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第二十三話 実感と例外

有織はべりです。

拙文ですが、お読みいただき、楽しんでいただけると嬉しいです。

「でもまさか、あの伏見さんが高原くんの幼馴染だなんて思わなかったよ」


 天崎がそんなことを言い出したのは、散々俺のことをいじり倒してくれやがった後、俺が二杯目のココアを飲もうと電気ケトルのスイッチを入れた時だった。


「あー……なんかそうらしいな?」

「らしいなってあなた。めっちゃ他人事みたいに言うね」

「俺も昨日知ったばかりだからな、実感とかほとんどないぞ」

「めちゃくちゃ最近じゃん」


 昨日、本人から、実は昔遊んでたゆーちゃんでしたって伝えられたばかりだからな。


 同じ幼馴染かつゆーちゃんとは親戚の竜也も認めていたので、それが真実なのは確かだが、正直いまだに半信半疑なところがあったりする。


 人気アイドルの正体が実は昔遊んでた幼馴染ってどんな展開だよ。アニメか漫画の世界か?


 ありえないだろうけど、もし仮に嘘だったとしたら、そんな謎の嘘をつく意味も理由もわからないし、そんな面倒な嘘に竜也まで協力するとも考えにくい。

 

 なのでまあ、伏見さんが幼馴染のゆーちゃんだってことはおそらく本当のことだろう。

 ただ、こうして改めて考えると色々と疑問に思うところはあった。


 何でこのタイミングで自分が幼馴染だって伝えてきたのか、幼馴染だって伝えるつもりがあったならなんで一年の頃に言ってこなかったのか、どうしてわざわざクラスメイトの前でバラしたのか、などなど……。


 う~ん伏見さん――ゆーちゃんはいったい何を考えてるのか……。


 そんなことをあーだこーだ頭の中で考えながらココアの粉をカップに入れる。


 ココアは濃い目が好きなので、袋に書いてあるよりちょっと多めに。むしろ多すぎるくらいがちょうどいい。さっきの天崎みたいなのは論外だが。


「もしかして高原くんって急に幼馴染が現れる特殊体質か何かなの? 普通、こんなにポコポコ幼馴染って出てこないよ?」

「んなわけあるか、ポコポコって何だ幼馴染はタケノコか。それにまだ一人目だそ」

「わたし! わたしも幼馴染! しかもわたしが一人目で伏見さんが二人目! 順番守って!」

「あ~……そう言えばそうだったっけ。すっかり忘れてた、すまん」

「普通にひどいこと言われた! くっそぅ……絶対にわたしのこと思い出させてやるんだからぁ……!」


 めちゃくちゃふくれっ面で睨んでくる。いやごめんって。


 というかぶっちゃけ、ゆーちゃん以上にこいつの幼馴染発言の方が謎だ。


 何度思い出してみても、小さいころ天崎と遊んでた記憶はまったく出てこない。もしかして俺のことを誰かと間違ってるんじゃないだろうか、なんて疑問が出てくるレベルで。


 それに神さまのノーコメントも妙に気になるし……あーもう! 俺の幼馴染を名乗るやつ面倒すぎるだろ!

 

「脳に電気流したりしたら思い出したりするのかな……?」

「ぼそっと怖いこと言うのやめろ。どこのマッドサイエンティストだお前は」

「エジソンにする? テスラにする? それとも~フ・レ・ミ・ン・グ?」

「もしかしなくても直流か交流か聞いてやがるな、電気を流すなって言ってんだよ。あとフレミング関係ないだろ」

「えへへ~さーせん。でもスルーしないでちゃんとつっこんでくれる高原くん好き~」

「はいはい、ほら、ココアのお代わりあげるから早くコップ出しなさい」

「わ~いココア大好き~ぬるめ濃いめ牛乳マシマシでお願いします!」

「残念ですが、当店、熱め濃いめ牛乳ナシナシしかお出ししておりません」


 子どもみたいな無邪気な笑顔で自分のコップを差し出してきた天崎から、努めて冷静にカップを受け取り、言葉を返す。


 好きって言葉にドキッとしたのがバレたら負けだ。もしバレたら死ぬほどいじってくるに違いない。


 天崎のやつ、さらっと好きとか言うから困る。100パーセントネタで言ってるのはわかるけど、こっちの心臓に悪いんだよ!


 内心そんなつっこみをしながら、ちょうどよく沸いたお湯を使って、とりあえず俺のと同じくらいの濃さで天崎の分のココアも作る。当然、湯は適度な量で。もう薄いココア風味のお湯を飲むは勘弁。


「ほい、おまたせしましたよーっと」  

「わ~いココアおいち~」

「いや言い方がおこちゃまのそれ」

「は? 今幼女って言った? ねえ? 誰が幼女だって? これ見ても幼女って言えるんかええ?」

「急にガラの悪いおっさんみたいになった……わかった、わかったから、さっきの発言を撤回するから、集中線が描かれそうなくらい胸をこっちに突き出してくるのやめろ!」

「ふふん! わかればいいんだよ!」

「どや顔やめろ。ていうかお前ね、さっきから簡単に好きって言ったり胸を主張するのはやめなさい! そんなことしてたらいつか勘違いする男が現れるぞ!」

「あはははは~ないない。高原くんも知っての通り、わたしの縁は呪われてるからね! しかも一生独り身処女が確定するレベルで! そんな恋愛的な縁が壊滅的に死んでるわたしに好きって言われても、勘違いするなんて絶対にないない。それに前にも言ったけど、恋愛の縁がないとエッチな目でも見られないからそっちもな~んにも問題なし! あ、もしかしたら美術館とかにある裸婦像の方がまだムラっとくるんじゃないかなっ! 要するに、わたしのことを恋愛的そして性的な対象として見ることができる存在なんてこの地球上、いや宇宙の果てまで存在しないんだよ! あ~っはっはっはっは~!」

「なんて悲壮感の漂う笑い……でもさすがに一切存在しないってことはないだろ?」

「しないよ? それはし~っかり神さまのお墨付き。しかも、うちは代々同じ呪いを受け継いでて、それを証明する日記や資料もい~っぱい残ってるよ! あはは~神さま公認の上に長~い歴史の証明付きだよ~すごいでしょ~羨ましい? 羨ましいでしょ? 羨ましいって言って!」

「いや、その、何かごめんな? ほら、甘いの飲んで心を落ち着けな?」

「謝るなぁ! うぅ~ココア美味しいよぅ……」


 さっきまで小さな子どもみたいな雰囲気だったのに、今はやさぐれたOLみたいになってる……ちびちび飲んでるココアがお酒みたいに見えた。


 それにしてもまさか天崎の縁ってそんなレベルでヤバいもんだったのか、全然、そんな感じしなかったからわからなかった。しかもそれが神さま公認とか嫌すぎる……。


 でも、言われてみてなるほどだ。学内じゃトップクラスの知名度と人気を誇る天崎が、学内の恋人にしたい女子生徒ランキングとかに一切ノミネートされてないのも、それが原因なのだろう。


 天崎のスペックじゃそういうランキングに入らない方がむしろ不自然だ。それに、よく思い返してみれば、天崎に告白したなんて話を今までに一度も聞いたことがないどころか、天崎のことが気になる程度の話すら聞いたことがないことに気づいて、ぞっとした。


 うわぁ……嫌な意味で縁の問題は本当に存在するって実感しちゃったよ……俺の縁の問題がどんなやつなのかめっちゃ気になるんだけど……。


 いくら将来、可愛くて性格も良い素敵な子と一緒になるって言われてたとしても、自分がどんな爆弾抱えてるのかわからないのは怖すぎる。

 あと、約束があるから俺には言えないっていうのがなおさら! 誰と何があってそんな約束をしたんだ神さま!


 何だかどんどん不安な気持ちになってきたのでココアを飲んで気持ちを誤魔化す。う~ん、温かくて甘い飲み物は気持ちを落ち着かせてくれるなぁ。


 ココアうめぇ…………ん? あれ? でもおかしくないか? 


 俺、天崎に好きって言われたら普通にドキッとするし、胸とか見せつけられたりしたら、その、多少はそういう風な目で見ちゃったりなんかするんだけど……?


 えぇ……何これ……神さまのお墨付きと天崎家の歴史っていう、けっこうちゃんとした裏付けが取れてる中の例外的な存在とか、なんかめっちゃ怖いぞ……。


 とりあえず今度、こっそり神さまに聞いてみようと思った。天崎には秘密で。


 もし天崎の行動が、そういう目で見られることが絶対にない、という謎の安心感から来ているのだとして、実は俺がそういう目で見てるとバレたら、正直、こいつがどんな行動に出るのか想像がつかない。


 それをネタにいじられたりするならまだしも、もし死ぬほど引かれたり嫌われたりしたら、まだ始まったばかりの生徒会活動が地獄と化してしまう。それはとても嫌だった。


 とにかくこのことは天崎には絶対にバレないようにしよう。


 だらしなく机に寝そべって、もはや飲み屋で飲んだくれてるおっさんみたいになってる天崎を見ながら、そう心に決めるのだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

よろしければ、ご感想や評価などをいただけると嬉しいです。

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