第十九話 呼び出しと差出人
有織はべりです。
拙文ですが、お読みいただき、楽しんでいただけると嬉しいです。
「今すぐ屋上に来い」
天崎を飴ちゃんで落ち着かせた後、彼女の言った通り今日も仕事がなかったので、二人でTRPGを遊んでいると、竜也から電話がかかって来て、そんなことを一方的に告げられて、電話を切られた。
えぇ……何事?
「どったの天崎くん? ものすごい微妙な顔になってけど」
「いや、なんか竜也から謎の呼び出しが。よくわからんから聞き返そうとしても、電話には出ないし、メッセージは既読スルーされるし……」
「ええ……それ完全に怒ってない? 何やったの?」
「まったくわからないし、心当たりもない……」
しかも、天崎の言った通り、なんか割と怒ってるっぽかったんだよなぁ……俺がやらかして説教される時の声にそっくりだった。
「あ、そういえば、生徒会が休みなら遊びに行くって言ってたよね……もしかしてそれで怒ってるとか? も、もしそうなら、今から遊びに行ってもいいよ?」
「ないないない。そんな面倒くさいやつじゃないから……とりあえず無視するわけにもいかんし、屋上行って来てもいいか?」
「う、うん、もちろん。き、気をつけてね?」
ちょっと心配そうな目をした天崎に見送られながら、竜也の言った通り屋上に向かった。
うちの学校の屋上は、今どきの学校にしては珍しく、学生の出入りが自由になっている。ただし、本校舎の屋上限定ではあるが。
屋上は、当然、高いフェンスに囲まれており、自分からフェンスを乗り越えようもしない限り、落ちる心配はない。ベンチもいくつか設置されているので、昼休みなんかは人気の昼食スポットになっている。後は告白の定番スポットでもあった。
そんな屋上にわざわざ呼び出しとは、竜也はいったい何を思ってそんなことをしたのか。考えれば考えるほどわからない。
ま、まさか、絶対にあり得ないけど、告白するためとかじゃないよな……申し訳ないけどそっちの趣味はないぞ……。
「その顔は、また壮絶にアホなこと考えてやがるな……」
そんな風に、色んな呼び出しの可能性を考えながら本校舎の階段を登っていると、屋上に繋がる扉の前に竜也が待っていた。ものすごく呆れた顔で俺を見ている。
「なんで呼び出されたから急いできたのに、そんな顔されにゃならんのか」
「こんな顔される理由があるんだよ…… 俺ちゃんと言ったよな? 変な勘違いはするな、下駄箱を間違えるなって。そんだけ言ったのに何でやらかすんだお前は……」
「さっぱり意味がわからん。なんで俺は謎に呼び出されて説教されてるわけ? あと、返事くらいちゃんとしろよ」
「説教したくなる理由があるんだよこっちには。返事しなかったのはあーだこーだ説明するのが面倒くさかったからだ……ほれ」
そう言うと、竜也は露骨に大きなため息をつき、こちらに何かを差し出して来た。
見覚えがある。ついさっき竜也の下駄箱に入れ直した手紙じゃないか。
? 何で今ここであの手紙が出てくるんだ? ていうか呼び出した理由は?
本当にわけがわからないでいたら、竜也がもう一度、大きなため息をついたかと思うと、その手紙を無理やり俺のブレザーのポケットに突っ込んで、背中を強引に押してきた。
「待て待て待て! 本当に意味がわからん! とりあえずちゃんと説明をだなーー」
「うるさい黙れ。その手紙お前宛だから。差出人が屋上にいるから後は勝手に話し合え。お前を呼び出したのは、その差出人から頼まれたからだ、あとは知らん。俺はもう疲れた」
「は!? どういうこと!? え、いや、え!? 本当にどういうことなの!? もっとちゃんと説明をだな!」
「屋上のやつに聞け。俺は誰も来ないようにここで見張ってるから、あとは二人で存分に話し合ってくれ。ちゃんと話し合うまで屋上からは絶対出られないと思えよ。あいつにもそう伝えとけ」
「あ、ちょっとおい竜也!?」
最後は半ば突き飛ばされるような形で、無理やり屋上に放り込まれた。反射的にドアを開けようとするが、びくともしない。
鍵をかけた音なんかはしなかったから、多分、反対側で竜也が抑えてるらしい。いや力強すぎるだろ! 施錠されてるのかと思うくらい、全然開かないんだけど!?
ていうか何!? 何で屋上に閉じ込められた!? そもそも、あの手紙が実は俺宛でその差出人が屋上にいるって何!? どういうこと!?
色々と情報量が多すぎて、完全に混乱していると、後ろに気配を感じた。
そうだ、確か竜也はこうも言っていた。
俺を呼び出したのはその差出人に頼まれたからで、二人で存分に話し合え、と。
恐る恐る、ゆっくり後ろを振り向いてみると、そこには、まったく予想できないような人が立っていた。
風に揺れる癖のない艶やかな長い黒髪、女子なら誰もが憧れそうなメリハリのとれたスレンダーな体型、少し幼さが残る綺麗な顔立ち、そして彼女のチャームポイントである左目の下のほくろ。
「来てくれてありがとうございます……高原くん」
伏見結月。
俺が知る同年代の女子の中じゃ間違いなく一位二位を争う美人で、学校でも人気者でモテモテで、しかも現役の人気アイドルで、間違っても俺みたいなヘタレオタクなんかとは住んでる世界もカーストも違うはずの女の子。
え? 伏見さん? なんで伏見さん? どういうこと? イタズラドッキリ美人局?
予想外どころか全く想像できない事態に固まってしまった。
そんな俺の目を、彼女はまっすぐに見つめてくると、顔を真っ赤にしながら、少し震えた声で言った。
「私っ……高原くんに伝えたいことがあるんです……っ!」
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