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第三十四話 ゴールデンウィーク 天崎神社編③

有織はべりです。

拙文ですが、お読みいただき、楽しんでいただけると嬉しいです。

「そう言えば高原くんさ、もしかして朝、お姉ちゃんに何かしちゃった?」 


 罰ゲームをかけた勝負も終わって、天崎おすすめの横スクロールアクションの協力プレイをしていると、ベッドに寝転がりながらゲームをする天崎がいきなりそんなことを聞いてきた。


 尻に踏まれていた可哀そうなクッションが、今度はベッドと天崎の胸の間でつぶれている。


 いや別にいいんだけどちょっとくつろぎ過ぎじゃない? ていうかいきなりどうした。


 天崎が何を聞いてきてるのかいまいち要領を得ない。何かってなんだよ。さっと思い出してみても、特にこれといって先輩に何かをした心当たりはなかった。


 よくわからないでいると、天崎がとんでもない補足を放り投げてくる。


「あ、例えば、お姉ちゃんに告白されてフッちゃったとか」

「はあ!? いやいやいやいや! そんなことしてないしそもそも先輩が俺に告白とか、たとえ世界が滅んでもありえない――あっ、ミスった! お前、協力プレイ中に変なこと言って妨害するのはやめろよ……」


 あまりにも予想外すぎる言動に手元が狂って操作キャラが穴にボッシュート、貴重な残機が一つ減った。


「ちょっとちょっと、残機はプレイヤー共通なんだから無駄に一機減らさないでよ」

「その原因になったやつの言う台詞じゃないな! てかなんであんなこと急に言い出した?」

「なんか今日のお姉ちゃんちょっと様子が変だったから。朝、高原くんに会う前は普通だったけど、その後、うちに帰って来てからずっと難しい顔で悩んでるみたいだったし、あ、これはきっと何かあったなって思って」

「なんだそりゃ。まあそれなら、俺が原因なのか疑うのはわかるけど本当に何もしてないぞ。いつもみたいに雑談しただけだし」

「ほんとに~? 別にいいんだよ高原くん? 妹のわたしに言いづらいのはわかるけど、告白されたなら素直に告白されたって言っても」

「だから告白なんてされてないっての! 意味の分からんこと言ってるとまた残機が減るぞ!?」

「ちょっと男子~もうすぐボス戦なんだから勘弁してよ~。でも正直、恋愛くらいしか、あのお姉ちゃんが悩む理由なんて想像できないんだよね」

「発想が貧困というか特殊過ぎる。先輩だって普通に悩むことくらいあるだろ」

「ないない、お姉ちゃんって何でもできる万能人間だから。基本的に悩むより早く、解決する方法をさっさと見つけて行動しちゃうんだよね。それに、もしあったとしても全然態度に出さないし。だから、そう考えると悩むとしたら恋愛関係くらいかな~って」

「先輩が万能なのは認めるけどさすがに言い過ぎじゃない? それに、仮に恋愛だったとしたら、尚更なんで俺が関係してるとか思ったんだよ。一番ありえないだろ」

「はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」


 めちゃくちゃため息つかれた!?


「あのさぁ高原くん、なんでお姉ちゃんが毎朝わざわざあんなに早起きしてシャワー浴びて、ばっちりお化粧までして、しかも巫女服を着るなんて面倒くさいことしてるんだと思う?」 

「え、いや普通に朝の掃除のためだろ? シャワー浴びるのは体を清めるためで、化粧は年頃の女の人ならするのは当たり前だろうし、巫女服なのは普通に先輩が巫女さんだからじゃないのか?」

「朝の掃除はするけどあんな早い時間にはしないよ。それに掃除って境内の掃き掃除以外にも色々あるからね? 社務所や拝殿の雑巾がけとか。それなのに、毎朝毎朝、デート前の女の子かなって思うくらい念入りに準備して、わざわざ、境内の掃き掃除をしてるんだよ? どうしてだと思う?」

「いやだから普通に朝の掃除なんじゃないのか? 前に、何でこんな朝早くから掃除してるんですか? みたいに聞いたことあるけど『朝は自然と早くに目が覚めちゃうから、せっかくだし境内のお掃除だけでもしてるんだよ』って言ってたし」

「言ってたしって……それを素直に信じちゃうんだ」

「先輩だからな。もし天崎なら疑ってたかもしれないけど」

「お姉ちゃんのこと信頼しすぎでしょ……ていうかちょっと待って、なんでわたしだったら信じないの」

「むしろなんで信じてもらえると思った。天崎が早起きなのかは知らないけど、もし早起きしても境内の掃除なんかじゃなくて絶対ゲームするに決まってるからな」

「さすが高原くん、わたしのことがよくわかってるね。早起きなんてしたくないし、奇跡的に朝早くに目が覚めても二度寝かゲームだよ」


 なぜか自慢げに言う天崎。顔を見なくても、どやってるのがわかった。いや別に褒めてないぞ?


 まあ、俺もどっちかというと天崎と同じタイプだから気持ちはわかる。わざわざしなくてもいい早起きなんてしたくもないし、仮に早起きしても先輩みたいに掃除しようとはならないだろう。

 もし早起きしたとしても、二度寝か自分の好きなことをするに決まってる。今はランニングのために早起きしてるけど、それを始める前は、平日は遅刻ぎりぎりまで寝てたし、休みの日は徹夜でゲームして朝に寝て昼までぐっすりとか普通にあったからな。


「むしろお休みの日なんか、早起きどころかお姉ちゃんが起きる時間に寝ることもあるしね。そのおかげで今も普通に眠いよ!」

「連休だしまさかとは思ってたけど、やっぱり徹夜でゲームしてやがったな。まあ、その気持ちはわかるけども」

「同じゲーム好きの高原くんならわかってくれると思ってたよ――あ、やばい、眠いの意識したらなんか急にめちゃくちゃ眠気が来ちゃった……ふぁ~~~~ぁ……あ、これダメかも……ねむ……」


 ちらっと大きなあくびをした天崎の方を見てみると、もう半分目が閉じていて今にも寝落ちしそうな感じだった。


 それでもゲームの操作だけはまったくミスらないのがすごい。何周もクリアしたことあるって言ってたけど、それでもよくノーミスで動けるなこいつ。

 

 初めてやるけど普通にいい難易度してるぞこれ。あ、やばいやばい回復アイテム切れた死ぬ死ぬ死ぬ! 壁際に追い詰めるはマジで勘弁!

 

「高原くん……遊びに来てもらったのにごめんなんだけど、このボス倒したらちょっとだけ寝てもいい? わたしが寝てる間は好きに遊んでくれてていいから……ぐぅ……」 

「もうほとんど寝てるじゃねえか。てか寝るなら普通に帰るぞ。そうしないとお互いに色々と落ち着かないだろ」

「やだ~勝手に帰っちゃダメ~……わたしのことは気にしないでいいから……あ、やった倒した……30分経ったら起こして~……おやすみぃ……」

「おやすみじゃないんだよ、ちょっとこら寝るな天崎」


 きっちりボスをノーダメで倒してから、俺が止める間もなく天崎は夢の世界へ旅立っていった。

 すやすやと穏やかな寝息を立てながらそれはもう気持ちよさそうに眠っている。コントローラーを手放さないのは流石と言えばいいんだろうか。


 それにしても寝つきが良すぎるだろ、の〇太くんかお前は。ていうか、ええ……これどうすりゃいいんだよ。好きに遊んでていいって言われてけど、どうしていいかわからん……。


 天崎が寝たことをきっかけに、なんだか変な緊張感が部屋に張り詰めたような気がした。モニターから流れるゲームの音の方が圧倒的に大きいのに、やけに天崎の規則正しい寝息が耳に入ってくる。


 女子の部屋に遊びに来るのが初めての相手を放置してすやすや寝てるんじゃないよ! そもそも俺がいるのによくこんな無防備に寝れるな!? 一応、生物学的には男子だぞ俺は! あと普通に寝顔とか俺に見られてるけどいいのか!?


 妹曰く、寝顔を見られること、体重を知られること、お腹をつままれむこと、この三つは女の子が死んでもされたくないこと三カ条だという。あれ、髪に触わられる、も含めた四カ条だったか? まあ、今はいい。


 とにかくそのうちの一つを普通にやっちゃってるんだけど大丈夫なんだろうか。あとで理不尽に怒られたりしないだろうな。


 正直、諸々の状況や俺の心情を考えるとこのまま帰った方がいいような気がしなくもない。別に何もやましいことはしてないし、する気もないけど、とにかく落ち着かないのだ。


 万が一、この現場を天崎の家族に見られて妙な誤解でもされたらどうするつもりなのかこいつは。


 そんなわけで帰宅する選択がベストだとは思うが、本人から直々に帰らないでと言われている。

 それを無視して帰るのはなんだか気持ち的にしのびないし、なにより後でめちゃくちゃ拗ねてきそうな気がした。このまま帰ったら絶対、面倒くさいことになりそう。


 かといって、こうして天崎の寝てる姿を無遠慮に見続けているのも、それはそれでなんだか申し訳ない気分になってくるし……はぁ……どうしたもんやら。


「うへへぇ~……またわたしの勝ちぃ……高原くん罰ゲ~ムぅ……」


 そんな内心であれやこれや葛藤する俺の気持ちを知るはずもなく。


 どうやら夢の中でも俺と遊んでいるらしい天崎は、そんな楽しそうな寝言を無邪気な寝顔のまま呟くのだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

よろしければ、ご感想や評価などをいただけると嬉しいです。

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