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第九十八話 サプライズなお弁当

有織はべりです。

拙文ですが、お読みいただき、楽しんでいただけると嬉しいです。

 料理番組かよと思うような緊張の中、竜也によって無駄にハードルが上げられた俺の作ったサンドイッチ を食べたゆーちゃんと山本さんだったが、二人共から無事に「美味しい」との言葉を貰うことができた。


 まあ、さすがに本人の目の前で不味いとは言えないから、実際の所、本当に口にあったかどうかはわからないけども……。


 ただ、ゆーちゃんと山本さんからはそんな気を遣っているような感じはなかったので、きっと、おそらく、メイビー、本有に「美味しい」と思ってもらえたんじゃないだろうか。ゆーちゃんなんか自分のお弁当そっちのけでさっきからサンドイッチ食べてるし、山本さんも少しずつだけど摘まんでくれてる。不味いと思ってたら流石にそんなことはしないだろう。竜也の味の好みは昔からわかってるので、言わずもがなだ。


 うん、とりあえず3人とも普通に食べてくれてるし、よかったよかった。 


 自分が作ったものを美味しそうに食べてもらえると、やっぱり嬉しいものだ。不味いと言われなかったことに内心ほっとしつつ、同時にほっこりとした気持ちになった。


 さて、それじゃ俺も弁当を食べるか。海音のやつ、いったいどんなものを作ったのやら。


 手に取った自分の弁当を目の前にして、ほっこりした気持ちが、あっという間に色んな意味でドキドキに変わる。


 あいつ、めちゃくちゃ張り切ってたからなぁ……今回はいったいどんなものを仕込んできてるのか。

 

 俺たち兄妹の約束の一つに「イベントや行事の時はお互いのお弁当を作る」というのがある。ちなみに提案したのは妹の方。うちの両親は忙しいので、こういった時の弁当作りも自分たちでやっていたのだけど、


「せっかくのイベントなのに自分でお弁当作ったら、わくわくとかサプライズ感がなくなっちゃうじゃん。そういう時のお弁当って、蓋を開けて中身を見る瞬間も込みで楽しみたいしさ~」


 と海音が言い出した。


 そういうわけで行事の時はサプライズ感が欲しい海音のために、いつも俺が自分と海音の分の弁当を作っていたのだが、今度は「それじゃお兄ちゃんが楽しめないじゃん」と海音が俺の弁当を作るようになり、そんな約束ができたというわけである。


 まあうん、海音の言ってることはわからなくもない。旅行とか運動会とかってなんか特別な弁当って感じするし。ただ、あいつはたまにとんでもないサプライズを仕込んだりするんだよな……。


 基本的にぐうたらな妹様だが、俺をいじる時に関してはぐうたらも忘れて全身全霊のガチモードになる。今日だって、サンドイッチを作ろうといつもより1時間くらい早めに起きたら、遅刻ギリギリまで部屋でだらだらしたいタイプの人間の海音が、キッチンで普通に料理していた。


「おはよ~。もうちょっとで完成するからそれまでこっち見ないでよ~? ふっふっふ……お昼を楽しみにしててね、お兄ちゃん?」


 そしてめちゃくちゃいい笑顔(目が完全にやけていた)でそんなことを言われたので、あいつがこの弁当に何かを仕込んでいるのは間違いないだろう。


 もしかして、また去年の体育祭みたいなやつか……?


 去年の体育祭、海音は俺の弁当をキャラ弁にしていた。


 弁当の蓋を開けたら、まさかのち〇かわにお出迎え。一緒に昼食をとっていた竜也や男友達にばっちり見られたおかげで、一時期「キャラ弁にするほどち〇かわにハマってる」と誤解されたことがある。

 

 いやうん、キャラ弁とか割と手間がかかるのは知ってるし、せっかくの体育祭だし凝ってくれたんだろうなって思うけど、さすがにキャラ弁は恥ずかしすぎるわ。今度はまた別のキャラとかじゃないだろうな。男友達ならともかく、いくらなんでも女子の前でち〇かわのキャラ弁当は色々とキツイぞ……!


 ……ちょっとだけ蓋を開けて確認してみるか? 今ならだれもこっち見てないっぽいし。


「あ、こっちの卵サンドも美味しい! でも空ちゃんってこんなにお料理上手だったんだ……竜也は知ってたの?」

「まあ、中学の時から色々食わせてもらってるからな。凝った料理ならもっと美味い。それに料理だけじゃなくて、掃除洗濯裁縫、他にもいろいろできるから、空太は割と女子力高いぞ」

「うぅ……まさか空ちゃんが女子力高い系の男の子だったなんて……私も昔から頑張ってお料理とか色々勉強してればよかった……」

「はぇ~……た、高原くんってすごいんですね……」


 相変わらずサンドイッチ食べてる竜也、どこか落ち込んだように肩を落とすゆーちゃん、そしてその小さく感嘆した声を上げる山本さん。


 3人とも、俺じゃなくてサンドイッチに集中してるみたいだった。もし弁当に何か仕込まれていたとしても、今ならふたを開けても3人にバレる危険はないだろう。


 よし、今がチャンスだな……というか竜也よ、褒めてくれるのは嬉しいけど、普通に家事やってて身についただけだからやめてくれ恥ずかしい! 山本さんもすごいなぁ、みたいな声を出さないで! サンドイッチなんてそこまで難しいことじゃないから! そして、ゆーちゃん! 別に女子力高いって言われるようなことは何もしてないから落ち込まなくていいんだよ! 間違いなくゆーちゃんの方が女子力高いから! 


 というかそもそも女子力の定義って何だ? 料理が上手かったら女子力高いことってことになるのか? つまり世の中の料理人はみんな女子力高いということに……うーん、ダメだわからん。女子力って難しい言葉だわ。


 ってか今は女子力とかどうでもいいな。気にするべきは弁当の中身だ。


 女子力という単語の難しさにハマりそうになった頭を切り替えて、みんなにバレないようこっそり、弁当の蓋を開け――即座にふたを閉めた。


 …………………………えぇ? 


 とりあえず海音が弁当に仕込んでいた「モノ」は確認できた。だが、あまりにもインパクトがすごすぎて俺は絶賛混乱している。なんなら、ち〇かわのキャラ弁とかの方がまだリアクションに困らないかもしれないし、周りに見られた時の弁解もしやすいだろう。


 3人には絶対に見られないようにいっそう気を付けながら、わずかな、自分の見間違いという可能性にかけて再びふたを開けてみる。


 おぉぅ……やっぱり見間違いでも幻覚でもなかった……何てもんを仕込んでくれやがるあの妹。


 海音が作ってくれた俺の弁当――そこには、もはやラブコメ漫画なんかじゃお約束過ぎて化石認定したくなるようなテッパンネタが存在していた。


 桜でんぶでハートとかいつの時代のラブコメだよ……! そもそも、こういうのって恋人とか夫婦とかでやるもんじゃねえの!? 


 弁当の蓋を開けた俺をお出迎えしてくれたのは、ご飯の上にある桜でんぶで作ったであろう大きなハート。漫画だったら、どん! という効果音と集中線が描かれそうなほど圧倒的な存在感を誇っていた。そしてそれだけじゃなく、よく見たら卵焼きなんかも半分で斜めに切ってハート型にしてあったり、ミートボールなんかを刺してる楊枝も持ち手がハートだったりと、よく見ると細かい部分にハート の形がある。


 もうどう考えても、ラブラブな恋人か新婚にしか許されないようなハート盛りだくさんの光景が、弁当の全てに広がっていた。万が一、誰かにこんなものを見られてしまっては、彼女に作ってもらった、みたいなとんでもない誤解を招きかねない。


 言い訳をしようにも、これを自分で作ってきたなんて言ったらそれはそれでヤバすぎるし、妹に作ってもらったと言えば、もっとヤバい誤解を招くこと間違いなしだ。こんな弁当を妹に作ってもらうとか、どんな兄妹なんだって思われてしまう。


 くっそ海音のやつ……言い訳すらできない弁当を作るとか、どんだけ俺をいじることに全力なんだあいつは!


 あまりにも想像できなかった仕込みに困惑していると、弁当箱の裏から、ひらり、と小さなメモのようなが落ちた。

 

『愛する妹の丹精込めたお弁当を召し上がれ~シ・ス・コ・ン!』


 やかましいわ! 誰がシスコンだ誰が! 


 脳内に現れた、にやにや笑っていじってくる海音に内心、全力でツッコみながら、慌ててそのメモをポケットにしまい込む。


 誰かに見られたらヤバいものを仕込みすぎだろうちの妹! あいつマジで、今度の1年の校外学習の時は覚悟してろよ! 絶対にとんでもないサプライズを仕込んでやる……!! 


 妹への仕返しを決意しながら、俺は静かに箸を手に取る。


 帰ったらあいつには色々言うとして……とりあえずこの弁当を誰にも見られる前に食べきること、それが今の俺にとっての最優先事項だな……! しかも3人にバレないよう音を立てないように慎重かつ、見られないように素早く! いただきますっ!!


 俺は早食い王決定戦の選手みたいな気持ちになりながら、静かに弁当へ箸をつけ始めたのだった。


 なお、妹の作ったハート弁当は信じられないくらい美味。俺の好物ばかり入っていて、ゆっくり味わって食べられたらどんなによかったかと思うくらいには、べらぼうに美味かった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

よろしければ、ご感想や評価などをいただけると嬉しいです。

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