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第五十二話 後半戦は卓球から

有織はべりです。

拙文ですが、お読みいただき、楽しんでいただけると嬉しいです。

 午前中の競技が終わり、昼休みを挟んで球技大会の後半戦が始まる。


 帰りてぇ……!!


 午後一発目の競技である卓球の試合を体育館で観戦しながら、俺は激しくそんな気持ちになっていた。


 急にバスケに出ることになって、そこでめっちゃゆーちゃんに応援されて目立ったり。

 妹にからかわれてたらゆーちゃんが恐ろしい雰囲気を醸し出して、海音が本当に妹なのか疑い始めたり。

 そしたらゆーちゃんに俺のあることないことを妹が話し始めて、何故かゆーちゃんは落ち着いたけど、途中からどう考えても俺をからかう目的で話してただろう海音に説教したり。

 説教から戻って来たらゆーちゃんにものすごく申し訳なさそうに謝られたり。


 午前中からそんな色々なイベントに巻き込まれ続けて、体力的には問題ないが精神的にもうお腹いっぱいである。しかもこの後、さらに精神的に疲弊するのがわかってるので気分は憂鬱。


 今からでもいいから特別競技の出場を辞退できないもんだろうか。この後の試合全部がめちゃくちゃ延長戦になって、特別競技をする時間が無くなっちゃいましたとかになって欲しい。


 しかしそんな俺の願いもむなしく、現在、非常にスムーズに、何の問題もなく球技大会は予定通りのスケジュールで進んでいる。いい感じのハプニングとか起きてくれてもいいのよ? まあ、そんなことはありえないだろうけど。


 お、天崎だ。そういえば、卓球に出るって言ってたっけ。

 

 そんな感じで現実逃避しながら小気味良いラリーの音を聞いていると、試合をしてる集団の中に天崎を見つけた。思い出すのは、球技大会の予定を決めていた時に天崎が言っていたこと。


「え? 今年は何に出るつもりなのかって? そんなの卓球に決まってるじゃん。だって卓球が一番、疲れなさそうだし」

 

 こんな、俺とまったく同じような理由で卓球を選んだのに、どうしてあいつは普通に卓球に出れて、俺は特別競技とバスケの二種目に出場するという目に遭ってるのか。

 

 ちょっと不公平じゃないですか卓球の神さま! もしかしてあれか? あいつが美少女で俺がフツメンだからですか!? 神さまの世界にも、顔面格差社会が存在するなんて聞いてないですぞこんちくしょう!


「それにさ~一応はわたしのイメージって何でもできる優等生って感じじゃん? 一応そのイメージは守っておいた方がいいかなーなんて思うわけで……でも、わたしみたいなチビじゃバスケとかバレーなんかに出たら、悲惨な結果になるのは目に見えてるでしょ? 主に身長のせいで。だから、他の競技に比べて肉体的なハンデも比較的少ない卓球にしたってわけ。と言っても、別に卓球がそこまで上手いわけでもないんだけね~。ま、それでも他の競技に出るよりはイメージが壊れないでしょ」


 なんて、割とちゃんとした? 理由があったから神さまが卓球に出るのを許可してくれたんだろうか? もしかすると、神社の娘だから神さまと名のつくものに愛されやすかったりするのかもしれない。うんまあ、間違いなく違うだろうけど。純粋に俺の運が悪かったんだろうな。


「あと、高原くんにはわからないと思うけど、無駄におっきいこいつらが運動の時めっちゃ邪魔なの。流石に2キロはないと思う――というか思いたいけど、間違いなく1キロは確実にあるからね、これ。重いから揺れるとけっこうしんどいし、激しく動いたりなんてしたら普通に痛い時もあるんだから。

 わかる高原くん? こんな風に、常に1キロ以上の重りをつけて生活するわたしの気持ち。めちゃくちゃ不便だからね? 猫背気味になっちゃうしさー……きっと背が伸びなかったのも絶っっっっっっっっ対に、こんな重いものぶら下げてるせいに違いないよ! うぅ……しかも未だに育ってるし……」


 やばい、あの時あいつが言ってた、余計なことまで思い出した!


 うっかり思い出してしまったのは、自分の豊満な胸を下から持ち上げるみたいにしながら、うんざりした感じで説明しながら、最終的には心の底から嘆いていた天崎の姿。

 そんな相変わらず異性の意識が欠片もない天崎の話を思い出してしまい、つい試合中の天崎の一部分に目が行ってしまう。


 うん……いや……すごいとしか言いようがないな。


 ゆさゆさ、という擬音しか当てはまらなさそうに、天崎の胸が重そうに揺れていた。1キロから2キロあるって言ってたけど、本当にそれくらいの質量がありそうに見える。 


 って何を友だちの胸をガン見してるんだ俺は!? ちゃんと試合を見ろ俺!!


 胸という男子にとって魅惑的過ぎるコンテンツをなんとか頭から振り払って、ちゃんと試合を見る。


 うん……いや……すごいとしか言いようがないな。


 目の前で起きている試合の状況に、思わずさっき天崎の胸を見た時と同じ感想を抱いてしまった。


 さっきから天崎の相手をしているのは、うちのクラスの卓球部の男子だが、試合が始まってから顔がめちゃくちゃガチだった。カットにドライブにスマッシュ、思いっきり回転をかけたサーブなどなど、もう完全に勝ちに行ってるのが見ててわかる。


 うん……本当にすごいな……天崎のやつ、あんなガチの玉を涼しい顔で普通に打ち返してやがる。


 現役卓球部相手に天崎はバチバチのラリーしていた。

 天崎の顔には余裕すらあり、逆に卓球部の方が必死の形相なのが、あまりにもアンバランスというかあべこべすぎて、笑いそうになる。 


 本人曰く、卓球部だった経験もないし、それこそ去年の球技大会や学校の授業、あとは年に数回、家に卓球台があるから親戚が集まった時に遊びでやるくらいだって言ってたけど、それでガチ勢とやりあえるとか絶対におかしいだろ。センスの塊どころの騒ぎじゃない。てか家に卓球台があるとか珍しいな。

 

 それにしても竜也といい天崎といい、どうして俺の周りにはスペックの高い奴らがほいほい存在してるのか。二人以外にもゆーちゃんは現役人気アイドルというとんでもスペックだし、何でもできる天崎先輩は言わずもがな。わぁ……こうしてみると俺の知り合いって規格外の人たちばっかりだぁ……。

 

 結局、天崎はそのまま卓球部相手にストレート勝ちした。

 負けたクラスメイトの全国大会で負けたぐらいのテンションで膝をついていた姿に、思わず同情してしまう。そりゃ同じ卓球部でもない天崎にストレート負けなんてしたら悔しくてそうなるわな……。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? 卓球部以外に負けちまうなんてぇぇぇぇぇぇ顧問の地獄レッスン確定だぁぁぁぁぁぁぁぁ!? いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 悔しさとかじゃなく今後の部活を想像して絶望してたらしい。

 どうやらバスケ部だけでなく卓球部も、不甲斐ない結果を出してしまうと部活が地獄になるらしかった。


 さっきのガチな顔とプレイはそのせいか……そんな絶望するようなリスクがあるなら、最初から自分が部活でやってる競技にでなけりゃいいだろうに。けど、もう後悔しても遅いぞお前ら……これから全員、天崎と当たるんだから……。 

 

 卓球の出場人数は男女混合の5人で、対戦相手の出場選手と一通り試合をする総当たり方式。

 つまり、今、目の前で敗北した男子だけでなく、残りの4人も天崎と対戦しないといけない。


 なお、うちのクラスの卓球部は男子4人、バスケの時と同じく部活勢は全員、自分の競技にエントリーしているので、あと3回は似たような光景が繰り広げられる可能性があるわけだ。

 きっと、気楽に天崎と対戦できるのは、卓球部じゃない山本さんくらいだろうな……。


 これから起きるかもしれない、天崎による、卓球部、地獄の練習送りの刑を想像して、俺はクラスメイトの卓球部たちにそっと手を合わせて拝むのだった。ご愁傷様……南無南無。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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