第十一話 ギャップと目安箱
有織はべりです。
拙文ですが、お読みいただき、楽しんでいただけると嬉しいです。
恋愛において、ギャップというものは、使い方によってはかなり有効な手段になるらしい。
わかりやすい例で言うと、不良が雨の日に捨てられた子犬を助けているところを偶然見ちゃったとか、めちゃくちゃインドアっぽい男子がキャンプなんかでテキパキと動けていたりだとか。
自分の中で悪いイメージを持ってる相手の思いがけない良いところや、すごいと思えるところを見つけてしまうと、なぜかその人に魅力を感じやすいらしい。いわゆるギャップ萌えってやつだ。
まあ、感じ方は人それぞれだし、マイナス方向へのギャップも当然あるから、恋愛初心者がそれを利用するのはちょっと難しいかもしれないとは思うけど。
それに、漫画の中とかならわかるけど、ギャップ萌えとか現実じゃ今まで感じたことがなかったので、本当3次元でもギャップって使えるのか疑問だったが、案外、それは2次元だけじゃないのかもしれない、なんて、最近、思うようになった。
「お前ってギャップの塊だよな」
「え? いきなりどしたの? ていうかちょっと待って、今、集中してるから話しかけないで」
具体的な生徒会活動が決まらなくて神さまからお説教をくらったあの日から、かれこれ、一週間が経った放課後の生徒会室。
自分の胸の上にトランプタワーを作ろうとしている天崎を見て、ふとそんなことを思った。
突っ込みにくいから放置してたけど、さっきからなんでそんなことしようしてんの? 目のやり場に困ってしかたないんだが!
「あ~! ダメ! 無理! 柔らかすぎ!」
「いや、無理なのはやる前からどう考えてもわかってただろ……ていうかなんでそんなことしようと思った」
「え、なんとなく。いけるかな? って思ったから」
「お前は思ったらすぐ行動する癖を改めた方がいい。また、この前の動画みたいな目に遭うぞ」
「ゔっ……もうあれは忘れてよ。あの後、神さまにめちゃくちゃいじられたんだから……それで何だっけ? ギャップ? まあ、自分で言うのもなんだけどわたしはギャップの塊だと思うよ……はぁ~~~~~~……」
「おぉ……クソデカため息」
「そりゃため息も出るよ、こんなチビがこんな巨乳なのは確かにギャップあるよね。毎日毎日、お風呂場で嫌っていうほど自覚してるから……でもさ高原くん、背丈とか体つきとか他人の容姿を指摘するのはよくないと思うよ? セクハラとかデリカシーって言葉知ってるかな?」
「誰もそんなつもりで言ってないんだが!?」
あと、男子の前でおっぱいの上にトランプタワー作ろうとしていたやつには言われたくない! どれだけこっちが気を遣って見ないようにしてたか!
まあ確かに、言われてみればロリ巨乳もある種のギャップなのかもしれないけど。
「外見とかじゃなくて、中身の話だ中身。正直、天崎はポンコツだと思ってたんだけど、やっぱり優秀なデキるやつなんだなって思ったんだよ」
「そう? ポンコツなのは否定しないけど、優秀って言われるようなところあるかな? そんな子はおっぱいトランプタワーとかしないでしょ」
「それはそう。けど今、そんなことするくらい暇な時間があるだろ。今年の予算の編成とか書類の作成とか会議とかやることは色々あったのに」
「ああ、そういえばあったね~」
あったね~なんて天崎はあっけらかんと言っているが、生徒会や部活動や委員会の予算を決めたり、それとは別に会議に行ったり書類を作って決裁したりと、生徒会の活動が今までに経験したことがないものすぎて想像以上に大変だということを、この一週間、一緒にやっていたからこそわかる。
そして、それを涼しい顔で軽々とこなしていた天崎の姿も一緒に見ていたわけで。ここ最近は、天崎の優秀さを実感しっぱなしだった。
「でもそんなに難しいことでもないよ? 生徒会ってどんなことするのか、仲良く神さまにお説教された日に、お姉ちゃんから聞いておいたからね。会議も書類も特段、難しい内容でもなかったし、予算の方はちょっと心配だったけど、去年の予算案を基に、それぞれ部活と委員会の実績を加味すればいいだけのことだったからね。らくちんらくちん。優秀なお姉ちゃんに比べたらわたしなんて全然、普通だよ普通」
「いや、どう考えても普通じゃないって……」
これを謙遜した風ではなく自然な感じで言ってるのがすごい。
天崎先輩は言うまでもないけど、天崎本人も相当なハイスペックだ。この姉妹すごすぎるだろ。両方と一緒に活動した経験(姉の方は雑用だけど)したことがある俺が言うんだから間違いない。
まあ、そんなハイスペック姉妹の妹の方は、のん気に鼻歌を歌いながらトランプをシャッフルして自分と俺の前に配り始めているわけだが。
「もう、そんなつまんない話はどうでもいいから遊ぼうよ~何のためにさっさとお仕事終わらせたと思ってるの? 心置きなくだらだらしたり遊んだりするためだよ!」
「そのために、多分だけど一か月くらいかけてやる仕事を、一週間で終わらせられるお前がすごいわ」
「だからすごくないってば~。もう、そんなにおだててもどれがババなのかは教えてあげないよ?」
「さっきからめちゃくちゃ配るなとか思ってたらまさかのババ抜き!? 二人でやるなら、せめてポーカーとかだろ!」
「負けた方は明日、目安箱の回収ね」
「おいこら待て続行するな、あと地味に嫌な罰ゲームだなおい」
生徒会活動の一つ、目安箱。
生徒会に対する自分たちの要望や質問を書いて入れておく箱で、各校舎の一階に一つずつ設置してある。それを毎週木曜日に回収して生徒たちの意見に目を通し、改善できそうなことはするといった感じだ。
これは天崎先輩が会長だった時代にもあったもので、どうやらかなり前からうちの生徒会に引き継がれているものらしい。
問題なのはその箱で、両手で持つようなサイズかつ木造のしっかりした箱であり、回収するのは明日が初めてなので実際はどうなのかわからないが、重さも割かしありそうだった。
それを3つ、全ての校舎にある分を集めて生徒会室まで持ってくるのは、正直、立派に罰ゲームだろう。
そもそも、目の前のロリ会長はあの箱3つも抱えてここまで戻ってこれるんだろうか。一気に持ってくるのはまず無理だろうから1つずつ持ってくるとしても、それは往復がかなりしんどいぞ……。
楽しそうに手札を整理している天崎を見てちょっと心配になる。
いや、マジでババ抜きやるのか。二人ならポーカーとかでいいだろうに。
「ちょっと何してるの、早くやろうよ~やらないならわたしの不戦勝にしちゃうよ~? 明日、高原くんが、目安箱の回収と二人で食べるお菓子を買ってくることが決定しちゃうよ~。あ、お菓子はしょっぱいのと甘いのどっちもがいいな」
「勝手に罰ゲームを増やすのやめろ。ていうか、別に罰ゲームとかしなくても回収なら俺がやるつもりだったけど」
正直、今のところ生徒会活動の大半を天崎におんぶにだっこの状態なので、目安箱の回収くらいやらないと申し訳ない気持ちがすごい。
そんな思いから言ったのだが、どうやら天崎はお気に召さなかったらしい。
「ちょっと高原くんさ、空気読もうよ~今そういういい人アピールする流れじゃないよ? 一緒に楽しく遊ぼうっていう感じなの。今のうちから空気を読む訓練しておかないと、呪いが解けても一生童貞のままになっちゃうよ?」
「よし勝負だ、もしお前が負けても絶対代わってやったりしないからな覚悟しておけよ。あと一応聞くけどカードに細工とかしてないだろうな」
「してないよ! わたしがそんな汚いことするように見える!?」
「基本的にはしないけど、必要があればためらいなくやりそうだなとは思う」
「……ノーコメントかな」
「おいこら」
「冗談だって! 一緒に遊ぼうって言ってる相手にいかさまなんてするわけないでしょ? 勝つことじゃなくて楽しむことが目的なんだから」
その言い方は裏を返せば、勝つことが目的なら躊躇いなくいかさまをするってことなんじゃないのか? よし、天崎と本気で何かしらの勝負する時は注意しておこう。
まあ、もし仮にこのトランプに何か仕込んでたとしても問題はない。天崎は割と顔に出るタイプだから、どれがババかは多分わかりやすいだろう。負けても元々やるつもりだった仕事をするだけだし。
とりあえず手札をさっさと整理しようと、配られたトランプを手に取る。
ちょうど手札の真ん中、赤色のピエロが笑っていた、ババだった。
そして、その隣では黒色のピエロも笑っていた、ババだった。
何とも言えない気持ちで顔を上げると、天崎が得意げに笑っていた、バカだった。
「なあ、天崎」
「何かなババ持ちの高原くん。ふっふっふ~自分じゃわかってないかもだけど、高原くんって顔に出るタイプだからね! そんな相手からババを引かなければいいゲームなんて楽勝だよ。この勝負はもらったね~」
「お前はバカだ」
「唐突な罵倒!?」
バカというかポンコツというか、変なところが抜けてるというか。
優秀なところとポンコツなところの落差がすごすぎて、やっぱり自然と目が離せない気持ちにさせてくる。まさかこれがギャップの力なのか……!
この後、ちゃんとババを一枚抜いて仕切り直した。予想通りというか、やっぱり天崎は顔に出るタイプだったので特に山場もなくあっけなく勝利。
負けた天崎が「これ3回勝負! 3回勝負だから!」とごね始めたのでババ抜き勝負。しかし、悲しいまでにあっさりと3連敗する天崎。
試しにババ抜き以外の遊び方もやってみたが、やはり面白いくらい顔に出るのでほとんどこっちが勝ってしまう。いや、それにしても弱すぎるだろ。
結局、この日は天崎とトランプしたりUN〇をしてたりして遊んでたら終わっていた。いや、楽しかったけどこんな感じで本当にいいのか生徒会って。
「よし、明日は人生ゲーム持ってくるね。神社の娘だしルーレットの運勝負なら結構、いい勝負になると思うの」
「生徒会を何だと思ってるんだお前は!?」
明日も遊ぶ気満々の楽しそうな天崎を見て、せめて目安箱に何かしら仕事があればいいなと思うのだった。
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