第四十五話 特別競技を決めよう!
有織はべりです。
拙文ですが、お読みいただき、楽しんでいただけると嬉しいです。
「というわけで! 今日は今年の特別競技を決めるよ!」
説明を終えた天崎はようやく俺から離れると、再びホワイトボードの前に戻った。
よーし切り替えろ俺……さっきのも天崎は全く意識してなかったんだし、こっちも変に意識するんじゃない……今は生徒会活動中なんだからそっちに集中するんだ……!
うっかり天崎の胸のあたりに視線がいきそうになった自分を心の中でしこたまぶん殴り、さっきまでの感触を思い出さないよう努力しながら、思考を天崎が言った特別競技に向ける。
球技大会の最後に行うのがお決まりとなっている生徒会が企画したオリジナル競技――それが特別競技だ。いつ誰が始めたのかは定かじゃないが、少なくとも数十年以上は続いている割と伝統あるものらしい。
一説には、発足したての生徒会の企画能力を広く生徒たちに知ってもらうために始まったとかなんとか。そんな噂を一年の時に誰かから聞いたような気がする。
当時はふ~ん、くらいの感想だったけど、まさかその一年後、それを企画をする立場になってるとか想像もしてなかった。
「それじゃあ高原くん、何かいい案はある? 何でもいいよ?」
「こんな急に言われても何も出てこねえよ。ちょっと考える時間をくれ。そういう天崎の方こそ、何かないのか?」
「ん~じゃあ自由に遊ぶとか? 各自、道具もグラウンドも体育館も好きなように使って良しって感じで」
「もうそれただの休み時間だろ。せめて競技って呼べる程度の体裁は守れよ」
「え~ダメ? 時代は変わってきてるんだし、別に競技って枠組みに無理に捕らわれなくてもいいと思うんだけど。そもそもさ、毎年毎年、生徒会でオリジナル企画を考えるのも意味がよく分からないというか、球技大会なんて別にテニスとかバスケとかそういう既存のスポーツだけやってればいいと思わない? 一から新しい競技を考えるのも割と大変だと思うし、そんなのをわたしたちの後に続く生徒会に残すなんてかわいそうだよ。もういっそ、わたしたちの代で特別競技の長い歴史に終止符を打つのもありだと思うんだ。だからさ、そのためにも今年はわたしの案で行かない? そうすれば、今からオリジナル企画なんて小難しくて面倒くさいこと考えなくてしなくて済むわけだし、一石二鳥だよ?」
「おい、色々言ってるけどそれ絶対、最後のが一番の理由だろ」
「あ、やっぱりわかっちゃった?」
いたずらがバレた子どもみたいに、可愛らしく舌を出す天崎。
「わからないわけないだろ。というかさっき、特別競技はちゃんと考えないと、とか言ってなかったか?」
「うん。でも面倒くさいことは極力したくないじゃん? ってちょっとそんなどうしようもないやつを見るような目をしないでよ! わかってると思うけどこれも冗談だからね? さっきのドッジボール大会と同じ、生徒会長のちょっと小粋な冗談だから!」
「ほんとかよ……実はさっきのドッジボール大会も割と本気だったんじゃないのか?」
「そっ……んなことあるはずないでしょ? いくらわたしがぐうたらでも、しないといけないことはちゃんとやるよ! 思い出して? わたしと高原くんが生徒会にいるのは、わたしたちにかかった縁の呪いを解くためなんだよ? そのために生徒会活動してるんだから、いくら面倒くさいからって、そんないいかげんなことするわけないでしょ。しかも今回みたいな、自分たちで企画ができるイベントっていうボーナスチャンスみたいな時なんか特に」
「今ちょっとどもってたな……てかボーナスチャンスって何だ?」
言ってる意味がよくわからなかったので聞き返すと、天崎は意外そうな顔で俺を見返してきた。
「あれ、高原くん、もしかしてわかってない?」
「悪い、まったくわかってない」
「えっとね、わたしたちが呪いを解いてもらう条件って、縁結びの神さまのお手伝いをすることでしょ? でもってそのために、生徒会活動を通して異性交遊をしやすい学校づくりをする――つまり異性交遊を促進することがわたしたちの目的っていうのは覚えてるよね?」
「まあ、さすがに覚えてるって。確かに神さまがそんな感じのこと言ってたな。けどそれが球技大会と何の関係があるんだ?」
「関係大ありだよ? 学校行事なんて、学内の異性交遊の促進にめっちゃ重要な要素だからね。行事がきっかけで異性を意識したり付き合ったりする事例は少なくないんだよ? だからイベントを上手く利用して効率よくカップルを増やすことができたら、わたしたちの呪いが解ける日に大きく近づくってわけ。といっても今回は球技大会だからそこまで大きな効果は見込めないような気もするけどね。これが体育祭や文化祭、修学旅行とかだったら話は違ったんだけど、残念ながら全部、二学期以降だから。ま、そういうわけで、数少ない学校行事は縁の問題解決のための貴重なボーナスチャンスなわけ。わかった?」
「お、おう、とりあえず天崎が割と学校行事にガチなのはなんとなくわかった」
「うんガチだよ。縁の問題なんてさっさと解決して無事に一生処女の呪いから解き放たれたら、生徒会なんて辞めて毎日放課後は家でダラダラするって決めてるんだから」
ものすごくきりっとした真面目な顔で、ものすごく自堕落なことを言う天崎。
だから処女言うな。うーん、こんなこと言ってる姿がしっくりくるように感じるあたり、俺も天崎になじんできたなぁ。
「とにかくそういうわけだから、すごくすごくものすご~く面倒だけど特別競技はちゃんと考えようと思ってるわけ。あ、当然だけど高原くんもわたしと一緒に考えるんだよ? あの日、言ったよね? わたしたちは一蓮托生、嬉しい時も楽しい時も悲しい時も辛い時も苦しい時もずぅっっっっっと一緒だって」
「わざわざ言われなくても、ちゃんと一緒に考えるつもりだったからそれやめろ! 怖いんだよ!」
「ふふふふふ……縁の問題が解決して生徒会が無事終わるまで、高原くんは絶対逃がさないからね」
「だから言ってることがいちいちヤンデレ風味で怖いんだって! その顔のまま近寄ってくんな!!」
濁った目をした綺麗な笑顔の天崎がゆっくりにじり寄ってきたので、椅子から立ち上がり距離を取る俺。
ゾンビみたいにじりじりと近づいてくる天崎と一定の距離を保っていると、不意にグラウンド方から陸上競技で使うピストルの音が聞こえてきた。
その瞬間、天崎がすごい勢いでこっちに走ってきたので反射的に俺も走って逃げ出してしまう。
「こら~! 逃げるな~!」
「だったら追いかけてくるんじゃねえ~!」
こうしてしばらくの間、狭い生徒会室の真ん中にある長机の周りを、何故か俺と天崎はぐるぐると回り続けていた。
いやなんで急に鬼ごっこが始まってんの? 天崎も楽しそうに追いかけてくるんじゃないよ! 逃げてる俺が言うことじゃないけど!
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