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第二十九話 ゴールデンウィークとゲーム

有織はべりです。

拙文ですが、お読みいただき、楽しんでいただけると嬉しいです。

「え? ゴールデンウィークの予定? そんなの、毎日自分の部屋で好きなことしながらだらだらするに決まってるじゃん。お菓子とかジュースとか目いっぱい準備して、できる限り部屋に引きこもるんだ~。ちょっと何そのダメな子を見るような目は? べ、別にいいでしょ! わたしがお休みの日にどんなことしてても! え? わたしじゃなくて生徒会の予定? そんなのないよ?」


 失礼な俺の女装姿を想像して笑っていた天崎をわからせた後、連休中の生徒会はどうするのか気になって聞いてみたらそんな答えが返ってきた。


「なんとなくそんな気はしてたけど、やっぱり活動しないのな。ていうかお前、休みの過ごし方に文句をつける気はないけどさ……せめてちょっとは外出しようぜ?」

「う、うるさいなぁ……ゴールデンウィークなんてどこに行っても混雑してるんだから、わざわざ出かけるなんてわたしにしてみたら正気じゃないよ。せっかくのお休みになんで疲れなきゃいけないの?」

「正気じゃないとまで言うか。けど友だちと遊びに行ったりとかするだろ?」

「しないよ? あ! ち、違うからね!? 遊びに行く友だちがいないとかじゃないから! ちょっとそんな優しい目で見ないで! ボッチとかじゃないから!」

「いいんだぞ強がらなくて……少なくとも俺はお前の友だちだからな……」

「違うから強がってないから! 普通にお友だちはいるよ! ただ誰かと一緒にいると気疲れするから一人の方が楽だって思ってるだけだよ!」

「う~ん、ちょっと気持ちはわからなくもないけど、どうなんだそれは? てかその理屈だとこうしてる今も気疲れしてるってことになるのか?」

「ううん、高原くんには全然気疲れしないよ? 正確に言うなら、会長モードでいないといけないのが疲れるだけだもん」

「ああ、たしかにあの感じでい続けるのは疲れそうだな。そんなにしんどいならやめりゃいいのに」

「え~……いやでも今までのイメージってあるじゃん? いきなりわたしが明日からこんな感じで話し出したら、絶対引かれるでしょ」

「まあ、引かれるかどうかはともかく驚かれるのは間違いないだろうな」

「でしょ?」


 こいつの学内でのイメージは、端的に言えば品行方正で優秀な生徒といった感じだろう。正直、完全にあの会長モードのイメージが定着している。


 そんな天崎がいきなりこんな軽いというかフレンドリーというか、うん、とにかくイメージからは全く想像できない感じになったら、俺なら何があったのか心配になるわ。


「それに、周りの思ってるイメージを崩すようなことしても、大抵は良い結果にならないからね。世の中、自分が思ってたのと違った! こんなの解釈違いだ! なんて勝手なことを言って騒ぐ人もいるわけだし。そういう面倒なリスクもあるから会長モードを解く気はないよ」

「おお……けっこう考えてるんだな。けどそれなら最初から会長モードしなけりゃよかったんじゃ?」

「それはそうなんだけど、入学した時点で、あのお姉ちゃんの妹ってイメージがあったから、流石にこんなハチャメチャな感じにはできないでしょ。もしそれでお姉ちゃんに迷惑かけちゃったら嫌だし」

「優秀な身内がいるって大変だな。ちょっとわかるわ」


 俺の場合は身内じゃないけど、竜也というすごいやつの幼馴染をやってるので、周りからの視線というか、あの竜也の幼馴染っていう謎のイメージで見られたことはあった。


 まあ、俺の場合は天崎みたいに外面を取り繕ったりはしなかったから、すぐに竜也とは違うイケてない男ってバレてたけどな。


「あと、よっぽど親しくない限り素の自分を見せるなんて死んでも無理。そんなわけで、素で接するほど親しい友だちもいないし、かといって会長モードのまま遊びに行って疲れるようなことはしたくないから、お休みの日は友だちと遊びに行くより、一人で過ごすというか引きこもるのが一番楽なの。ま、元々、外でわちゃわちゃ遊ぶより部屋の中でのんびりしてる方が好きっていうのもあるけど」

「なるほどなぁ………………あれ? だったら何で俺には会長モードで接してこなかったんだ? 初めてここに呼び出された時からお前、たぶん素の状態だったよな?」

「え? だって高原くんは幼馴染だもん。幼馴染相手に取り繕うのはおかしいでしょ? まあ? 当の本人はわたしのこと、まっっっっっったく覚えてなかったみたいだけど?」

「いやだからごめんて」


 めちゃくちゃじと~~~~~~っとした目で見つめてくる天崎。


 でもなるほど、そんな理由だったのか。ほかの生徒への態度とは違って、最初からこの距離感だったから割と謎だったんだよな。


 勝手に、気安いというか心を許してくれてるように感じてたけど、割と正解だったらしい。


「ちゃんと思い出してくれたら許してあげる。ま、そんなわけだから、わたしはゴールデンウィークの間は自宅警備に勤しむよ。高原くんはゴールデンウィークどうするの? 人気アイドルとイチャイチャデート? もしそうなら週刊誌には気を付けなよ? 今の時代、どこから隠し撮りされててもおかしくないんだから。かといって外じゃなくてお部屋デートもリスクが高いから注意だよ。部屋のカーテンは絶対に開けちゃダメ。部屋に入る時と出る時は特に注意ね。もしチューしてるとことか撮られたら一発で終わるからね?」

「なんだその謎の助言は!? そもそもで、デートなんてありえないし、ち、ちゅ……接吻なんてするわけないだろ!」

「接吻って……ぶふっ……その方が恥ずかしくない?」

「笑うんじゃないよ! ていうかゆーちゃんでいじってくるのやめろ!」

「ごめんごめん。でも別にいじったつもりはないよ? あの伏見さんなら十分あり得そうだなって思っただけで」

「ねえよ。お前の目にはゆーちゃんがどう映ってるんだ。節穴もいいとこだぞ」

「むしろ高原くんの目が節穴だと思うんだけどなぁ……あ、違うか、目だけじゃなくて脳もか」

「脳が節穴って何だ!?」


 表現として新しすぎるだろ!


「ま、わたしには関係ないことだし、高原くんがいいならそれでいっか」

「何だその含みのある言い方は! 言えよ! 言いたいことがあるならはっきり!」

「これは高原くんが自然にわからないと意味がないことだからダメ。あと、言い出しておいてなんだけど、さすがにこれ以上言ったら間違いなく恨まれるから嫌」

「どういうこと!? なにお前、俺に恨まれるようなすげえこと言おうとしてたの!?」

「ああ、うん……今の高原くんの言葉で絶対に言っちゃダメだってわかったよ……」


 天崎がわざとらしく、唇に手を当てて、お口チャックのポーズをした。そして最近、色々な人からされる呆れ顔。


 ちくしょう! 天崎といい竜也といいゆーちゃんといい、同じような顔で俺を見やがって! いいかげん、誰でもいいから何でそんな顔するのか教えろ! 

 俺以外の幼馴染だけわかってるとかもしかしていじめか! 幼馴染いじめなのか!? 天崎なんて竜也たちと交流なんてまったくないはずなのに!


「で、話戻すけど、結局、高原くんはゴールデンウィークはどうするの?」

「勝手に戻すなよ!? 全然終わってないだろ!」

「終わってるよ、色々と。とにかくさっきの話はわたしが悪かったからもう忘れよ? アイドルとデートなんて死んでもしないってことでいいんでしょ? はい、この話おしまい」

「その通りだけどその言い方! ていうかなに勝手に終わらせようと――」

「しつこい男はモテないよ?」

「…………仕方ないな、今回は忘れてやるよ」

「あのさ、わたしが言うのもなんだけどちょろすぎない?」


 失礼な。

 このまま突っ込み続けても、天崎が何を言おうとしたのか聞き出すのは難しそうな気がしただけだ。


 これは断じて、モテないと言われたからじゃない。決して、ただでさえモテないのにこれ以上モテなくなったら困る、とか思ったからじゃないのだ。


「それで? 俺のゴールデンウィークの予定だっけ? 今んとこ特に何もないぞ?」

「えぇ―……よくそれでわたしの予定に色々言えたよね」

「ちょっと待て言い訳させろ。まだ予定を立ててないだけで、普通に竜也とかと遊びに行ったりしようと思ってたから。別に遊びに行く相手がいないとかそういうんじゃないから」

「いいんだよそんな言い訳しなくて……わたしは高原くんの友だちだからね?」

「その優しい目やめろ! いやほんとに違うから! ちゃんと友だちいるから!」

「うんうんそうだね、お友だちいるよね。高原くんさえよければゴールデンウィークはわたしと一緒に遊ぼっか?」

「聞けよ! あと部屋に引きこもるって言ってるやつとどうやって遊べと!?」

「え、部屋で一緒にゲームするとか色々あるでしょ? ここと違ってわたしの部屋なら色々あるよ? ボードゲームもいっぱいあるし、ゲーム機も最新のやつ全種類あるから、多分、一日中遊べるんじゃない?」

「めちゃくちゃゲーム好きなんだなお前」


 生徒会室にも人生ゲームとか色々持ってきてるし、毎日、ここで一緒に遊んでるから何となくは察してたけども。


「えへへ、昔から自分のお部屋大好きっ子だったし自然とそうなったというか。まあ、それはともかく、いつうちで遊ぶ?」

「え? 遊ぶって冗談じゃなかったのか?」

「うん。冗談っぽい感じ流れだったけど普通に誘ってたよ? せっかくのゴールデンウィークだから、友だちと遊んだりしたいし」

「いやわかりにくいし、さっき友だちと遊ぶより一人で過ごす方が楽って言ってなかったか?」

「うん。会長モードでいるのって疲れるし。だから素でいられる高原くん相手なら問題ないよ? てか家族以外で素でいられる相手なんて高原くんくらいしかいないし」

「お、おう、そうなのか……」


 こ、こいつさぁ……マジで……不意打ちでドキッとすること言うのやめろっての。こんなん普通に言われたらめちゃくちゃ意識しちゃうやつだぞ! 


 たぶん本人的にはまったく意識してないんだろう、それがなおさらタチが悪い。縁の問題があるから仕方ないのかもしれないけど、こいつはマジで自分に鈍感すぎる。


 漫画やアニメで鈍感な主人公の言葉に振り回されるヒロインの気持ちがとてもよくわかった。鈍感って罪深いわぁ……。


「それで高原くん、いつ遊ぶ? 何日遊ぶ?」


 そんな俺の気持ちを天崎が知るわけもなく。鈍感系主人公ムーブを地で行く天崎は、にっこにこな笑顔で遊ぶ日を決めるのだった。


 なんてまあ無邪気な笑顔だこと。本人的には仲のいい友だちと遊びたいって純粋に思ってるんだろうけど、こっちからしてみれば天崎は普通というかめちゃくちゃ可愛い女の子(しかも俺の好みドストライク)なわけで。


 そんな相手から他意はないってわかってても、ゴールデンウィーク一緒に遊ぼうって誘われたら普通に焦るだろ!


 落ち着け俺、天崎にそんな意図はないんだから、こっちが変に意識するのはよくない。普通に、そう普通に竜也と遊ぶのと同じ感じで考えればいいんだ。

 二人とも立場的には幼馴染なんだから一緒一緒。天崎と遊ぶの竜也と遊ぶのも同じようなもんだ、そうなんだ。だから一緒に遊ぶくらい平気平気、そうだよ、むしろどこに問題があるっていうんだよまったく――


「あ、そうだ、せっかくの連休だしいっそ泊りにしちゃう? それで徹夜で〇鉄100年プレイとかやろうよ!」


 天崎ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!


 からかってるのか冗談なのかと思ったが、どちらでもないのが天崎の様子からわかった。


 この純粋なきらきらした目! さてはこいつ遊ぶことしか頭にないな! 


 とんでもない提案をする天崎に頭を抱えたくなる俺だった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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