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第九十三話 『お話』の意味

有織はべりです。

拙文ですが、お読みいただき、楽しんでいただけると嬉しいです。

『あの、すみません……校外学習の件で相談に乗っていただきたいことがあります……今から少しだけお時間を頂けませんか?』


 ロングホームルームも終わり休み時間になったタイミングで、山本さんから珍しくメッセージが届いた。何となく、こんな感じの連絡が来るような気はしていたけど、まさか休み時間になってすぐに来るとは思わなかった。


 ゆーちゃんに誘いたい人として名前を上げられて、とんでもなく驚いた様子の山本さんだったが、あの流れのままゆーちゃんから「よかったら一緒の班になりませんか?」とアイドルスマイルで誘われて、めでたく俺たちの班に入ることになった。


 急に自分が誘われたことにものすごく困惑してたというか、なんなら断ろうとしていたような雰囲気はあったけど、ああ見えて意外と押しが強いゆーちゃんにあっけなく完全敗北していた。


 気持ちはわかる。ゆーちゃんみたいな人気者の誘いとかお願いを断るのってめちゃくちゃ勇気がいるし、ものすごく難しいよな……班決めが終わった後に再開された、なでなでおねだり攻撃を何とか耐えきった俺を、我ながら褒めてやりたい。


 最終的に、せめて誰もいない所じゃないと恥ずかしいから無理! って感じで誤魔化したので、教室でクラスメイトに見られながらゆーちゃんを撫でる、というとんでもない事をやらかしてしまうことだけは、何とか回避することができた。


 その代わりに今度、誰にも見られてない場所で撫でる約束をしたけど。


 ゴールデンウィークの時にも、誰もいない場所だったら好きな時に俺の左腕を掴んでもいい約束をしちゃてるし、ゆーちゃんと誰にも見られてない場所に行ってしまったら俺はもう色々とダメかもしれない。


 極力、ゆーちゃんと人気のない場所で二人っきりにならないようにしよう……誰もいないから大丈夫って安心してたら、実は誰かに見られてましたとか普通にありえるからな……スキャンダル、ダメ絶対!


『了解 じゃあ今から成績優秀者発表の時に使った階段脇で話そう』


 とか考えてるのに、山本さんを人気のない場所に呼び出す俺。


 いや違うんだよ。これはやましい気持ちとかじゃなくて、大丈夫だとは思うけど念のために山本さんの暴走も備えておきたかったんだって。いや本当に! 


 誰もそんなこと聞いてないのに、女子を人気のない場所に呼び出したという客観的事実に、なぜか焦って心の中で必死で言い訳をしてしまう。やましい気持ちは本当にないです!

 

 そういうわけで実は内心で少しびくびくしながら、そんな提案してみたわけだが、特に山本さんからは何もツッコまれることもなく無事に了承されたので、さっそく一階の階段脇で山本さんに俺は集まったわけだが、


「あ、あのあのあのあのあのですね高原くん!?」

「よし、とりあえずいったん深呼吸しようか」


 山本さんがもうすでに軽めの暴走モードに入ってる感じだったので、まずは落ち着かせることにした。まだ目はぐるぐるしてないが、ものすごく焦ってるのがわかる。このまま話を始めたら間違いなく暴走する確信があったので、まずはある程度落ち着かせることにした。


「すぅ~……はぁ~……すぅ~……はぁ~……」


 俺に言われた通り、素直に深呼吸をする山本さん。何度か繰り返すと落ち着いてきたのか、焦った雰囲気が徐々に和らいでいく。


「それで、山本さんが相談したいことって?」


 そして、そろそろ大丈夫そうだと思ったタイミングで話を始める。


 うーん、我ながら山本さんの対処にも慣れてきたな……。


「伏見さんのことなんですけど……ど、どうやったら許してもらえると思いますか……!? やっぱり土下座ですか!? 土下座ですよね!? 土下座してきます!!」

「待て待て待て待て!」 


 前言撤回、まったく慣れてなかったわ。


 落ち着くどころか、ほぼ暴走状態なってしまった山本さんの進路を遮るよう立ち、ゆーちゃんの所へ行こうとするのを何とかくい止める。


「急に山本さんから土下座されても、間違いなくゆーちゃんは困るだけだから! てか何がどうしてそんな考えになった!?」

「だ、だってさっき伏見さん、私とお話をしたいって言ってたじゃないですか……! だから、校外学習までに何とか謝って許してもらわないといけないんです!」

「だからの使い方がおかしい! 話がまったく繋がってないぞ!?」

「繋がってますよ! 私みたいな陰キャと話をしたいなんて伏見さんが思うわけないじゃないですか……! だから、あの時の『お話』には何かしらの意味があるはずなんです! そしてそれはきっと『ちょっとお話しようか?(威圧)』みたいな怒りのメッセージに違いありません! 間違いないです!」

「何でだよ!? 絶対そんな意味じゃないって! 特に深い意味とかなく、ゆーちゃんは普通に山本さんと話がしたいと思って言っただけだよ! 断言してもいい!」


 山本さんの中のゆーちゃん像はいったいどうなってるのか。


 俺の知る限り、ゆーちゃんはそんな怖い意味で『お話』なんて言葉を使うような子じゃない。


 ゆーちゃんは良くも悪くも素直すぎる性格なので、もし怒ってたとしたら、もっとわかりやすく怒ってることを伝えるはずだ。お話したい、なんて遠回しな言い方はしないだろう。


「というか、もし、万が一、絶対にないだろうけど、仮に『お話』に何かしらの意味があったとしても、それがどうして怒りのメッセージになるんだよ? まさか怒らせるようなことをしたわけでもないだろうに」


 また山本さんのネガティブが謎な方向に行ってしまってそんな風に考えちゃったんだろうと思い、そう言ったのだが、返ってきたのはまさかの反応だった。


 目をぐるぐるさせて焦っていた山本さんが、まるで図星を突かれたみたいにビクッと体を震わせたかと思うと、ピタっと動きを止める。


「え、ちょっと待って何そのリアクション。めっちゃ心当たりありそうな感じだけど……もしかして何かやっちゃったのか……!?」

「……もし私が伏見さんの立場だったら心穏やかではいられないかもしれないです……」

「いったい何をやったんだ!?」


 心穏やかじゃいられないとか、普通に怒るより深刻っぽく聞こえるんだけど。


「そ、それはその……い、言えません! それだけは絶対に言えないです! も、もし言ったら……死んでしまいます!」

「死!? いや本当に何したんだよ!?」

「言えませんこれだけは本当に言えないんですごめんなさいすみません勘弁してください! 特に高原くんだけには絶対に言えないことなんです!!」

「どういうこと!?」


 しかも俺にだけは絶対に言えないとか、まさか俺が関係してるようなことなのか!? ゆーちゃんを怒らせたかもしれないことじゃなかったっけ!?


 顔を真っ赤にして暴走というか、全力で慌てている山本さんの姿に、彼女がいったい何をやらかしてしまったのか、めちゃくちゃ気になってしまう。


 この後、仮に山本さんが本当にゆーちゃんを怒らせたとしたら、許してもらうにしても具体的に何をしてしまったのかがわからないと、こっちもアドバイスやフォローができないので、何とか聞き出そうとしてみたが「絶対に言えません!」と頑なに拒否。そうこうしてる間に休み時間が終わってしまった。いや、そこまで言いたくないとか、本当にどんなことしたんだよ……。


 最後の方は、何故かゆーちゃんじゃなくて俺に対しても土下座をしようとしてきたので、なおさら、何をやっちゃったのか気になってしまうのだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

よろしければ、ご感想や評価などをいただけると嬉しいです。

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