会!」と書かれている。


「それじゃあ、みんな揃ったところで、今月の報告会を初めるよー」

「待て待て待て、始める前に説明を頼む。報告会とか初めて聞いたんだけど?」

 

 俺の隣に座っている天崎が何の説明もなく話し始めたので、思わずつっこんだ。 


「? 名前の通り、報告をする会だよ?」

「いや、そんなことくらいはわかるわ。具体的に何を報告する会なのか教えてくれ。あれか? 生徒会の業務の進捗とかか?」

「いやいや高原くん、そんなことのためにわざわざ報告会なんてしないよ? それに、もしそうだったら、わたしと高原くんの二人だけでいいし、別に神さまいらないじゃん」

「そんなことってお前……あと、たとえそうだったとしてもその言い方よ」


 天崎って割とこういうストレートというか歯に衣着せない言い方する時あるよな……俺が言えたことじゃないけど、こいつもちょっとはデリカシーの勉強をした方がいいような気がする。


 いくらそれが事実で、相手を傷つける意図がなかったとしても、いらない呼ばわりはどうなんだろうか。見た目が幼い女の子をしているせいか、神さまがさっきの天崎の言葉をどう感じたのか気になってしまう。


 だが、そんな俺の予想に反して、神さまはあっけらかんと笑っていた。俺と目が合うと、神さまは何もない空間からプラカードを取り出す。改めて目の前の幼女が不可思議な存在だということを実感した。プラカードに文字が浮かび始める。

 

『あはは~気にしなくていいよ高原くん。昔から日縁ちゃんはこんな感じだし、もう慣れちゃってるから~』

「なるほど。神さまも苦労してるんですね」

「ちょっとちょっと! 二人してわたしが気遣いのできないダメなやつみたいな言い方はやめてよ! 言っておくけどあんな感じの言い方は、そうやっても大丈夫な相手にしかしてないからね? 普段はちゃんと話し方とか気を付けてるから!」

『うんうん、わかってるよ? でも日縁ちゃんってそれが極端すぎるんだよね。仲のいい子とそうじゃない子への態度がハッキリしすぎてるって言うのかな? 私や高原くんやみたいな親しい相手だと何も隠さず本音でおしゃべりしちゃうけど、そうじゃない相手には過剰なくらい全く隙が無いというか、絶対に素の自分を見せようとしないんだよね~』

「ああ、たしかにそういう所ありますね」


 神さまが言ったみたいに、天崎の他人への距離感は近すぎるか遠すぎるの二択で中間がないイメージだ。会長モードがそのいい例だろう。そういえば、ゴールデンウィークに遊びに行った時、誰が見てるのかわからないのに素の自分で話せるわけない、って言ってたっけ。天崎は素の自分を隠すことを徹底している。


『それが別に悪いことだとは言わないけどね。でも、昔から日縁ちゃんを見守ってる身としては、もう少しでいいから、自分の素を見せられる相手のハードルを下げた方が生きやすいんじゃないかなーって思っちゃって、ちょ~っと心配なんだよね。あ、そうそう、それだけじゃなくて他にも心配してることがあってね~』

「ほうほう……」

「待って待って二人とも! なんで急にわたしの人生相談みたいなこと始めてるの!? 今日はそんな会じゃないから! 報告会だから! わたしと高原くんの縁の問題が今どんな感じになってるのか、神さまから報告してもらう時間なの!」

「報告会ってそういう時間だったのか」


 なるほど、縁の問題を報告してもらうから、この場に神さまがいるわけね。

 いや、こんなん報告会って言われただけじゃ絶対わからんわ。こんなこと急に始めるなら、もっとわかりやすい名前にしておいてくれ。


「そういうわけだから、縁の問題に関係ない話は禁止! というわけで神さま! 今月でわたしたちの問題がどれくらい治ったのか教えて! 具体的にはあとどれくらいで完治して生徒会を辞められるのか!」

「お前……この前そんな感じのぐうたら発言をしたせいで、具体的なこと教えてもらえなかったこと忘れたのか」

「…………縁の問題が治っても極力、できる限り、可能な範囲で生徒会を頑張るから教えて神さま!」

 

 指摘してやると、少しの沈黙の後、焦った表情になって天崎が神さまから露骨に視線を逸らした。

 絶対忘れてたなこいつ。あとせめて言い訳するなら、ちゃんとしろよ。言い訳になってないレベルで生徒会やりたくない欲があふれ出てるんだよ。隠しきれてない本音に神さまも苦笑いしてるじゃないか。


『あ、あはは、まあ、縁の問題が解決した後の生徒会に関しては二人に任せるよ。でも日縁ちゃんがそんな感じだから、やっぱり具体的なことは今回も教えてあげません~』

「そ、そんなっ!?」

「いやなんでショック受けてんだよ。順当すぎる対応だわ」

「逆に高原くんは何でそんなに冷静なの!? 先の見通しがわからないのってしんどすぎるでしょ!? わたしたちは今、ゴールの見えないマラソンをやらされてるんだよ!?」

「あー……多分だけど、あんまり縁の問題の実感がないからだと思う。天崎と違って、そもそも自分の縁の問題がどんな内容なのかわからないし」

「そう言えば高原くんにどんな問題があるのか不明のままだったね……なんだっけ? 約束があって教えられない、だったっけ? そこのところはどうなの神さま?」

『ごめんね、日縁ちゃんが言った通り、約束があるから詳しいことは教えられないんだ。でもあんまり気にしなくても大丈夫だよ? 前にも言ったけど、高原くんは可愛くて性格も良い素敵な子と一緒になるから~』

「って確約されてるから、正直、そこまで問題を深刻に考えてないせいもある」

「この裏切り者ーーーーーー!!」

「うん今のは俺が悪かった! 煽ったのは悪かったから落ち着け!」


 椅子から立ち上がってとびかかってこようとする天崎の両肩を掴んで、それを阻止する。


「うぎぎぎぎぎぎぎ……! た、高原くんってさ……! ほんっと無駄に筋力あるよね……!」

「いや、お前がなさすぎるだけだと思うぞ……」


 そこまで力を入れてないのに、さっきから全く立ち上がれそうな気配すらない天崎。


 体格から何となくわかってたことだけど、こいつこんなに力なかったのか。

 思いの外、こいつの肩が小さくて華奢なことに驚いた。


 しばらく必死に悪戦苦闘していた天崎だったが、自分の力じゃ勝てないことに気づいたようで、立ち上がるのを諦めて、疲れ切った様子で椅子に座りなおした。肩で息をしてるあたり、さっきまでのは割とガチだったらしい。少しは落ち着いたようなので天崎に肩からそっと手を離した。



「ぜぇ……ぜぇ……ち、ちくしょう……もっとわたしに背丈と筋肉があれば、高原くんをワンパンで血だまりに沈めてやれたのにぃ……!!」

「恐えよ!? お前がロリでほんと助かったわ……」

「わたしは今ほど自分のロリ体型を憎んだことはないよ……! うぅ……! 身長も普通にあるし、縁の問題だって内容はわからないけど気にしなくてもいいようなレベルだし、なにより幸せな未来が確定してるなんてズルいよ! そんなのもうチートだよチート!」

「どう考えてもお前の方がチートくさい性能してるだろ……めちゃくちゃ整った容姿してるし、成績は学年トップクラス。さっきみたいに力はないけど、今日の卓球の感じから見て運動神経も悪くないし、なにより男女問わず人気がある。縁の問題で恋愛対象になれないことを除けば、俺なんかと比べ物にならないレベルの、とんでもないハイスペック女子だろうがお前は」

「……なに急に? いくらわたしの機嫌を直したいからって、そんな取ってつけたみたいに褒められても無駄だよ、まったく……これだから高原くんは……」


 どこか不機嫌そうにそう言って、そっぽを向く天崎。だけど、天崎が向いた先には神さまがふわふわ浮かんでいて、


『あら~日縁ちゃんったら~どうしたのかな~そんな顔を赤くしながら、にやにやしちゃって~』

「神さまーーーーーーー!?」


 神さまから盛大なネタバラシをくらっていた。

 後ろ姿からでもはっきりわかるくらい慌てた感じの天崎と、いつも俺をいじっている時の天崎にそっくりな表情の神さまの姿に、はたから見たらいつもの俺と天崎もあんな感じなのか、なんて思った。


「してないから! 違うからね高原くん! わたしは断じて、一切、そんな顔してないからね! わたしはそんなチョロい女じゃないから!!」

「お、おう、そうなのか?」

「うん! どうして疑問形なのかは気になるけど、とにかくそうなの!! ていうか神さまも急に何言ってるの!? 神さまなんだから、嘘つくのはよくないと思うんだけど!」

『え~嘘じゃなくて本当のことしか言ってないよ~』

「騙されちゃだめだよ高原くん! この見た目が幼女の邪神、さっきから嘘しか言ってないからね!!」

『そんな恥ずかしがらなくてもいいのに。高原くんに褒められて嬉しかったんでしょ~?』

「は、はぁ~!? な、何を言ってるのかなこの嘘つきは~!? べ、別に恥ずかしがってなんてないからね!?」

『日縁ちゃんも強情だね~じゃあ、私が嘘をついてるかどうか、今の日縁ちゃんの顔を高原くんに見てもらって判定してもらおっか。もしそれで高原くんが、私の言ったことが嘘だって思ったら、そうだな~縁の問題の解決にかかりそうな具体的な期間とか教えてあげてもいいよ~』

「上等だよ! むしろこんなの勝ったも同然! 今、具体的なこと教えてくれるって言ったからね! 後になって、やっぱりなしとか許さないから!」

『うん、ちゃ~んと教えてあげるよ。神さまが約束してあげる。だからほら、日縁ちゃんは早く高原くんにそのお顔を見せてあげて~』

「わざわざ言わなくてもわかってるよね高原くん! これがわたしたちにとって物凄いチャンスだってこと!」


 真実はともかく嘘の判定を出せ、という天崎の声にならない声が聞こえた気がする。

 まあ、確かに具体的なことを知るチャンスだけど、だからといって嘘をつくのはどうなんだ……なんて思っていると、ゆっくりと天崎はこっちを振り向いた。


 何故か顔を真っ赤にして、にやけた顔にならないよう必死で口元をもにょもにょさせている天崎が、そこにいた。わかってるよね!? みたいな目でじっと俺を見ている。


『それで高原くん、判定はどう? 私は嘘つき? それとも正直者かな~?』

「えーっと……はい、神さまは正直者でした」

「高原くん!?」


 いやだって、誤魔化とか不可能なレベルで照れてるようにしか見えなかったんだって!? あと、なにより神さま相手に嘘をつくとか後で何かとんでもない罰とかあたりそうだったし……。


『うんうんやっぱり高原くんは素直でいい子だね~そういうわけだから日縁ちゃんが高原くんに褒められて喜んじゃったのは事実だし、残念だけど具体的なことも二人には教えてあげられないってことで~』

「ちょっと高原くん、本当になんてことしてるの!? 具体的なことを聞き出せる貴重なチャンスなんだから、そこは嘘でもいいから、神さまを嘘つきにしておくべきでしょ!?」

「言ってることが最低すぎる! そもそもお前が嘘つかなくてもいいような顔してればよかったんじゃないのか!?」

「し、してたもん! そりゃあもう冷静沈着な顔してたもん! 高原くんにはわからなかったのかもしれないけどね! 節穴もいいところだよまったく! そういう細かい変化に気づかないから彼女ができないんだよ?」

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!? そういうこと言うかこいつ! 顔見せろ顔! 今すぐスマホで撮ってどんな顔してるのか見せてやる――あ、てめ逃げるなこら!」

「ふーんだ! 逃げるに決まってるでしょ! 断りもせず女子の写真撮ろうとするなんてサイテー!」

『あははは! うんうん、二人とも先月よりずっと仲良くなったみたい何よりだよ~』


 逃げる天崎にそれを追い回す俺、そしてそんな俺たちを見ながら、まるで子供を見る親のような穏やかな顔で頷く神さま。結局この後もずっとこんな感じであーだこーだと俺たちは騒いでいた。


『縁の問題についてだけど、今月は特に大きな問題もなかったし順調そのものだったよ~これからもこの調子で二人とも頑張ってね~』


 そしてひとしきり騒いで落ち着いた後、報告会の続きを始めたのだが、神さまのそんな言葉で、第一回、縁の問題報告会はあっさり終わったのだった。うんまあ問題もなく順調だったら話すことも特にないし、当然そうなるよな。


 これから報告会は毎月やるって言ってたけど、なんとなく、毎回こんな感じで終わりそうな気がした俺だった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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