幕間⑤ 恋する気持ちは難しい
有織はべりです。
拙文ですが、お読みいただき、楽しんでいただけると嬉しいです。
空ちゃんのお家での貴重なお話を、妹さんこと海音ちゃんから、たくさん聞かせてもらっていると、
「ご、ごめんゆーちゃん、ちょ〜っとこいつに話があるからすこ〜しだけ待っててくれる?」
と言って顔を赤くした空ちゃんが、楽しそうに話す妹さんの手を引っ張って体育館裏から離れて行ってしまった。
きっと、自分のことを妹さんに話されて恥ずかしかったんだろうなぁ。恥ずかしいのを隠してる感じだったけど、全然隠しきれてない空ちゃん可愛い……!
なんて、しばらくの間、私は一人空ちゃんに萌えていたけど、暢気にそんなことしてる場合じゃないのはわかっていた。
うん……現実逃避はやめよう……ちゃんと反省しなきゃ……。
私は努めて冷静に深呼吸をして、その場にしゃがみ込み、両手で顔を覆った。そして、心の中で絶叫する。
あぁぁぁぁぁぁぁ!! やっちゃったやっちゃったやっちゃったぁぁぁぁぁぁぁ!! 恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい! なんであんなことやっちゃったの私!!
さっきまでの自分を思い出して、めちゃくちゃ死にたくなる。きっと今の私の顔は、さっきの空ちゃんとは比べ物にならないくらい真っ赤だろう。
バスケの試合が終わった後、空ちゃんと話したいなーって思って探してみたけど、どこにもいなくて。
さっきまで空ちゃんと一緒に試合をしてた竜也を見つけたから、空ちゃんがどこにいるのか聞いてみたら、
「あいつなら、これ以上視線に晒されたらメンタルが死ぬ! だから竜也、俺は今から人気のない体育館裏に逃げるぞ! あとは任せた! って言って一目散に走っていったぞ。あ、もし空太のとこ行くならこっそり行けよ? 全力の応援で、空太を注目の的にした人気アイドルさん」
なんて呆れたように言われたので、申し訳なさを感じながら体育館裏に向かった私。
うぅ……ごめんね空ちゃん。せっかく仲良くなれたし応援したい欲には勝てなかったの……。
でも、頑張ってバスケしてる空ちゃんもカッコよかったなぁ……。
なんて余韻に浸りながら体育館裏にたどり着いたら、空ちゃんが女の子と仲良さそうにくっ付いてるのを見つけてーー頭が真っ白になってしまった。
女の子の方はとても楽しそうで、空ちゃんも自然な感じで受け入れていて……その親しげな雰囲気はまるで彼氏彼女にしか見えなかったから。
まあ、実際は空ちゃんの妹さんで、彼女なんかじゃなかったんだけど……ああぁぁぁぁぁもう!! なんであんなことしちゃったの私! その子は誰? じゃないよ!? 勝手に彼女気取りか!
それだけじゃなくて、本当に妹なのか疑っちゃったりしたし……うぅ……絶対、妹さんに悪い印象を与えちゃったよね……最悪だよ……。
空ちゃんと昔みたいに話せるようになって、距離が近くなったのを実感してから、私は少しおかしくなってるかもしれない。
少なくとも、空ちゃんと距離があったゴールデンウィーク前なら、あんな大きな声で空ちゃんを応援したり、空ちゃんが女の子とくっついてても、あんな浮気現場を目撃した彼女みたいな態度を取らなかったはずだ。
うぅ……空ちゃんと仲良しになれてから、空ちゃんが大好きだって気持ちが、自分の中でどんどん大きくなっていっちゃってるよ……もっともっとお話したい、ずっとずっと引っ付いていたい、空ちゃんの彼女にして欲しいって想いが溢れてきちゃう。
でも自重! 本気で自重して反省しなさい私! あんな態度ばっかしてたら、空ちゃんに嫌われちゃうし、周りの人にも失礼すぎるよ! 積極的にアピールするって決めたけど、自分のことばっかり考えてちゃダメだよ私!!
さっきまでの自分を思い出して、そう自分に言い聞かせる。まさか恋する気持ちがこんなに制御が難しいなんて思いもしなかった。
恋ってこんな自分勝手になっちゃうんだ……こ、これからは気をつけないと……あ! そういえばさっきのこと、空ちゃんと妹さんに謝れてない! も、戻ってきたらちゃんと謝らなきゃ……!!
これからは初恋に振り回されて迷惑をかけないよう深く反省しながら、私は戻ってきた二人にどうやって謝ろうか真剣に考えるのだった。
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