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第二十七話 デタラメと火消し

有織はべりです。

拙文ですが、お読みいただき、楽しんでいただけると嬉しいです。

 俺とゆーちゃんが幼馴染だってバレた明くる日のこと。


 あの話は完全に学校中に広まったようで、登校中、同級生はもちろんのこと、顔も知らない上級生から下級生にまでじろじろと見られる羽目になった。生徒会役員になった時以上の注目度にげんなり。


 こうして朝、自分の席に来るだけなのにどっと疲れてしまった。何なら今もちらちら見られてるけどな!


 望んでもないのに有名人になってしまって心の底から辛い。


「そんなにアイドルの幼馴染って気になるのかよ……誰が幼馴染だっていいだろ別にさぁ……! だいたい幼馴染だったら竜也もそうなんだから、そっちを見ればいいと思わないか? なあ竜也!」

「思うわけねーだろ」


 呆れたように竜也が言う。


 こいつもゆーちゃんの幼馴染だって昨日バレたはずなのに、なんでこいつはこんな涼しい顔をして平気でいられるのか。不思議で仕方ない。


 あれか? このイケメンは周りに見られてもストレスを感じないスキルでも持ってるのか!?  


「だいたいだよ! 同じ幼馴染でも俺じゃなくてイケメンモテ男の竜也が注目されるのが普通じゃないか!? イケメンと超絶美少女の間に挟まれた可哀そうな普通の男子生徒は放っておいてあげろよ!」

「追い詰められすぎて謎の理論を持ち出すんじゃねーよ。むしろ可哀そうなのはお前らに巻き込まれた俺の方だろ」

「それは正直すまんかった! でも助けてくれてありがとう!」


 昨日、竜也が説明してくれなかったらどうなっていたことやら……竜也も同じ幼馴染だってバレたおかげで、この程度の注目で済んでる気がしなくもない。


 それに、二人が幼馴染っていうのより、三人が幼馴染っていうの方がラブコメ的な気配は確実に薄まるので、変な邪推をされる心配が減るからゆーちゃん的にもナイス。


「だがしかしだ! それとは別に竜也に言いたい!」

「おう、なんだよ」

「なんで俺ばっかりこんな風に見られたり絡まれたりする!?」


 幼馴染は三人いるのに、あくまで個人的な感覚だけど、昨日今日の注目具合で言えば、俺が4、ゆーちゃんが5、竜也1くらいに感じる。


 おかしい、こんなことはあってはならない。あまりにも不公平じゃないだろうか。


「いやお前、そりゃそうなるだろ」

「ならねえよ! なに順当な結果みたいに言ってんの!?」

「順当な結果だからだよ。あのな? 昨日、幼馴染ってバレただけならともかく、放課後、何があった?」

「俺が、なんかバチバチな感じになってた天崎とゆーちゃんから逃げようとして失敗した」

「ああ、そんな情けないこともあったな。見ててあれはどうかと思ったぞ……」

「だってなんか二人ともめっちゃ怖かったから……何でああなったのかわからないけど、あのままだと何故かめちゃくちゃ巻き込まれる予感だけはあったし……」

「だからと言って、黙って逃げようとするバカがいるか。ってそんなお前のヘタレのことは今更どうでもいいんだよ。俺が言ってるのは、天崎さんが来る前のことだ」

「ああ、ゆーちゃんが一緒に帰ろうって誘ってくれて、俺が挙動不審で気持ち悪くなってた時ね」

「たしかにあの時のお前は気持ち悪かった」

「シンプルに辛辣!」

「自分でも気持ち悪いって言ってただろうが。そうじゃなくて、天崎さんが来る直前、あの時、あいつがお前にしようとしたことが、こんなにも注目されてる一番の原因だろうよ」

「あー……なるほどな、理解理解」


 たしかに昨日のあの感じは告白するように見えなくもない。

 実際、当事者の俺ですら、今からゆーちゃんに告白されるんじゃないか、ってありえない妄想が脳裏によぎったくらいだしな。

 

 それを見てたやつらの中に、そんな俺と同じような悲しい勘違いをするやつがいたのかもしれない。

 人気アイドルが男子、しかも幼馴染に告白しようとする現場を見ちゃったら、俺だって絶対、気になるし。


 まあ実際はそんなことは事実無根の大嘘で、未来永劫絶対にありえないんですけどね! 


 納得していると竜也がものすご~く疑わしそうな目をしていた。

 

「なるほどなってお前……本当にわかってるか?」

「馬鹿にするんじゃないよ。流石の俺でもそれくらいわかるわい」

「いや絶対わかってないだろ。もしちゃんと理解してたら、ヘタレのお前がそんなさらっと言えるはずないし」

「しつこい上に失礼だな! わかってるって! あの時、ゆーちゃんが俺に告白しようとした――」

「!? え、お、お前まさか本当に――」

「みたいなありえない勘違いが広まってるってことだろ? もしそんなデタラメが広まってたとしたら、たしかにこんなに注目されるに決まってる。アイドルが公衆の面前で告白とか、センセーショナルすぎるもんな。そういうことだろ?」

「……………………そうだな…………はぁ~~~~~~」

「本人を目の前にクソデカため息とか失礼すぎるだろ! え、間違ってるか!?」

「いーや、お前の言った通りだろうよ」


 じゃあなんでため息つかれた上に、どうしようもないものを見る目をされないといけないのか。


「その何か腑に落ちないというかすっきりしない感じやめろよ……ってちょっと待て? 嘘でもそんな噂が広まってたらゆーちゃんのアイドル生命的にヤバくないか!? あと俺の命的にも! 過激派に襲われたりするんじゃないだろうな!? こ、これはえらいこっちゃ! すぐにちゃんと弁明しないと!」

「待て待て待て、誰にどんな弁明をするつもりだお前は」

「とりあえずここにいるクラスメイト全員に言い聞かせる! ゆーちゃんが俺に告白なんてするはずがないし、間違っても彼氏彼女的な関係では一切ないって!」

「絶対にやめとけ。噂の当事者がそんな必死に火消ししてたら、嘘でも真実だと思われるぞ。噂なんて黙ってりゃいつの間にか忘れられるんだから、何もせずに大人しくしてろ」

「馬鹿野郎! 大人しくしてる間に炎上して全焼したらどうするんだよ! 万が一、ありえないけど、噂が一人歩きして俺とゆーちゃんがそういう関係だって周りに浸透したらヤバいだろ! 俺はともかくゆーちゃんが!」

「むしろあいつはその方がいいとか思ってそうだけどな」

「こんな時に笑えない上、悲しすぎる冗談を言ってるんじゃないよ! 好きでもない男と恋人同士だって思われるとか拷問以外の何物でもないだろ!」

「冗談じゃ……いや、何でもない。はぁ……やっぱり何もわかってなかったか……あんなの誰が見たってバレバレだろうに……」

「そりゃこんな噂、普通に聞いたら嘘だってバレバレだろうよ! でも念には念を入れておいた方がいいだろ? 嘘を真に受けるバカだっているんだから! ていうかこれだけ広まってるのがその証拠だろ! 嘘の情報は本当の情報より広まるスピードが数倍も速いんだぞ!」

「ああうん、そうね」

「なんで急に興味なさげ!? もうちょい真剣になれよ! ゆーちゃんの将来がかかってるんだぞ!?」

「そのゆーちゃんのことを思うなら何もしないでやれ。いやマジで頼むから。まわりまわって俺が面倒なことになるのが手に取るようにわかる。それに、噂の当事者はお前だけじゃなくてあいつもだろ。何をするにしてもあいつに話してからにしろ」


 竜也にそう言われて、はっとする。


 たしかに竜也の言う通り、噂を否定するにしてもゆーちゃんと話し合ってからの方がいいだろう。


 俺とゆーちゃんの言ってることが違ったら、火消しに失敗するどころか、変に誤魔化してるようにとられる危険もあるかもしれない。

 弁明する時に話の整合性がとれないということほど怖いものはないのだ。


 焦って行動しようとした俺とは違って、冷静に物事を見ている竜也は流石だ。


 改めて幼馴染のすごさに気づきつつ、落ち着くために深呼吸を一つ、よし、落ち着いた、もう完全に落ち着いたぞ俺は!


「じゃあ竜也、俺、行ってくるわ!」

「どこに何をしに行くつもりだ」

「さっそくゆーちゃんの所に行って今後の方針を話し合うんだよ! 善は急げって言うだろ?」


 俺の後方左側、窓際の一番後ろがゆーちゃんの席だ。


 そして、そこから、じ~~~~~~~~~~~~~っとこっちを見ているゆーちゃん。


 実はさっきからめちゃくちゃ見られてるのは知っていたけど、どういう反応をしていいのかわからなかった。


 だから、こうして話しかけないといけない理由ができたのはありがたい。


「……一応聞いとくぞ。お前、あいつにどんなこと言おうとしてる?」

「そりゃお前、ゆーちゃんが俺に告白しようとしたってありえない勘違いを周りにされてるかもしれないってことと、万が一、このまま放置して、好きでもない男子と付き合ってるかもみたいに思われたら困るだろうから、その前に話を合わせてこの事実無根の噂を二人で否定しようって」

「よしわかった俺も一緒に行く。そして俺が全部説明するからお前は絶対に何もしゃべるな」 

「え、でもそんなの竜也に悪いだろ。まだどんな感じでゆーちゃんに話していいかわからないから、一緒に来てくれるのはありがたいけど、説明くらいは自分で――」

「頼むから、本当に、お前は何もしゃべるな」

「お、おう、わかった」


 竜也から物凄い圧を感じたので素直にうなずいた。


 なんでそんなに自分が説明したいんだ竜也は。急に説明キャラにでも目覚めたのか。


「あと、あいつへの接し方は昔と同じで大丈夫だ」

「いや、ゆーちゃんもそう言ってたけど難しすぎるだろそれは……」


 いくら昔仲が良かったとはいっても、あんなに可愛く成長した女の子に、ヘタレの俺が昔の感じで行けるか。


 ちらっとゆーちゃんの方を見ると、慌てた感じでさっと顔を逸らされた。


 あんなに可愛い子が実は幼馴染で、昔はめちゃくちゃ懐いてくれてたとか未だに信じられない。


 昔なんか普通にくっついてきてたし、もし今そんなことされたら色んな意味で死んでしまう。男女を意識してなかった頃ってすごいな。


 思えば、あの頃の俺は贅沢な体験をしてたんだなぁ、なんてしみじみとしながら、まさかの竜也同伴でゆーちゃんの所へ向かうのだった。


 なお、話し合いの結果は、何もしないで静観することになった。もし何か聞かれたら明確な否定も肯定もしないであやふやに誤魔化す方向で。


 聞かれたら普通に否定したらいいんじゃないかと思ったけど、ゆーちゃんの強い意見でそうなった。


 なるほど、明確なことを言ってしまうと、そこだけ切り取られたり曲解されたりする危険もあるもんな、流石だ。


 なんて感心してると竜也とゆーちゃんから、昨日の天崎とまったく同じ目で見られた。


 そして、二人して仕方なさそうにこう言ったのだ。


「やっぱり空太は空太だな……」

「やっぱり空ちゃんは空ちゃんですね……」

 

 仲いいなお前ら。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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