第十二話 予定と中身
有織はべりです。
拙文ですが、お読みいただき、楽しんでいただけると嬉しいです。
恋愛のことでなくても予定を組むことは大切だ。
身近なところで言えば夏休みの宿題とかテスト勉強だったり友だちとどこに遊びに行くかだったり。受験や就職なんかもそうだろう。
恋愛だったら、遊びやデートの予定を立てておかないと、失敗する確率が高くなる(はず)。したことないからわからないけど、そんなことを書いてる記事はいくつも読んだことがある。
しかし、実は予定を組むのにも色々な能力が必要だったりする。まず、現在の状況を正しく把握する力と、その予定をうまく進めるための具体的なプランニング能力は最低条件。その予定に自分以外の人も絡んでくるとしたら、その人たちとコミュニケーションを取る必要も出てくる。
そして何より大事なのは、予定をきちんと遂行することだ。遊びの予定はともかく、夏休みの宿題なんかはこれが一番難しい。今まで成功したことがない。夏休み最終日に徹夜で終わらせるのは毎年のことである、そして冬休みも同じことを繰り返すという学ばない俺。
とにかく、予定を組むことは大切だし、それをきちんと実行することは意外と難しいことなわけだ。その予定が一年間とか長い期間のものならなおさら。
だから俺は心配なわけだよ。だからこそ、優秀なポンコツのお前に改めて聞きたい。
「本当にこんなアバウトな感じで大丈夫か?」
代々使われてきただろう、生徒会室の使い込まれたホワイトボードを見ながら、さっきの天崎の説明を思い出し、純粋にそう感じる。ぶっちゃけ、めちゃくちゃ不安。
「ん〜? まあ大丈夫でしょ。なんとかなるなんとかなる。そんなことより高原くんの番だよ。ほら、早くルーレット回して回して。は〜や〜く〜」
そんな俺の心配をよそに、当の本人は机のスペースをほぼ占有している人生ゲームに夢中だった。その姿を見てると、ますます不安が増してくる。
こいつが意外と優秀なやつなのは、付き合いはまだ短いけとわかってる。けど、それとは逆に、めちゃくちゃポンコツな部分があることも理解している。
だから、大丈夫って言われても、なんか安心しきれないんだよなぁ……だってお前、イベントの開催についての予定がこれって。
改めてホワイトボードを見る。
◯今年の生徒会行事予定と、イベントにできそうなアレコレ〜
・四月
特になし! 強いて言うなら委員会と部活の紹介くらい?
・五月
球技大会! 競技を決めたらオッケー!
ゴールデンウィークは生徒会もお休み!
・六月
校外学習! 去年思ったけど梅雨時に外を歩くのはめんどーだよね〜今年はゲームセンターとかネカフェとかにできないかな?
・七月
七夕! 学校に笹を持ってきて短冊飾ればいいね。うちの神社の裏山にいっぱい生えてるよ! 流し素麺やりたい! 今度うちでやろうよ!
・八月
夏休み! お休みは嬉しいけど、神社のお祭りの手伝いが面倒……でも屋台は楽しみ!
・九月
体育祭! 二学期はイベントが多いからちょっと面倒だね……
・十月
修学旅行! 今年はどこになるのかな? 高原くんはどこがいい?
ハロウィン! 文化祭と近いし、いっそまとめちゃわない?
・十一月
文化祭! 生徒会も出し物しなきゃいけないかな? 休憩所とかじゃダメ?
・十二月
クリスマス! サンタさんの正体を知った時のショックは忘れられないよ……
・一月
お正月! せっかく冬休みなのに、年末年始が一番忙しいんだよね。御神籤を印刷したり御守りの補充したり……
・二月
バレンタイン! 14日を過ぎたらチョコが安くなるからいいよね!
・ホワイトデー! こっちは特にお菓子が安くなったりしないんだよね、残念
とりあえずこんな感じかな? いい感じにやってこ〜!
「いや、ほんと……言いたいことは色々あるけどさ。こんな雑な予定表とかある?」
「もう、まだそんなこと言ってるの?」
「そりゃ言うだろ。正直、何かしら毎月やることがあるんだなーくらいしかわからないし、何より最後のいい感じってなんだ」
「言葉の通りだよ? というか、ほとんどのイベントは、去年お姉ちゃんもやってたことだし、どんなことしなきゃいけないかも聞いてあるからね。大丈夫大丈夫〜」
「今までの天崎の仕事っぷりを見てたら、多分、大丈夫なんだろうとは思うけど、何故か果てしなく不安だ……」
「高原くんは心配性だね〜なんとかなる、なんとかなる。人間なんて、なに考えても大抵はネガティブな方にいっちゃって不安になる生き物なんだから、現時点で何も問題がないなら、先のことなんて深く考えないで、こうやって楽しく遊んでる方が賢い生き方ってやつだよ」
「うーん、まあ、わからなくもないけどさ……」
確かに、色々考えてたら、ついネガティブな方にいっちゃうけど。
「でしょ? だからほら、そんなつまんないことは忘れて早く続きやろ? お菓子もあるよ? 甘いのとしょっぱいのと罰ゲームっぽいのとあるけど、どれがいい?」
「とりあえず罰ゲームっぽいのは断る。それにしても、マジで人生ゲーム持ってくるとは思わなかったぞ……」
「ふふん。こう見えてわたし、有言実行の女ですから」
ドヤ顔で自慢げに胸を張る天崎。
遊びに対するこいつの本気度を舐めていた。てっきり昨日のは冗談だと思ってたのに。
学校指定の鞄とは別に、クソでかいリュックを背負って生徒会室にやってきた時は何事かと思った。
しかも、リュックには人生ゲームだけじゃなくて、大量のお菓子も入っていてそれがまた出てくるわ出てくるわ。友だちの家に泊まりにでも来たのかお前は。
「安心して、リュックの中身は誰にも見られてないから。誰もわたしたちがお菓子食べながら人生ゲームで遊んでるとは想像もしてないよ! 生徒会の評判も、ちゃんと気にしてるわたし偉い!」
「うん、評判とか気にするやつは、そもそもボードゲームとか持ってこないんだよ」
「だよね〜でもわたし、実はそんなに評判とか気にしてないんだよね! バレたら面倒だから隠してるだけ〜」
「どうせそんなことだろうとは思ってたよ。ていうか、さっきから言おうと思ってたんだけど、何か忘れてないか?」
天崎よ、お前が一番持ってこないといけないのは、人生ゲームでもお菓子でもないはずだぞ?
そんな俺の問いに天崎は可愛らしく小首を傾げたかと思うと、ぽん、と手を打った。
「あー、ごめんごめん、忘れてたね、はい、これ」
「何これ?」
「ピンだよ? さっき高原くん、三人目のお子さんが生まれたじゃない。ほら、ちゃんと認知して車に乗せてあげないと」
「残念、不正解。あと、ちょくちょく引っかかる言い回しするのはわざとか?」
「えへへ、ごめんごめん、高原くんって、ちゃんとつっこんでくれるからつい」
なんとも嬉しそうに笑いやがって、ちくしょう、可愛いじゃねーか。
「でもって、はい。高原くんが言ってるのはこれでしょ?」
「天崎、お前がこのやりとりを気に入ってるのはわかったけど、この流れで天丼はどうかと思うぞ?」
「わかられちゃってたか〜。それはともかく、高原くんこそ何言ってるの? 高原くんが言ってたのって目安箱のことでしょ?」
「正解だ。そして天崎よ、お前が俺に渡そうとしてるのは謎の紙束だ。目安箱じゃない」
「うん、だからこれ、目安箱の中身。箱を開けたら3つとも、案外、量があってびっくりしちゃったよ〜ってどしたの高原くん? もしかして、また急に空が見たくなったの?」
「いや、うん、まあ……そんな感じ」
「わたしが言うことじゃないけど、高原くんも割と変わってるよね」
実際は、しょうもない勘違いに恥ずかしくなって顔をそらした先が窓の方だっただけだ。
そりゃ、誰がどう考えても箱ごと運ぶわけないよな。鍵開けて箱の中身だけ集めるに決まってる。
なんで昨日までの俺は、生徒会室まで箱を持ってくるとかアホなこと考えてたんだ……これじゃ天崎のことをポンコツだの言えないわ。
「まあ、いいや。ともかく、ちゃ〜んと目安箱の中身は回収して来たからね。ほら? 褒めてくれていいんだよ?」
「ありがとう天崎。ほら、お礼にこのチョコをお食べ」
「わ〜いってこれわたしが買ってきたやつ〜!」
楽しそうにノリツッコミする天崎にほっこりした気分になりつつ、人生ゲームの上に置かれた紙束をぼんやり見つめる。そこで、ふと思った。
あれ? 目安箱の中身がこんなあるなら、こんな呑気に遊んでる場合じゃなくない? と。
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