第五十三話 特別競技の発表
有織はべりです。
拙文ですが、お読みいただき、楽しんでいただけると嬉しいです。
天崎が同じ学年の卓球部の連中を、顧問による地獄レッスンに叩き落としていくのをぼんやり見ていると、あっという間に時間は過ぎていき、ついに、球技大会で予定していた特別競技以外の全ての競技が無事終了した。いや、終了してしまった。
現在、開会式の時と同じように全校生徒がグラウンドに集められている。特別競技の内容を発表するためだ。
生徒たちはどこか楽しそうに騒がしくしており、今年の特別競技はどんな感じになるのかを話している。
そういえば、去年もこんな雰囲気だったなぁ……なんやかんや、みんな特別競技に興味津々かよ。いや、そんな特別盛り上がるような内容でもないし、そこまで興味を抱かなくていいんだよ? 多分、わざわざ観戦するほどのことでもないから、特別競技なんて見てないで校舎裏とかで友だちと話してる方が楽しいし、それを激しく推奨したい! 観戦する生徒数をちょっとでも減らしたい!
球技大会の他の競技が全て終わってるので、必然、特別競技は全校生徒が注目する中で行われる。
なので、特別競技に出る生徒はものすご~く目立ってしまうのだ。
ははは、今すぐにでも帰りたい。もしくは誰にも見られない空間でやらせて欲しい。校庭に隕石でも落ちて来て中止になったりしないだろうか。
そんな思いで空を見上げるが憎らしいくらい快晴。隕石どころか雨一つ降りそうにない。こんちくしょう。もっと頑張れよ隕石ィ! もうこうなったら仮病でも使って休んでやろうか。
そんな良くないことを考えていると、隣に立っている俺と同じ特別競技に出る予定のクラスメイトが、どこかわくわくした様子で話しかけてきた。
「空ちゃん、一緒に頑張ろうね!」
両手をぐっと握りしめて、やる気満々のゆーちゃん。
競技の中身を知らないのは幸せなことだなぁ……なんて思う俺。
いやでも、俺にとっちゃ隕石を願うレベルで嫌だけど、ゆーちゃんにとったら嫌じゃないかもしれない可能性もあるか。アイドルやってるし、少なくとも俺よりは、目立つことに慣れてるのは間違いないだろうし。まあ、目立つ以外にも問題はあるんだけど……。
なぜなら、今年の特別競技の根底にあるのは異性交遊の促進であり、異性を意識することを前提に競技を作ってあるからだ。
露骨すぎるのは良くないけど、これくらいやれば普通は意識するんじゃない? みたいな感じの競技を天崎と二人で考えるのは、正直に言おう、めちゃくちゃ楽しかった。なんか軽い深夜テンションみたいになってたし。
遊びの予定を立てる時とかそうだけど、友だちとわいわい話し合って色んなこと決めるのって、なんか楽しいんだよなぁ……。
出来上がった内容を見て、これに出る奴、人にもよるけど大変だろうなぁ……特に異性に免疫がない奴とか、なんて能天気に考えてたあの時の俺に忠告してやりたい。当日、それにお前は出ることになるんだぞ、と。
ちくしょう……! もし出るのがわかってたら、絶対もっとマシな内容にしてたのに……!
そんな過去の自分を思い出して現在進行形で後悔している俺とは対照的に、ゆーちゃんは、まるで出来立ての人気アトラクションで自分の順番を今か今かと待ってるみたいに、テンション高めでわくわくしていた。
「……なんかゆーちゃん、めちゃくちゃ張り切ってるな」
「うん! だって、こうやって空ちゃんと一緒に学校行事に参加するの初めてだもん! 小学校の時は空ちゃんや竜也とは別の学校だったし、去年は同じ学校だったけど別のクラスだったし……ずっと幼馴染の中で私だけ仲間外れだったんだから!」
「あー……なるほど」
言われてみれば、ゆーちゃんの言った通り、一緒に学校で何かするのはこれが初めてかもしれない。
小学校も学区が違ったから別々だったしな。ゆーちゃんの引っ越しがなかったら同じ中学だったかもしれないけど。高校にしても、今年同じクラスになるまで、ゆーちゃんとは学校行事どころか話したことすらなかったし。
仲良し幼馴染三人の中で、ずっと自分だけ一緒じゃなかったゆーちゃんにしてみたら、ようやく三人が同じクラスになれたのだから、そんなテンションになるのも納得である。
特別競技に出ることが決まった日にも、一緒に特別競技をできるの楽しみにしてる、ってめちゃくちゃ嬉しそうにしてたのは、そんな気持ちを抱えてたからだったのか……なるほどなるほど……うん、いよいよ特別競技から絶対に逃げられなくなったな!!
さすがにゆーちゃんのそんな気持ちを聞いて、特別競技を休むことはできない。もう完全に逃げ道がなくなってしまった。
うん、まあ、生徒会役員的にもサボるのはよくないしな……あぁ……でも嫌なもんは嫌だなぁ……けどゆーちゃんのためにも頑張れ俺……!
そんな感じで腹を括っていると、ゆっくりと朝礼台の上に天崎が立った。
そして天崎は、騒いでいた全校生徒が静かになるのを待ってからゆっくりと口を開くと、
「これから特別競技について発表します。今年の特別競技は――」
まるで裁判長が判決を言い渡すように、その競技名を告げた。
「二人三脚ドッジボールです」
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
よろしければ、ご感想や評価などをいただけると嬉しいです。




