第十三話 優先順位と遊び
有織はべりです。
拙文ですが、お読みいただき、楽しんでいただけると嬉しいです。
恋愛に限った話じゃないが、どんなことにも優先順位というものが存在する。
まあ、何を先にやった方がよくて、何を後回しにしてもいいか、その判断をするだけなのだが、簡単そうに見えてこれが意外と難しい。
自分の中である程度の基準を持ってないと、とっさに判断するのは案外できなかったりするし、この優先順位の基準も人によって割と違ったりする。
特に、嫌なことだったり面倒くさいことをしないといけない時なんか、それを先に済ませるタイプと後回しにするタイプなんかは、はっきり別れると思う。これは優先順位とちょっと違うかもしれないけど。
ちなみに俺は後者である。だって、できたら嫌なこととか面倒なこととかしたくないし。
かと言って、それが、しないといけないこと、だったら、そうも言ってられないのが悲しい話。しかも、それが自分のことならともかく、そこに他の人が絡んでるとかだと、もうとやかく言ってられない。むしろ、先にやっちゃわないと落ち着かなくなるという不思議。
だからだよ? ぶっちゃけ生徒会の活動も、その日、やらないといけないことがあるなら、先にやっちゃいたいわけだし、そうあるべきだと思うわけだ。だからさ、天崎よ。
「やらないといけないことがあるんだったら、せめて、それを終わらせてから遊んだ方がいいと思うわけだ俺は」
「うん、わたしもそう思うよ。明日やろうは馬鹿やろうってね〜、どんなことでも、やろうと思ったらすぐ行動しないと」
「いいこと言ってるなとは思うけど、さっきから、言ってることとやってることがまったく違うんだが?」
そんな俺のツッコミをスルーして、天崎はせっせと2回目の準備を始めていた。
いやまあ、回収した目安箱はどうだったって聞かずに一緒に遊んでた俺も悪いけど、2人ともゴールしていったん区切りがついたんだから仕事しようぜ……。
ちなみにゲームの結果はというと、俺は普通のサラリーマンのくせに、奥さん5人子ども10人とかいう石油王みたいなハーレム家族状態でゴール。
なんでこのゲームは重婚のシステムが採用されてるのか。家族が増え過ぎて、最終的に車の形をしたコマが3つになったのを見て、コマとピンがやけに多く用意されていた理由がわかった。
天崎の方は起業に成功して、そのまま順調に会社が大きくなって大金持ちに。しかし俺とは違い、結婚せず独り身のままゴール。やたら結婚マスが多いのに一回も止まらなかったこいつはすごい。
天崎が「これわたしの未来を暗示してたりしないよね……」なんて真顔で言ってたのが怖かった。まさか縁の問題がゲームにまで関係はしてこないだろ……しないよな?
「さ、準備できたよ高原くん! 今度は絶対結婚してやるんだからね!」
「人生ゲームの目的がおかしくなってるぞ。そうじゃなくて、これを先に終わらせようぜって言ってんだよ」
天崎から受け取った、目安箱の中身である紙の束を見せる。軽く30枚前後はありそうだ。これ全部要望とかだったらどうするんだろう。一つ一つ対応していくんだろうか。
もしそうなら行事がなくても毎週目安箱で忙しくなったりするんじゃないか? なんて思ってしまう。
そんな心配をしていると、天崎があっけらかんと言った。
「へーきへーき、もう一通り目を通したけどほとんど生徒会への応援メッセージだったから」
「目を通したって……いつの間に」
「目安箱から取り出す時に、さっとね。気になるなら高原くんも見てみたら?」
見てみると本当に天崎の言った通りだった。
いやマジでどうなってんの天崎って。できる部分とそうでない部分の差が激しすぎるだろ。
「まあ、そもそもまだ四月だしこんなにもんでしょ。だから今週の目安箱は特にやることはなし! さ、高原くんルーレット回して回して」
「…………いや、待て、待ってくれ。さっき、ほとんど、って言ったよな? つまり、少しは応援メッセージじゃないやつがあるってことで合ってるか?」
「う、うん、合ってるけどーー」
「だよな! だったら、やっぱりやることあるんじゃないか! よしやろう今すぐやろうすぐやろう!」
「え〜……なんで急にテンション高くなったの?」
天崎が不思議そうというか、若干引いてるような気がしなくもないが、今はどうでもいい。
今のところ生徒会業務が天崎におんぶに抱っこ過ぎるので、とにかく仕事をしたかった。でないと、いよいよ生徒会で遊んでるだけになってしまう。
天崎に申し訳なさ過ぎて肩身が狭いのだ。
「まあまあいいからいいから。やることあるんだろ? ほら、どんなことすればいいんだ? なんでもやるぞ? すぐやるぞ?」
「じゃあ早くルーレット回してよ〜ゲームが始まらないじゃんか〜」
「そういうんじゃなくて! 話の流れ的にわかるだろ?」
「いやまあ、わかってるよ? でも別に、わたし一人だけでできることだし、むしろ、高原くんを巻き込むのは申し訳ないというか……」
「何でだよ。気を遣ってくれるのは嬉しいけど、同じ生徒会なんだから一緒にやろうぜ。まあ、俺が足引っ張る可能性が高いけどさ……俺たちは一蓮托生なんだろ? だったらお互い、変な遠慮はやめようぜ」
「高原くん……! そうだね! 確かにわたしたちは同じ生徒会の仲間! 逆に、変な遠慮なんて失礼だよね!」
うんうんと何度も頷いた天崎が、自分の学生鞄から一枚の紙を取り出して差し出してきた。
「それ、目安箱に入ってた、やらないといけない案件のやつね」
「一枚だけか?」
受け取ったその紙は綺麗に折りたたまれており、これを出してきた生徒は几帳面もしくは丁寧な性格なのかもしれない、なんて思った。
「うん! それじゃ、あとは高原くんにお任せするね!」
「おいこら、一緒にやるって話はどうした」
「あはは、冗談だってば〜でも、遠慮しないでいいって言ったんだから、これからは本当に遠慮しないよ? 自分の発言にはちゃんと責任持ってね? 後悔にクーリングオフとかないんだからね?」
「そこまで念を押されるとめちゃくちゃ怖いんだが……」
「でも残念! それを受け取った時点で、もうダメで〜す! これからは、高原くんのことずぅっっっっっと頼りにするからね?」
「だから怖いって!」
その濁った目をした笑顔やめろ!
やっぱりこいつ、どっか闇あるんじゃないか。発言がたまにだけど妙に重いんだよ……。
早くもちょっと後悔しそうになりながら、折りたたまれた紙を開いてみる。さて、いったいどんなことが書いてあるのか。
なになに……………………………え、何これ?
「そういえば、うちの学校って生徒の自主性を重んじる校風じゃない? そのせいかもしれないけどさ、無駄に個性の強い人がた〜くさんいるんだよね〜あはは〜」
わざとらしくそう言った天崎。そっと紙を閉じて天崎を見ると目を逸らされた。
いや、あはは〜じゃねえよ。え、目安箱ってこんなん入ってるの!? しかもそれを毎週確認するわけ?
「………………よし! 人生ゲームやるか!」
「いえ〜い! やろやろ〜!」
言いたいことや、つっこみたいことは、めちゃくちゃあったが、とりあえず、書かれていた内容的に今すぐにできることは何もないので、目安箱のことはいったん忘れて、楽しく遊んで過ごすことにした。
「ねえ高原くん、そんなにいっぱい配偶者がいるんだから、独身のわたしに一人ちょうだい? お金ならいくらでもあるからさ〜」
「発言が最低過ぎる! 配偶者ってそういうもんじゃないから!」
「ぶ〜高原くんのケチ〜! あ、そうだ、だったら、わたしもハーレムに入れてよ。ずっとおひとり様は寂しいんだよ〜お金ならいくらでもあるからさ〜」
「何でも金で解決できると思うなよ? ってこら勝手に自分のピンをこっちのコマに差すんじゃないよ!」
ちなみに、2回目も俺は重婚ハーレムを作り、天崎は独身貴族を満喫した。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
よろしければ、ご感想や評価などをいただけると嬉しいです。




