第十八話 放課後と手紙
有織はべりです。
拙文ですが、お読みいただき、楽しんでいただけると嬉しいです。
女装だけは絶対しないからなと、山本さんに何度も言い聞かせた昼休みも終わり、あっという間に放課後。
授業という名の束縛から解放されたクラスメイトたちが一斉に騒ぎ始める。人気者の伏見さんの周りなんか人でいっぱいになっていた。
相変わらずすごい人気だなぁ、なんてぼんやり思いながら帰り支度をしていると竜也が話しかけてきた。
「お疲れ、今日も生徒会か?」
「まあなー……まあ特にやることはないんだけど」
「やることないのかよ。だったら休みになったりしないのか?」
「あー……どうなんだろう? ちょっと聞いてみるわ。もし休みになったら遊びにいこうぜ。ゲーセン行こうゲーセン」
たしかに、よくよく考えてみたら、仕事が無い日にわざわざ集まる意味はあるんだろうか?
一日中、ゲームしたり駄弁ったりしてるだけだもんなぁ。それはそれで楽しいけど。
メッセージアプリを立ち上げて、天崎に連絡を取る。
『今、ちょっといいか?』
『はいはいどったの? 今日はTRPGやるよTRPG
ゲームマスターは任せて!』
『二人でTRPGとかやったことないんだけど、色々と大丈夫なのか!? あと仕事は!』
『ないよ?』
『ないんかーい。だったら今日、というか仕事ない日は別に休みでもよくないか?』
『残念ながら、生徒会のお仕事には生徒会室に常駐するということも含まれてるので……ちなみに勤務時間は月〜金の放課後から最終下校時間! 繁忙期には休日出勤もあるよ! やったね!』
『なるほど』
『スルーしないでよ〜! まあ、それはともかく、用事とかあるなら普通に休んでくれていいよ? 休む連絡だけくれたらいいから。もしかして今日、何か用事あるの?』
『竜也と遊びに行こうかなって』
『生徒会室で待ってるね♡』
「どうだった?」
「ダメだった」
「遊びに行くニャン」と言ってるブサイクな顔をした猫のスタンプを返して、スマホをポケットにしまった。嘘は言ってない。生徒会で遊ぶなら、遊びに行くと表現しても嘘にはならないはずだ。
スタンプを送った直後、めちゃくちゃ通知音が聞こえて来た。
「なんかめっちゃ連絡来てるっぽいけどいいのか?」
「大丈夫大丈夫。とりあえず、やることなくても休みにはならないみたいだから、生徒会行ってくるわ」
「おう。あ、ちゃんと靴履き替えろよ? 下駄箱も間違えるんじゃないぞ?」
「そんなミスするか! 俺をどんだけアホだと思ってるんだ!?」
「念の為だ念の為。お前って時々、変な失敗とか勘違いとかするだろ。だから念の為だ」
「いや確かにやるけど、何でこのタイミングでそんな心配? まあ、一応、気にしとくけどさ」
「そうしてくれると助かる。んじゃ、また明日な」
「あいよー。あ、山本さんもまた明日」
「ひゃい!?」
荷物をまとめて立ち上がり、山本さんにも挨拶をする。実は彼女の席は俺の隣だ。
まさか声をかけられるとは思わなかったのか、びっくりした様子の山本さん。
いやまあ、今まで挨拶とかしてなかったから気持ちはわかるけどな。まったく絡んだことなかったし。だから、竜也が少し驚いてるのも納得ではある。
ただ、俺の中ではもう挨拶くらいは普通にする仲だと思ってるから諦めて欲しい。
「ま、また明日……です!」
ちょっと恥ずかしそうに、小さく手を振る山本さんに合わせてこっちも小さく手を振りかえした。通知がうるさいスマホは消音モードにした。いや、こっちが悪いと思うけど送り過ぎだろ!
相変わらず伏見さんの周りは賑わっており、それを横目で見ながら教室を後にする。その時、伏見さんと目が合った気がするが、間違いなく気のせいだろう。
放課後すぐの昇降口は生徒たちで賑わっていた。
うちの学校ってこんなに生徒いたんだなぁ、なんて思いながらぶつからないように自分の下駄箱へ。そして、靴を履き替えようと下駄箱を開けて、びっくり。
なんとまあ、朝と似たような光景が下駄箱の中に広がってるじゃありませんか。
まさか一日に二回も靴箱に紙が入ってるなんて、夢にも思わなかった。
また山本さんか? なんて一瞬考えたが、山本さんとは昼休みに連絡先を交換しているので、何か用があるならそっちを使うだろう。
それに、今回入っていたのはシールで封がされた可愛らしい感じの手紙だ。おそらく山本さんじゃない。ただ、今までの経験から、何となくわかった。
これを入れたのは竜也のことが好きな女子生徒だろう。
よく、竜也に渡しておいて欲しいと言われて、女子から直接渡されたり靴箱に入れらたりしていた手紙と、とても雰囲気が似ていた。
そう、例えるなら、恋をしている人間の雰囲気というか、ほんのり漂う甘酸っぱい青春の気配がする! ってなんて恥ずかしいこと考えてるんだ俺は……。
ただ、朝みたいなこともあるので、念の為に確認しようとも思ったが、ちゃんと封がされてあるものを開けるのもマズい。
まあ、俺宛なんてことは万が一どころか億が一にもないだろうから、普通に竜也のとこに入れておけばいいだろう。
もしかしたら俺宛かも!? なんて変な勘違いをして傷つくような時期は、あいにく、とっくの昔に卒業している。
しっかし、新しい学年になって早々、もう竜也にアタックする子が出て来たとは、相変わらずモテる幼馴染である。素直に羨ましい。
俺は、その手紙を竜也の下駄箱に入れようとして、ふと、さっき竜也に言われたことを思い出した。
一応、確認しておこう…………よし! 間違いない!
念の為に何回も、そこが竜也の下駄箱だということを確認。間違いなく、竜也の下駄箱に、その手紙を入れて生徒会室へと向かった。
それにしても竜也のやつ、ものすごくタイミングのいい心配だったな。もはやエスパーじみてるぞ……。
ちなみに、生徒会室に着いたら天崎にめちゃくちゃ怒られた。あの紛らわしいスタンプとその後の未読スルーに相当お冠だったらしい。
両手でぽかぽかと叩いて来たがまったく痛くなかった。
お詫びの印にと、たまたま鞄に入っていたアメ玉を渡して謝ったら、すんなり許してくれた。子どもかな?
とりあえず、これからは鞄にお菓子を常備しておくことにした。
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