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第四十三話 連休明けの生徒会

有織はべりです。

拙文ですが、お読みいただき、楽しんでいただけると嬉しいです。

 楽しかったゴールデンウィークも終わり、連休明け初日の憂鬱な学校。久しぶりの学校は予想以上に以上に長く感じるものだった。


 いやゴールデンウィーク明けの授業ってなんでこんなにしんどいんだ……早くも休みが恋しいな……。


 それと似たようなことを思っているのはどうやら俺だけじゃないらしい、放課後の生徒会室に入ると、気だるそうな顔をした天崎が、だらしなく机に上体を預けていた。


「あー……高原くんお疲れ〜はぁー……あっという間にゴールデンウィークが終わっちゃった。早く家に帰ってずっとダラダラしてたいなぁ〜……」

「お疲れ。いや、めちゃくちゃダラけてんな……まあ気持ちはものすごいわかるけど」

「でしょ~? 結局、ゴールデンウィークも何日かは家の手伝いに駆り出されて全然ゆっくりできなかったしさ~夏休みとか冬休みと同じくらいとか贅沢は言わないから、いっそ一か月丸々お休みとかにして欲しいよね」

「また無茶なこと言うなぁ。けど仮にそうなっても、結局、休み明けがきついのは変わらないと思うぞ。むしろ休みが長い分、そっちの方がしんどいんじゃないか?」

「そんなマジレス今は聞きたくないし求めてませ~ん! はぁ~ほんと高原くんってそういうとこあるよね~」


 両手を肩の高さにあげて、やれやれ、といった感じで鼻で笑ってくる天崎。


 お、なんだこいつ、休み明けからいきなり煽ってきやがって。


「よ~し、どう意味なのかよくわからないけど、とりあえずバカにされてるニュアンスだけは感じ取れたぞ。こめかみを出せこめかみを、休み明けでだらけてるお前に梅干しの刑で活を入れてやる!」

「しゃきっ! だらけモードを解除しましたっ! だからその必要はないよ高原くんっ!」


 握り拳を作って笑顔で梅干しの刑、もとい、ぐりぐりの素振りをしたやると、天崎は勢いよく椅子から立ちあ上がると、無駄に綺麗な気を付けの姿勢で敬礼してくる。相変わらず調子のいいやつだ。


 だが許さん。


「え、あの、ちょっと? た、高原くん? ど、どうして無言のまま近づいてくるのかな? わたしは御覧の通りしゃっきりのお目めぱっちりだから、もう活とか入れられなくても大丈夫だよ? だから落ち着いて? 違うんだよ? 別に高原くんをバカにしようと思ったんじゃなくて、うっかり口がすべったというか、わたしなりの高原くんとのコミュニケーション方法というか――あ、ま、待って待ってごめんごめんなさい! わたしが悪かったから! お願いだから笑顔でわたしの頭を掴もうとしないでぇぇぇぇぇ!!」


 数分後。


「うぅ~! 高原くんのアホ! バカ! マヌケ! スカポンタン! 女の子を怖がらせて悦ぶドSの鬼畜! 童貞!」

「ここぞとばかりにめっちゃ言うなお前! 誰がドSだ! あと童貞を悪口みたいに使うのやめろ!」

 

 俺を床に正座させた天崎は頬を膨らませて子どもみたいに怒っていた。言ってることも後半の二つを除けば完全に小さな子どもだ。 


 いくら天崎が相手でも女子の頭を触るとかヘタレの俺にできるわけないので、本当にぐりぐりなんかするつもりはなく、ただ、ぐりぐりするぞって圧をかけただけなのに、この言われようである。


 やっぱり最後に「な~んちゃって~びっくりした? もしかして本当にぐりぐりされると思ってびっくりしちゃった~?」ってドッキリのネタバラシ風にやったのがまずかったか。


「だからごめんって。まさかお前がそんなにぐりぐりを怖がってたとか思わないだろ」

「うるさいうるさ~い! 誰だって痛いことが迫って来たら怖がるでしょ! 注射とかしたことないのかな高原くんは!」

「注射とぐりぐりを同列で話すやつ初めて見たわ。それにしても……ぷっ、あの時のお前の顔よ」


 本当にぐりぐりされるのを怖がってたんだろう、ぷるぷる震えていた天崎が、実は冗談だったってネタバラシされた時、ぽかーんって見事なマヌケ顔になったのをうっかり思い出してしまった。


「なに目の前で現在進行形で怒ってる人の顔を思い出して笑ってるの!? いま高原くんわたしに怒られてるんだよ!? もうちょっと怒られてる自覚持って!」

「悪い悪い、まさかあんなに見事なぽかん顔を見れるとは思わなかったから……ぶふぅ!」

「だから笑うなぁー!! っていうかぽかん顔って何なの!?」

「言葉の通りぽかんとした顔のことだが?」

「ことだが? じゃないよ! ちゃんと反省して!」

「ごめんごめん、笑ったのは悪かった。反省してるから許してくれ」

「ふんっ! そんなの絶対嘘でしょ! 反省してるんだったらちゃんと誠意を見せられるはずだよ! いつもわたしがしてるみたいに!」

「は!? まさか土下座しろってか!?」

「そう言われて真っ先に土下座を思い浮かべるのが一番失礼だよ!! まあ、その通りだけど!」

「その通りなんかい! いやけど土下座ってお前、そこまでするようなことかこれ!? そもそも、もとを正せばお前が変な煽り方をしてきたのが悪かったと思うんだけど?」

「そ、それはそうかもしれないけど、それにしたって高原くんのはやりすぎだもん! わたしの受けた心の傷は、それくらいしてもらわないと許せないくらい深いんだもん! まあ別に? 土下座じゃなくても、高原くんの誠意が感じられることだったら何でもいいよ? ただそれを、わたしが誠意だって感じるかどうかはわからないけどね!」

「お前それ実質土下座一択じゃねえか! め、面倒くせえ……! 確かに俺も悪かったのかもしれないけど、今日はまた一段と面倒くさいぞ天崎!」

「いま面倒くさいって言ったはっきり言った!! 高原くんが悪いのによくそんなこと言えたね!? こうなったらもう簡単には許してあげないもん! つーーーーーんっだ!」

「出たよつーーん……なあ天崎、悪かったと思ってるから土下座は勘弁してくれ。その代わりに、俺の誠意としてこれを献上するから」


 鞄から、ゴールデンウィークに発売された新作のチョコバーを取り出し、怒っているというより拗ね始めた天崎に恭しく両手で差し出してみた。


 俺は失敗から学ぶ男である。


 今までの教訓から天崎の機嫌が悪くなった時のために、対天崎用のお菓子を常備するようにしていた。


「……ま、まったく、仕方ないなぁ高原くんは。確かに今回はわたしも悪いところはあったし、これで許してあげる。今度からは気を付けてよ?」

 

 天崎は俺が差し出したお菓子をさっと受け取ると、あっさり無罪放免のお許しを出した。そして、すぐさま封を開けるとチョコバーに噛り付く。


 相変わらずちょろいなこいつ……ちょっと心配になるわ。


 それはもう美味そうに食べるご機嫌な天崎にそんな感想を抱きながら、俺は立ち上がりズボンを叩いて埃を払う。


「もぐもぐ……ごくん。よしっ! それじゃあ高原くん、そろそろ生徒会始めよっか! 今日は休み明けでやらなきゃいけないお仕事も色々あるからね! 頑張っていこー!」


 そう言って、口の端にチョコを付けたまま元気よく腕を振り上げる天崎。


 そんな、なんとも天崎らしい少し締まらない感じで、ゴールデンウィーク明けの生徒会活動は始まったのだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

よろしければ、ご感想や評価などをいただけると嬉しいです。

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