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第五十四話 二人三脚でドッジボールをしてください

有織はべりです。

拙文ですが、お読みいただき、楽しんでいただけると嬉しいです。

 二人三脚ドッジボールとは!

 天崎と俺が考えた今年の特別競技である!


 その名の通り、二人三脚をしながらドッジボールをするというシンプルな競技であり、ルール以下の通り。


 ①、男女がペアとなってお互いの足をひもで結び、その状態でドッジボールを行う。

 ②、外野はなし。外に出たボールは、投げた側の相手チームに与えられる。

 ③、通常のドッジボールと違い、ボールを当てられても退場はなし。相手をボールで当てたチームに1ポイント入る。紐がほどけてしまった場合は相手チームに2ポイント。

 ④、試合時間は10分間。その間により多くのポイントを獲得したチームの勝利。


 という感じの簡単な競技だが、この競技の目的が異性交遊の促進ということを忘れてはいけない。

 このルールの裏にある思惑はというと、


 ①、男女ペアの二人三脚という状況を作り出すことで、必然的に男女の距離を近くすることができる上に、勝利という同じ目標に向かって協力する体制を自然な形で生み出すことに成功する。

 ②、普通のドッジボールのルールのままだと、動きづらい二人三脚状態の場合、すぐに試合が終わる可能性がある。そのため外野はなしにして、試合も時間制限付きのポイント制に変更する。

 ③、以上のことから、少なくとも10分間は男女ペアの二人三脚状態を維持することができる。あとは、10分間という短い時間ではあるが、ペアである異性を意識する機会が訪れることを祈るのみ。もしそうなったら儲けもの。

 ④、二人三脚でドッジボールをするだけなので、既存のルールを変える必要がほとんどない。道具もボールと紐だけでいいので、準備の時間的にも予算的にもとても楽ちん。色んな面倒ごとが減る。


 とまあ、こんな感じである。

 今更だけど、よくもまあこんなしょうもない理由から特別競技を考えたもんだ。

 異性を意識する機会が訪れることを祈るってお前……まあ実際、絶対に意識するとは言い切れないからそうなるんだろうけど……。

 

 今まさにグラウンドの真ん中で行われている3年生の試合を見ていると、そんなことが起きるような気配は今のところ全くない。

 競技が始まる前までは、ほとんどの先輩方が慣れない二人三脚状態に恥ずかしそうにしているような雰囲気はあったが、試合が始まるとそんな感じは一瞬で吹き飛んでしまった。


 バスケや卓球を見てもわかるように、うちの球技大会は部活勢が自分の部活に出場するほど、割とガチで勝ちに行くのが普通であり、その例の漏れず、この二人三脚ドッジボールも、試合が始まると全力で勝ちを狙うような試合になっていた。


 本気でボールを投げるのは当然のこととして、ポイントを効率よく稼ぐために一番弱そうなペアに集中砲火したり、避けにくい足元ぎりぎりを狙ったりと、そこにお遊びの気配は微塵もない。

 

 避ける側も、動きやすいように互いにがっちり肩を組んでコート内を走り回っており、息を合わせてジャンプやしゃがみを駆使しながら、上手くボールを回避している。


 そこに異性を意識するとか、そういった嬉し恥ずかしな感じの雰囲気は一切、存在しなかった。

 間違いなく、誰も彼も、自分たちの勝利しか見えていない。

 周りの生徒たちも熱のこもった応援をしていて、まるでお祭り騒ぎだ。けど、野次を飛ばさないあたり、うちの学生は変なところでお行儀が良い。


 うーん……勝利への熱量がすごい。去年もそうだったけど、うちの生徒って基本的に学校行事に全力なやつ多いよなぁ。むしろ俺みたいに、何事もほどほどが一番、って感じのやつは少数派なのかもしれない。

 

 そんなことを考えてる自分を実感して、全力で盛り上がっている生徒たちを見ながら、少しだけ疎外感を覚えた。


 って、今はそんな感傷に浸ってる場合じゃないだろ俺! この後、俺もあそこでドッジボールしないといけないんだから! 


 時間制限付きのポイント制というルールのおかげで、10分間は試合をしてない生徒に見られ続けるという地獄が待っている。しかも、例のごとく学年ごとの総当たり戦なので少なくともそれが3回はあるわけで……うっ、想像したら胃がきりきりしてきた……そんな長時間、女子と二人三脚するのもきっついし……。


 二人三脚ドッジボールの出場人数は男女各5人ずつの計10人。

 男女でペアを組むのはルールで決まってるので、男子同士で組むこともできない。


「え、自由にペアを組めたら、絶対、同性同士で組むに決まってるじゃん。その方が気分的に楽だし。あと、うちの学校、ガチで勝ちに行く人ばっかだから、強い男子同士で組むのが目に見えてるもん。そうなったら、わたしたちの努力が水の泡になっちゃうから、ちゃ~んと、男女でペアを組むこと、ってルールを作っておくわけ」


 特別競技のルールを決めてた時、天崎が不敵な顔でそう言っていたのを思い出す。あの時は、特に気にも留めず普通に同意したけど、余計なことをしたと激しく後悔する。

 

 つまり、そんなルールのおかげで自分の首を絞める羽目になった俺は、5人いるクラスメイト(女子)の中の誰かとペアを組まないといけないわけだが……ゆーちゃん以外、ほとんど話したことない女子ばかりだった。それは流石に気まず過ぎる。


 だから、ゆーちゃんと組むのが俺の心情的に一番、良いんだけど……そうするとゆーちゃん効果でめちゃくちゃ目立つのが確定するというか、他の男子からの目が恐そうというか……。


 午前中のバスケを思い出して背筋が寒くなる。

 応援だけであんなことが起こったんだから、二人三脚なんてやったら、今度こそ俺は学校中の男子から嫉妬で殺されるんじゃなかろうか。特に一緒に出場するクラスメイト(男子)の目がヤバそう。

 人気アイドルと二人三脚をするなんて、一生に一度どころか何度生まれ変わっても起こらなそうな貴重すぎる機会だ。どんな手段を用いてでも、手に入れようとする危険がある。


 身の安全を考えるなら間違いなく、ゆーちゃん以外の女子と組むのが一番いいだろう。気まずいのは確かだけど、少なくとも嫉妬に狂った生徒(男子)から逃げ回るような目には遭わないはずだ。


 けどそうすると、ゆーちゃんは当然、俺以外の男子と組むことになるわけで……その光景を想像すると心がとても、もやっとしてしまう。


 ああもう、何様だ俺! 別に俺とゆーちゃんはそんな風に思うような仲じゃないだろ! 

 そもそも最初から答えは決まってるはずだろうが……! 俺が組むべき相手は――

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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