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第三十八話 ゴールデンウィーク 幼馴染アイドル編①

有織はべりです。

拙文ですが、お読みいただき、楽しんでいただけると嬉しいです。

 待ち合わせの場所は、何の因果か俺がゆーちゃんをナンパした場所だった。


 あいつも一応アイドルなんだから念のために地元の駅は避けた方がいいだろ、とは竜也の弁。


 ゆーちゃんは一応じゃなくてバリバリのアイドルなのだが、それはともかく俺も竜也の意見には賛成だった。


 もし現役アイドルが同年代の男子とゴールデンウィークに遊んでる所なんて見られたり、万が一、写真でも撮られた日にはえらいことになるのは想像に難くない。ゆーちゃんのアイドル生命に傷がつくような危険は極力排除しておきたかった。


 だったらそもそも遊ぶなよと心の中でもう一人の俺が言っているが、そこはうん……俺も久しぶりに再会した幼馴染と遊びたかったというか、遊ぼうと誘われた日、うるうるした目でお願いしてくるゆーちゃんに勝てなかったというか、まあ、色々あったので仕方ない。仕方ないったら仕方ないのだ!


 そしてそれとはまた別に、同じ学校の連中に見られる確率はできる限り減らしておきたい。


 幼馴染だってバレただけであの騒ぎだ、ゴールデンウィークに集まって遊んでる所なんて見られた日には、それはもう次の登校日がしんどいことになるのは間違いない。

 ゴールデンウィークを挟むことで噂を鎮静化させるという、そんな俺の秘かな計画が水の泡になってしまう。


 こうして考えてみると有名アイドルって大変な仕事だな。常にスキャンダルという爆弾を抱えながら生きるのなんて俺には絶対に無理だ。プライベート超大事。


 とにかく今日は絶対にゆーちゃんがアイドルだって周りにバレないよう気を付けないと……ゆーちゃんのアイドル生命のためにも、そして俺の平穏な学校生活のためにも……まあ、いざとなったらきっと竜也が何とかしてくれるだろうけど! 安定の竜也クオリティ! 竜也がいるってだけで安心感が違うね!


 今日のが幼馴染三人で遊ぶ約束で本当によかった。もしこれがゆーちゃんと二人きりとかだったら、おそらく、いや間違いなく、俺は緊張で死んでいたことだろう。


 いやほんとに竜也さまさまだ。もしやあいつ完璧超人なのでは? まあ、たま~によくわからない変なことするけど。


 今日だって、最寄り駅は俺と同じなんだから一緒に来ればよかったのに、なんでわざわざ別々に行くだなんて言い出したのか。集合時間は決まってるんだから別の電車もないだろうに……。


 長年付き合いのある幼馴染だけどあいつも謎な部分があるよなぁ、なんて思いながら、改札を出て駅前広場にたどり着く。


 せっかくのゴールデンウィークだというのに、昼過ぎの駅前はあまり人がいなかった。


 まあ、近くに遊ぶ施設とかショッピングモールとかのない、周りは住宅街ばかりの駅だしそりゃそうか。


 もう四月も終わりなせいか、今日は少し暑いくらいの気温で、ナンパした日は別に何とも思わなかった駅前の噴水が今はとても涼しげに感じる。

 同じ場所でも、条件が変わると全然感じ方が変わるという不思議。


 駅前の風景も、そして噴水の前に立っている女の子も、あの日の光景とほとんど変わらないはずなのに、あの日の俺と今の俺が感じていることはまったく違った。


 特に噴水の前に立っている女の子に対しては。


 遠目からでも見とれてしまいそうなほど綺麗な黒髪、目深にかぶった帽子に眼鏡、落ち着いた雰囲気の服装はとてもよく似合っている。少しそわそわしているところまであの日とそっくりそのまま同じだった。


 まさかあの子がクラスメイトでアイドルでしかも幼馴染だなんて、あの日は思ってもみなかったなぁ……しかもそんな相手をナンパするとか……ああ、もうちょっとマシな感じにできなかったのかあの時の俺よ。


 数週間前のことを思い出してしみじみ、というか恥ずかしさで軽く死にたくなっていると、そんな俺の視線に気づいたんだろうか、彼女はこちらをちらっと見てきた。


 そして俺に気がつくと、まるでぱっと花が咲くみたいに笑ったかと思うと、少し恥ずかしそうに小さく手を振ってくれる。


 ゔっ……! さ、流石は現役アイドル……ちょっと可愛すぎんか!?


 あまりの可愛さに思わず口がにやけそうになるのを必死で我慢する今の俺の顔は、さぞ気持ち悪いことだろう。

 それがバレないよう少し顔を背けながら軽く手を挙げて返事して、駆け足で噴水前の女の子、ゆーちゃんのところに向かう。


「こ、こんにちは空ちゃん」

「お、おう、こんにちはゆーちゃん。えっと、さ、先に着いてたみたいだけど、ごめん、もしかして待たせちゃってた?」 

「う、ううん。わ、私も今来たところだから、だ、大丈夫だよ」

「そ、そっか、待たせたんじゃなかったらよかった」

「う、うん。む、むしろ私が早めに来ちゃっただけだから」

「あ、そ、そっか、まだ待ち合わせの10分前だもんな~あ、あはは~」

「そ、そうだよ。まだ10分もあるんだよ~あ、あはは~」


 なぜかお互いにぎこちない感じの俺とゆーちゃん。


 ヤバいなんかめっちゃ気まずい。ていうかどんな感じで接していいのかやっぱりわからない。


 昔みたいに普通な感じで話そうとは思ってたけど、昨日、ライブを見てしまったせいか、俺の中でのゆーちゃんのイメージが幼馴染っていうよりアイドルの方が強くなってしまっている。


 そのせいか、さっきからめちゃくちゃ緊張して仕方ない。改めて今日が三人で遊ぶ約束でよかった。


 ゆーちゃんもさっきから恥ずかしそうというか、長いスカートを掴んだり離したり帽子を触ってみたりと、ものすごく落ち着かなそうにしている。


 や、やばい、何か話さないと! さすがにこのまま黙って竜也を待ち続けるのはしんどい!


「そ、そういえば! こ、この前、ここで会った時もその服だったよな」

「え!? あ、う、うん、そうだね。お、覚えててくれたんだ」

「ま、まあな、だ、だから、えっとその、す、すごく似合ってるな!」 

「ふえっ!? あ、ぁりがとぅ……に、似合ってるって言ってくれて嬉しい……です」


 助けて竜也ぁぁぁぁぁぁ! 早く来てくれぇぇぇぇぇぇ! このままじゃ余計なことまで口走って死んでしまうぅぅぅぅぅぅ! てか普通に似合ってるとか言っちゃったけどまずかったな! 絶対にまずかったよな!? 最近じゃ服が似合ってるって言うだけでもセクハラになるらしいし! そもそもいきなり俺にそんなこと言われたら気持ち悪いだろ! ああもう! 出だしから何をやってるんだ俺ぇ!!


 両手で帽子を深く被り俯いてしまったので、ゆーちゃんの顔が見えないのが不安で仕方ない。


 いきなりキモイこと言って、しかも相手に気を遣わせるとか最悪すぎるだろ俺! マジで竜也早く来てくれ! そしてこの空気を何とかしろ! してくださいお願いします!


 そんな俺の必死の祈りが届いたのか、ポケットのスマホが震えたので確認してみると、竜也からメッセージが届いていた。


『悪い。今日ちょっと行けなくなった』


 竜也ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!


 まさかのドタキャンの連絡だった。慌てて返事を送る。


『どういうことだよ!?』

『いや本当にすまん』

『すまんじゃなく!? なんでそんなことになったんだよ!?』

『申し訳ないけど今日の所は二人で仲良く遊んでくれ』

『は!?』

『おいこら竜也!』

『せめて理由を説明しろ!』

『おい!』


 あまりにも突然のことにスマホを放り投げたくなるのをぐっと我慢して、返事どころか既読すらつかなくなったメッセージ画面を閉じる。


 と、とんでもないことしてくれやがったあいつ! 


「ええっ!?」


 まさかの事態に唖然としていると、隣でゆーちゃんが驚いたような声をあげる。


 どうしたんだ? なんてわざわざ聞かなくても、何となく理由がわかった。


 さっきの俺もあんな感じだったんだろう、めちゃくちゃ焦った表情でスマホをいじっているゆーちゃんだったが、無駄だと理解したんだろう、どうしよう…と言いたそうな顔で俺を見てきた。


「あ、あのね空ちゃん……その、竜也なんだけど、来れなくなって……」

「そ、そうらしいな……さっき俺のとこにも連絡来たわ……」


 そりゃドタキャンの連絡するなら俺だけじゃなくて、ゆーちゃんにもするわな。


 さっき以上に気まずい沈黙が俺たちの間に流れる。

 え、これどうすんの? 竜也が言ってたみたいに二人で仲良く遊ぶ? いやでもこの空気でそれは流石に……それに幼馴染三人ならともかく、もしゆーちゃんと二人で遊んでるところがバレたら、いくら俺が相手でも、アイドル的によくない邪推をされる可能性が無きにしもあらずだしなぁ……めちゃくちゃ自意識過剰かもしれないけど!

 あーもう! おのれ竜也め! 今回ばかりはあいつが全面的に悪いからな! 今度会ったら、俺たち幼馴染二人に気まずい思いをさせた報いを受けさせてくれる!

 

「あ、あの、空ちゃん、この後なんだけど……」


 心の中で竜也への仕返しを決意を固めていると、ゆーちゃんが少し言いづらそうに話しかけてきた。


 どうする? みたいな感じで上目遣いで見てくるゆーちゃんが可愛い。目だけで可愛いって思わせるとか、アイドルって凄いな。


 それはともかく、この後の予定は実質一択だろう。


 この落ち着かない雰囲気のまま一日一緒に遊ぶのはゆーちゃんも辛いだろうし、さっき俺が想定したようなリスクもある。残念だけど今日はこの場で解散するのが一番かもしれない。多分、ゆーちゃんも同じ気持ちだろう。


「ああ、うん、元々三人で遊ぶ予定だったし残念だけど今日はこのまま解さーー」

「そ、空ちゃんさえよかったら、二人で遊ばない!?」


 まるで俺の声を遮るように、珍しく大きな声でゆーちゃんがまさかのお誘いをしてきた。どうやらゆーちゃんはまったく違う気持ちだったらしい。


 瞳を潤ませて顔を真っ赤にしながら、まるで好きだと告白した相手の返事を待つみたいに、じっとこちらを見つめてくる。これにNoと言えるやつがこの世界にいるだろうか、いやいない。


 こうして、本来なら幼馴染三人で遊ぶという今日の予定は、竜也抜きの幼馴染二人で遊びに行くという、とんでもないものになったのだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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