第四十七話 計画は基本的に上手くいかない
有織はべりです。
拙文ですが、お読みいただき、楽しんでいただけると嬉しいです。
「どうしてこうなった……」
球技大会についてあれやこれや決めた一時限目も無事終わり、やってきた休み時間。自分の席で俺は頭を抱えていた。
俺をそんな風に悩ませている元凶は黒板、特別競技の出場者が書かれている並びにある「高原」という文字。
このクラスにいる高原は俺だけであり、それが意味するところは単純、俺が今年の特別競技に出ることが決まってしまったということだ。何故だ……なんでこんなことになったんだちくしょう……!
激しい後悔に苛まれる。思えばさっき、特別競技だけは回避しようと考えておいた計画がまったく役に立たなかった。
まず一つ目の想定外は、想像以上に卓球が人気だったこと。まさかの定員の三倍の人数が手を挙るなんて自体が勃発、じゃんけんで決めることになり、あっけなく敗北した。
今思えば、あの時手を挙げたのはほとんど文化部や帰宅部だった気がする。一概には言えないが、おそらく運動が苦手なクラスメイトが集中したのかもしれない。
ちなみに隣の席の山本さんも手を挙げていて、なおかつじゃんけんに勝って卓球の出場枠に納まっていた。山本さん頼む変わってくれ。
二つ目の想定外は、特別競技に思いの外、希望者が少なかったこと。第一希望で手を挙げるクラスメイトは少なく、そのおかげで特別競技の出場枠は最後まで余っており、人気を完全に読み違えてしまった。
う~ん、去年のうちのクラスなんかクラスの大半が手を挙げてたんだけどな……。
最後、三つ目の想定外、想像以上に俺にじゃんけんの才能がなかったこと。
卓球のじゃんけん大会に負けた後、何とか特別競技だけは避けようと他のメジャー競技にも手を挙げたのだが、ことごとく定員オーバーからのじゃんけん大会が発生。しかも全部のじゃんけんに敗北した。こんなことってある?
以上、そんな三つの要因が主な原因となって俺は無事、「異性交遊を促進することが目的の特別競技」に出場する羽目になってしまった。
あーーーーーーーーもう!! なんでこうなるんだよ! もしかしてあれか? 卓球が不人気とか考えたのが卓球の神さまにバレて天罰でも当てられたのか!? ごめんなさい神さま! もうそんなこと考えませんから特別競技から俺を解放して下さい!!
「なにしてるの空ちゃん?」
祈るように両手を合わせて、本当にいるのかわからないけど卓球の神さまに謝罪して心の底から願っていると、ゆーちゃんがやって来て不思議そうな目で俺を見てくる。
「神さまに祈ってるんだ。それはもう切実に」
「ええ、急に教室でお祈りって……いったい何があったの? 何か辛いことがあるんだったら相談にのるし助けるよ? 空ちゃんのためなら私、どんなことでも頑張るから」
ふんす、と胸も前で両手を力強くぐっと握るゆーちゃん。
い、言えない、特別競技に出るのが嫌すぎて謎の祈りをささげて現実逃避をしてるなんて、こんな真面目な感じで心配してくれてるゆーちゃんになんて絶対に言えない!
「ありがとう大丈夫。そんな大したことでもないし気持ちだけもらっとくわ」
「そうなの? あ、変な遠慮とかしてないよね? 幼馴染なんだしそういうのしちゃ嫌だよ?」
「してないしてない。ところでゆーちゃんは何か俺に用事? 休み時間になってすぐこっち来たけど」
「普通におしゃべりしようと思って来たんだだけだよ? む、もしかして用事がないと空ちゃんに話しかけちゃダメなの?」
「そんなことはないぞ!? ただ用事もないのに話しかけてくるなんて珍しいと思っただけで!」
急に少しむくれて半目で見てきたゆーちゃんに慌ててフォローする。
「ほら、今までゆーちゃんが俺に話しかけてきたことなんて、何かしら用がある時しかなかっただろ? だから俺がそう思うのも仕方ないんだって!」
「そ、それを言われちゃうと何も言い返せないけど……とにかく、これからは用事がなくても空ちゃんのとこに来るから、今度からはそういう感じでよろしくお願いします」
「了解でございます」
何故かお互いに頭を下げ合った。顔を上げるとゆーちゃんと目が合い二人で笑い合う。
この独特のノリというか謎の雰囲気が幼馴染っぽいなぁなんて思う。
そんな俺たちのことを、周りにいるクラスメイトのうちの何人かは、興味深そうにちらちらと見て来ていた。
まあ俺とゆーちゃんの態度も話し方もゴールデンウィーク前と違いすぎるし、気になって当然だろう。
ただ、前みたいな目立つようなことをしてるわけでもないし、ゴールデンウィークを挟んだおかげで、俺とゆーちゃんに対する注目度は確実に連休前より減っているため、騒ぎになるような心配はなさそうだった。
俺たちが幼馴染という情報自体はすでに広まっているので、これだけ親しい感じで話していても、まあ、そこまで不思議には思われないだろう。
懸念があるとしたら彼氏彼女的な勘違いをされることだが、よくよく考えてみれば誰もそんな勘違いをしている気配すらないのにそんなことを心配している時点で自意識過剰が過ぎる。
これ以上恥ずかしいやつになりたくないので、そのあたりのことは極力、考えないようにすることにした。
「うむ、よしなに……な、なんちゃって」
「と、この流れに乗ってちょっとお茶目してみたけど思いのほか恥ずかしくて少し顔を赤くしてるゆーちゃんでしたとさ」
「ぜ、全部、口に出して説明しないでよ恥ずかしい……あ、そういえば球技大会なんだけど――」
「と、指摘された恥ずかしさをなんとか話題を変えて誤魔化そうとしているゆーちゃんでしたとさ」
「も、もう空ちゃん!」
「あはは、ごめんごめん、リアクションがいいからつい。それじゃあ続きをどうぞどうぞ」
「いやすっごく続けにくいよ! まったくもう、私は空ちゃんの玩具じゃないんだからね。こほん、球技大会なんだけど、特別競技って――」
「……神よ」
「ええ!? 急にまたお祈り始まっちゃった!?」
特別競技の言葉を聞き、ゆーちゃんと楽しく話していて頭の片隅に追いやっていた特別競技が、再び頭のメインステージにやって来て憂鬱になる。
そんな誰も望んでないアンコールはいらないんだよ。もう今さら特別競技という名の罰ゲームから逃げられないことは重々承知してるから、せめて当日までは忘れさせてくれ。
「なあゆーちゃん、そんなことよりゴールデンウィークの話しない? なんかゴールデンウィークって元々映画会社が宣伝のために言い始めたらしいぞ」
「へ~そうなんだ知らなかった。ってゴールデンウィークそのものについての話なの!?」
「と、いい感じのリアクションでノリツッコミするゆーちゃんでしたとさ」
「そ、空ちゃん!!」
俺に何度もいじられてぷりぷりと怒るゆーちゃんの可愛らしい姿に思わず癒される。
バラエティ未経験の現役アイドルをいじるなんてよくよく考えたらすごいことやってるな俺。
というかいくら幼馴染とはいえ、こんなに女子と緊張しないで話せるなんていつの間にか俺も成長したもんだ。この調子なら特別競技の方も大丈夫――ではないな、うん! というかもう特別競技について考えるのやめよう!
そんな決意とともに頭の中のステージから特別競技を引きずり降ろして、俺は怒るというか拗ねている感じのゆーちゃんをなだめるのだった。
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