表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/111

幕間③ アイドルの気持ち

有織はべりです。

拙文ですが、お読みいただき、楽しんでいただけると嬉しいです。

 放課後の屋上は私のお気に入りの場所だった。


 昼休みなんかは人で溢れてるけど、放課後になったらここに用事のない人は来ないので、たいていは誰もいない。


 だから、ここはとても静かで、誰にも見られることがなくて、元々、というか今もそうだけど、ほんとは目立つことなんて好きじゃない人見知りな私にとって、学校の中だと数少ない気持ちが落ち着く貴重な場所。


 特に、考え事をする時なんかにはぴったりで、放課後のこの場所は私のお気に入りだった。


 念のために屋上に誰もいないことを確認してから、いつも座ってるベンチに腰掛けて、ふぅ、と息を吐く。


 あぁ~~~~~~~……! や、やりすぎちゃったぁ~~~~~~~~~~~!!


 今日のことを思い出してものすごく反省する私。


 何やってるの何やってるの私ってば! 朝も放課後もぐいぐい行き過ぎ! 絶対間違えちゃったよ! 空ちゃんも急に距離詰められてすごい困ってたよね!?

 うぅ……本当はもっと自然な感じで徐々に距離を詰めていこうと思ってたのにぃ……あぁ……引かれてたらどうしよう……。


 思い出したら恥ずかしくて顔から火が出そう。


 いきなり接点がなかったクラスメイトから実は幼馴染だって言われて、その次の日から今までとは全く違う感じで急にぐいぐい距離詰められたら驚くに決まってる。少なくとも私はそうだ。


 その辺はちゃんと気を付けようと思ってたのにぃ……空ちゃんが山本さんと仲良さそうにしてたからってそこでどうして焦っちゃうのかな私は。

 二人とも仲良さそうで羨ましいなぁって思っちゃったのはわかるけど……なんで山本さんに嫉妬なんてしちゃったの私! 何様なの! 束縛の強い彼女か私は!


 あんな感じで接してしまったものだから、その態度を改めるのも不自然な気がして放課後もあんな感じで空ちゃんに話しかけちゃったし……て、ていうか何で告白なんかしようとしちゃったの私ってば! 


 本当は一緒に帰りながらお話したかったから空ちゃんを誘いに行っただけなのに、気づいたら告白しそうになっていた。 


 あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………こ、告白は二人きりの静かな場所でしようと思ってたのにぃ……昨日はヘタレて言えなかったくせに、どうして今日はあんなことをクラスの人たちに前で言っちゃいそうになったの!? バカなの私は!? もし天崎さんが来てくれなかったら、絶対にあの時、私の気持ちを言っちゃってた……。


 そう考えると天崎さんの邪魔にも感謝するべきなのかもしれないけど、そんな気持ちには申し訳ないけどなれない。


 だって天崎さんはずるいから。放課後は毎日空ちゃんと一緒にいるんだもん。生徒会業務って言うのはわかるけど、ずるいったらずるい。


 ベンチから立ち上がり、屋上の端から生徒会室をじっと見つめる。


 カーテンが閉まってるので中の様子はわからないけれど、きっと二人は仲良くしているのだと思う。空ちゃんの天崎さんへの態度が明らかに変わってるから。


 いつの間にか天崎さんのことを呼び捨てにしていたし話し方もすごく砕けた感じになっていた。


 空ちゃんが生徒会に入ってから二週間くらいしか経ってないのに、二人が急速に仲良くなっていってるのを感じる。


 このままじゃダメ! 何もしなかったら、きっと天崎さんに空ちゃんを取られちゃう! 


 そんな焦りを覚えて、昨日、私は竜也にお願いして、空ちゃんにここへ来てもらった。


 でもその目的は、好きだって告白することじゃなくて、実は私が幼馴染のゆーちゃんだってことを空ちゃんに知ってもらうため。


 きっとそうしないと空ちゃんは私のことを、アイドルの伏見結月、としか見てくれないし、昔みたいに気安い関係になんて絶対になれない、そう思ったから。


 きっと竜也は私が告白するみたいに思ってたかもしれないし、実際、空ちゃんが屋上にやって来る直前まで、ずっと告白しようか迷ってたけど、結局、ヘタレの私にはできなかった。


 でも勇気を出して幼馴染って伝えたのに、空ちゃんは昔みたいに接してくれないどころか、変にアイドルとしての私を気遣ってるみたいになっちゃうし……二人で帰るのはアイドルとしてよろしくない、なんて言っちゃうんだもん。


 そんな気遣いをしてくれる空ちゃんの気持ちはありがたいけど、アイドルとしての評判なんて気にしなくてもいいのに。そのために今の事務所に入ったんだから。


 私は一緒に遊んでたあの頃から空ちゃんのことが好き。ずっとずっと大好き。


 何年も離れてたけど、私の心にはずっと空ちゃんがいて……だから進学先を決める時、竜也に空ちゃんの受験する学校を聞いてここに進学した。


 私の実家からここまで通学するのは時間がかかるけど、それでも空ちゃんと同じ学校に通いたかったから。


 小学校の時、私だけ学区が違って空ちゃんや竜也とは離れ離れで寂しかったことは、今でも覚えている。そんな私の気持ちを竜也に言ったら「いや重いわ……」って引いてたけど。


 とにかく私は空ちゃんのことが好きだ。だからもし一緒に帰って私たちが付き合ってるんじゃないかみたいに周りから見られても、困るどころかむしろ、ばっちこいなわけなのに……そんな私の気持ちは空ちゃんに伝わらない。


 まあ、空ちゃんにしてみたら私の気持ちを知らないから、そんな風に私が考えてたなんて伝わるはずもないんだけど……でも流石にさっきので空ちゃんにはバレちゃったよね……私の気持ち……あんなのほとんど言っちゃってるみたいなものだったし! 

 いくら空ちゃんが鈍くても間違いなく伝わっちゃったよね!? あああああああああああ! 私のバカっ! 考えなしっ! あ、明日から空ちゃんにどんな風に話しかけたらいいの!?


 うぅ……そ、それにもし断られたらきっと気まずい感じになっちゃいそうだし…………やだな……空ちゃんと気まずくなるの……昔みたいに仲良くできなくなっちゃうの、やだよ……。

 

 そんな最悪の未来を想像して泣きそうになってしまう。


 相変わらず空ちゃんがいる生徒会室はカーテンで遮られていて、中の様子は私にはまったくわからない。


 なんだかわからないけど、さっきまでとは違って、そのことが今の私にはとても辛くて、思わず目を背けてしまうのだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

よろしければ、ご感想や評価などをいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ