第二十六話 不機嫌とかわいそう
有織はべりです。
拙文ですが、お読みいただき、楽しんでいただけると嬉しいです。
「むっすぅぅぅぅぅぅぅ~~~~~!」
校内有名人ランキングトップを争う二人のとんでもない騒動が終わり、いつもの生徒会室。
天崎の機嫌がとてつもなく悪い。わざとらしく頬を膨らませて拗ねてますよアピールをしながら、さっきから何か言いたげな目でじ~っと俺のことを凝視してくる。
おそらく、というか間違いなくさっきの件が原因だろう。
勝手に逃げようとしたのはちゃんと謝ったし、お前も一応、許してくれたじゃん! なのに、なんでまだそんな露骨に不機嫌なの?
「高原くんはさぁ~いいご身分だよねぇ~」
うわ、しかもなんかめっちゃ面倒くさい感じで絡んできた!
「人気アイドルが幼馴染でぇ? しかもそんな可愛い子にぃ~一緒に帰ろ!なんて誘われてぇ~生徒会をさぼろうとするだなんてぇ~」
「いや別にさぼろうとはしてない――」
「お黙りっ! あの時わたしが乱入しなかったら、絶対なんやかんやあって生徒会なんて忘れて伏見さんと仲良しイチャイチャ帰宅してたでしょ! わたしよりあの幼馴染を取ってたでしょっ!?」
「何だその口にするのも恥ずかしいワードは!? だ、誰がそんなことするか!」
「うるさいよ! でもダメで~す! わたしたちの呪いが解けるまで高原くんはわたしと一蓮托生、死ぬも生きるも一緒って契約を生徒会に入った時に交わしたんだから!」
「そんな契約を交わした覚えはない! ていうかさっき乱入って言ったかお前! やっぱりあのタイミングはわざとだったんだな!?」
「むしろ何で偶然だと思うの? わざとじゃないと、あんな完璧な邪魔ができるわけないでしょ?」
「こいつはっきり邪魔って言いやがった! お前、俺はともかくゆーちゃんに何か恨みでもあるのか……?」
「伏見さんには別に何も思うところはないよ!」
「それ絶対に思うとこあるやつが言う台詞……」
「う、うるさい! な、ないったらないよ! 伏見さんのことなんて別にどうでもいいもん! わたしが邪魔した理由は高原くんの方にあるんだから!」
「いやなんでだよ」
ダル絡みしてくる天崎の言ってる意味が、まったくもってわからない。
ゆーちゃんがの邪魔した理由が俺って……何がどうしてそうなったのか。
「その顔はまったく心当たりがないって顔だね……!」
「一応考えてみたけど、残念ながらまったくわからん」
「あのさ、あの日、生徒会室でわたしは言ったよね? 高原くんが一人で幸せになるなんて絶対にさせないって!」
「そういえばそんなこと言ってたな……何回聞いてもやっぱり最低だ。で、それがどうしたよ?」
「どうしたよ? じゃないよ! あのままわたしが何もしなかったら伏見さん、絶対に高原くんへ告白してたでしょ!?」
…………こいつは何を言ってるんだ? あのゆーちゃんが俺に告白なんてありえるわけないだろ。
あの時は一瞬、もしかしてそんな可能性もあるかもしれないなんて恥ずかしくも妄想してしまったが、冷静になって改めて考えると、あの時俺はなんてありえないことを考えてたのか!
そもそもゆーちゃんがあんなに距離が近いのも幼馴染だったからだろうし、その近さも恋愛が関係してるわけじゃない。幼馴染の距離感なんて多分あんな感じだろう。俺と達也もそんな感じだし。
俺が漫画とかアニメとか見まくってるせいだろうな、幼馴染って昔から実は好きでしたみたいな感じが当たり前みたいに描かれるから、あの時もそのイメージに引っ張られてしまったんだろう。
二次元と三次元はきちんと分けて考えろ俺。幼馴染だからなんだというのかってやつだよ、昔一緒にいたからって俺みたいなぱっとしない男を好きになるわけないだろ。
好きになるとしたら一緒にいたどう考えても竜也の方だ。竜也は昔からイケメンだったからな! それにもし仮に告白だとしたらあんなクラスメイトの前でするのは流石にないだろうし、いやだから仮にでもそんな説を考えることが烏滸がましすぎるというか、あーもう改めて考えてみても恥ずかしすぎる!
いいかげん身のほどをわきまえろ俺! 勘違い男は一番モテないんだぞ! だから彼女ができないんだ山よりも高く海よりも深く反省しろ俺よ! とにかくあのゆーちゃんが俺なんかに告白するなんてありえない妄想は本っっっっっ当にやめろ!
みたいな感じで、のたうち回りたくなるような深刻な羞恥ダメージを受けたというのに。
「あ~んな可愛い幼馴染、しかも人気アイドルから、好きです! 付き合ってください! なんて告白されたら、高原くんのことだから、めちゃくちゃ気持ち悪い感じでどもりながら付き合っちゃうに決まってるよね! それで生徒会なんて忘れてそのまま仲良しイチャイチャ帰宅するんだ! そんなのずるい! わたしを置いて一人だけ幸せになって脱童貞するなんて許さないからね!」
まるで名探偵が犯人に決定的な証拠を突き付けるように言って、こちらを力強く指さしてくる天崎。
なるほどなるほど………………何かと思ったらそんな理由で邪魔したのか。
聞いてみれば何てしょうもないというかありえないことを心配してるのか。杞憂もいいところだ。
警戒する猫みたいにこっちを睨んでる天崎に、俺は優しい顔を作り天崎の肩にぽんと手を置いて、諭すように言った。
「天崎の言いたいことはよ~くわかった。でもな天崎よく考えてみ? そんなことありえるわけないだろ? そもそも、あのゆーちゃんが俺なんかに告白するわけないだろ? 告白って好きな相手にするもんだぞ? これ以上は言わなくても頭のいい天崎ならわかるな? だから俺とゆーちゃんが付き合うなんて存在しない未来を変に心配するのはやめとけ? 時間がもったいないぞ? それと付き合うのと脱童貞は関係ないし、ていうか何回目になるかわからないけど童貞って言うなっつってるだろうが」
「うわぁ……」
思いつくまま優しく説明してやったはずなのに、天崎はなぜか俺のことを信じられないバカを見るような目で見てきた。そしてものすごく何かを言いたげにしている。
なんか見覚えあるなこんな感じの顔…………あ、そうだ竜也だ竜也。あいつもたまにこんな感じの顔で見てくるんだよなぁ……でもって、だいたいその後疲れたみたいにため息をつくんだ。今の天崎みたいに。
「高原くんさ……それはもしかしてわざと言ってるの? それとも素で言ってる?」
「何がだ?」
「わぁ、なんて純粋な目……この目は素で言ってるね……一応、念のためもう一度聞くけどさ……本気で言ってる?」
「なんでもう一回聞いてきたのかはわからんが、さっきから俺は本気のことしか言ってないぞ?」
「…………うん! ごめんね、わたしが悪かったよ! そうだね、高原くんの言うとおりだよ! さっき言ったことは忘れちゃって! さ、今日も楽しく生徒会で遊ぼー!」
まるで空気を変えるように天崎はパチン!と手を叩くと、にっこり笑った。
遊ぼうってお前、あの時、今日は溢れるくらい仕事があるって言ってたのもやっぱり嘘かよ。マジで遊んでばっかりだけど本当に大丈夫なんだろうなこの生徒会は。
なんて思ってはみても、仕事がないのは事実なので仕方がない。今日もまったりとした、いつもどおりの生徒会らしい。
「伏見さんもかわいそうに……」
「? すまん、声が小さくてよく聞こえなかった。誰がかわいそうだって?」
「さあ? 強いて言うならかわいそうなのは高原くんの頭じゃない?」
そう言って、天崎にしては珍しい、じとーっとした目で見てきたのが印象的だった。
あと誰がかわいそうな頭じゃい。これでも定期テストじゃ普通よりは上のあたりにいるんだぞ俺は。
なんて反論をしたら、ジト目にプラスして大きなため息をつかれた。いやなんでだ。
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