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第十話 告白と生徒会活動

有織はべりです。

拙文ですが、お読みいただき、楽しんでいただけると嬉しいです。

 恋愛における第一の目標は、告白して好きな相手と恋人同士になることになるだろう。


 その第一関門を潜り抜けるために、相手の好きなものをリサーチしたり、積極的に話しかけようとしたり、自分磨きを頑張ったりと色々な努力をするわけだが……もうね、この第一関門を通り抜ける難しさなんて難関大学合格どころの騒ぎじゃないと個人的には思う。


 どれだけ頑張っても報われるかはわからないし、失敗したときのダメージは人にもよるだろうが、立ち直れないレベルの重篤な傷を負ってしまうこともあるだろう。


 成功しそうな雰囲気があったとしても、普通にフラれてしまう恐怖を孕んだ分の悪い賭け、というのが自他ともに認めるヘタレである俺の告白に対する考えである。


 まあ、それでも彼女が欲しい気持ちを諦めることはできないんですけどね! へへへ……。


 とにかく、告白を成功させることはめちゃくちゃ難しいことだと思うわけだ。だからこそ、今ここで、もう一回、ちゃんと聞いておきたい。


「神さま……それは本当に、本気で言ってるんですか?」

『そうだよ~』

「誇張表現とか言い間違いとかではなく?」

『ではなく~』

「高原くん、もう(あきら)めなよ。わたしたちの処女と童貞が人質に取られてるんだから、どんな条件でもわたしたちは断れないんだから」

「その言い方やめろ! せめて未来とかに言い直せ! あと人質に取られてるのはお前だけなんだが!? いやでもお前、こんな手伝いできるか?」

「できるかどうかじゃなくてやるしかないんだよ……たとえその内容が、恋人を作る手伝いをする、なんて無茶苦茶なことでもね」


 放課後の生徒会室、いよいよ生徒会活動と神さまの手伝いが始まるとのことだったので、さっきの昼休みがかなり残念な感じだったこともあり、まったく乗り気になれないままやってきたのだが、神さまから告げられた手伝いの内容が衝撃的すぎた。


 いやまあ、その内容は何となくわかるよ? 縁結びの神さまなんだから、その名の通り縁を結ぶのが仕事なわけだ。縁を結ぶ手伝いだから、そうなるんだろうけど……えぇ……こんなに無茶な手伝いとかある? 


 彼女いない歴イコール年齢の恋愛経験ゼロのやつが、どうやって他人の恋愛を成就させられるというのか。正直、まったくできる気がしない。


 どうしたもんかと悩んでいると、隣に座っている天崎が俺の肩をポンポンと叩いてきた。その顔はものすごく綺麗な笑顔だった。しかし、その目が濁っていることを俺は見逃さなかった。


「これから一緒に頑張ろうね? 死ぬときは一緒だよ?」

「こえぇよ! ていうかこんなのどうやってやればいいんだ……そもそも誰が誰を好きなのかを知ることだけでも難しいのに」

「あ、それは神さまが見たらわかるらしいよ? 神さまが言うには、人間はみんな縁の糸みたいなのを持っててそれが頭のてっぺんから出てるんだって、でもって好きな人がいるとその人に向かって縁の糸が伸びてるらしいの。それを神さまが上手く結べたら恋人になるんだって」

「えぇ……何それ……」


 俺もそんな感じで糸が出てんの? 思わず自分の頭を触ってしまう。


「どしたの突然。抜け毛でも気になった? 大丈夫、まだハゲてないよ、安心して?」

「誰もそんな心配しとらんし、まだとか言うな。話の流れで何となくわかるだろ」

「んふふ~わかってた~わたしも最初聞いたとき同じことしたもん~」

「うぜえ……ていうかなんでそんなに楽しそうなの、こんな面倒なこと言われてんのに」

「それはね~道連れができて心の底から良かったと思ってるからかな!」

「ああ、うん、お前はそういうやつだってわかってきたよ……けどちょっと待て。その糸を結ぶのが神さまだとしたら、俺らってやることあるか?」

『あるよ~最後は私が縁を結ぶんだけど、その人たちにまったく関係性がなかったり、どっちかが嫌われてたりすると、糸の長さとか太さとか頑丈さが変わっちゃって縁の糸が結びにくかったり、そもそも結ぶことがことができなかったりするの。だから二人には私が糸を結びやすくするお手伝いをして欲しいんだ。ものすご~く簡単に言っちゃうと、生徒会活動を通じて学校のみんなを仲良しにしてくれたらいいんだよ~』


 うん、とってもいい笑顔でとっても難しいことを要求してくるなこの神さまは!


 みんなを仲良しってあんた……どうしろと? ポスターでも作って貼るか? いや、そもそも仲良しの定義ってなんだ? どうなったら仲良しって言える関係なんだ……? ナカヨシッテナンダ? いかん頭がこんがらがってきた。


「うん……なるほど、つまり、とにかく生徒会活動を頑張ればいいってことだよね?」

 

 仲良しという名の穴が掘ってみたら思いのほか深くて悩んでいると、天崎がのん気な感じで言い放った。神さまも満足そうにうんうんとうなずいている。


 え、正解なの? 待ってわからない。どういうこと?


 どうやってそこにつながったのかわからないでいると、それに気づいたのか天崎がどや顔で説明を始めた。


「高原くん、考えてもみてよ、学校なんて一種の閉鎖空間なんだよ? 一般社会と比べたら出会いの数は段違いだし、同年代の異性と交流する回数も確実に多い。それに、同じクラス、同じ部活、なんかがわかりやすいけど、色んなコミュニティや共同体が乱立してるから人間関係も作りやすいし、親しくもなりやすいの。あ、顔を会わせる回数も増えるから単純接触効果の期待も見込めるかもね。逆に、閉鎖空間だから人間関係で失敗したらものすごい地獄になるけど。まあ、そんな感じで、男女が接する機会が多くて、しかも親しくなりやすい環境だったら、当然、異性を意識する頻度も増えるし、加えて体育祭や文化祭、修学旅行なんて青春っぽいイベントがあれば、その熱に浮かされてカップルが生まれる可能性も高くなる。要は、学校なんて閉じた空間に思春期真っ只中の男女を一緒に放り込んで、異性を意識しやすい環境や青春っぽいイベントを用意しておけば、勝手にくっついてくれるってわけ。幸い、うちは生徒の自主性を重んじる校風で生徒会の権限も多いから、学校の環境づくりに手を出すのもイベントを開催するのも簡単だしね。わたしたちは生徒会活動を利用して、みんなが仲良くなりやすい学校、つまりは異性交遊をしやすい学校づくりをするだけで処じ――明るい未来を手に入れることができるってわけだよ!」

 

 ものすごい早口で言い切ると、えっへん、と胸を張る天崎。

 うん、まあ、色々言いたいことはあるけど。


「お前、いつもそんなこと考えてるの? 何か嫌なこととかあるなら話でも聞こうか?」

「そんな病んでる人を見るような目はやめて! あのね? こんな見た目だけど、わたしは思春期真っ盛りの立派な高校生だし、なにより縁結びの神社の娘だよ? 恋愛だって興味あるし、将来のためにも色々調べたりするよ! 高原くんだってネットで恋愛に関する記事とか読んだりするでしょ? それと同じだよ!」

「いや、うん、それはわかるんだけど何だろう……端々に闇を感じるというか……」

「どういう意味!? わたしも知らない闇を勝手に感じないでよ!」


 少なくとも俺が今まで読んできた恋愛の記事に、学校は閉鎖空間だの、そんな空間に異性を放り込んでおけば勝手にくっつくだの、そんな内容は見たことないぞ……こいつ、恋愛に対して何か思うことでもあるんだろうか……。


「とにかく! そういうことだよね神さま!」

『え、あ、うん、おおむねはあってる……かな~?』

「神さまもちょっと困惑してるじゃないか。やっぱり闇あるんだってお前」

「ちょっと神さま! お昼にだけじゃなくて放課後も裏切るの!?」

『そ、そんなつもりはないよ~ただ、まさか日縁ちゃんがここまで拗らせちゃってるとは思わなくて~』

「拗らせてないよ! ちょっと恋愛に対して知識があるだけだもん!」

「わかったわかった、わかったから落ち着け。こら天崎、腕を振り回すんじゃない!」


 両手をばたばたさせて怒っている天崎は、見た目も相まってまごうことなき子どもに見えた。


 駄々っ子みたいなことをする天崎の両腕を掴んで抑える。そうすると足をばたばたし始めたので、そのまま持ち上げてやった。


「こらー! 離せー! わたしは子どもじゃないんだぞー!」

「それで神さま、結局俺たちは具体的に何をしたらいいんですか?」

『あはは……補足しておくと、さっき、生徒会活動を通じてみんなを仲良し~なんておかしな言い方しちゃったけど、ある程度、仲が良くないと恋愛に発展しにくいからそんな言い方になっちゃっただけだから。日縁ちゃんの言い方は、うん、ちょーっとあれだったけど、実際、学校が閉じた世界で恋愛自体が生まれやすい場所だってことには違いないからね。

 日縁ちゃんが言ったみたいに、二人で頑張って生徒会活動をしてくれれば大丈夫だよ。そのついでくらいでいいから、両思いっぽい子たちとか、片思いをしてそうな子がいたら私に教えてくれればそれでいいかな~』

「なるほど……でも具体的な生徒会の活動って何をするんです? 今までそういった活動に関わったことがなかったので」

『あれ? でも去年、灯里ちゃんと一緒に活動してたよね~?』

「あー、まあ、たまーにちょっとした手伝いとかはしましたけど、一緒に活動とまではいかないですね。というか何でそんなこと知ってるんです?」

「高原くん、それは神さまだからだよ。わたしたちのプライベートなんて神さまには全部お見通しなんだから。あと、落ち着いたからそろそろ降ろして……」

「おう。ていうかお前軽すぎない? ちゃんとご飯は食べろよ?」

 

 持ち上げてみたら、思いのほか軽く、普通に簡単に持ち上がったので驚いた。


「軽いって言った! 人が気にしてることを! 食べてるよ! 食べてるけど背が伸びないの! うぅ、こっちのお肉は増えていく一方なのに……どしたの高原くん、いきなり空なんて見て」

「気にするな、急に空が見たくなったんだ」

「そんなことある?」

「ある」


 あるったらあるのだ。そうしないと、じゃあどうして急に外を見たのかを聞かれて困ったことになってしまう。


 自分の大きな胸を下から支えるように持ち上げた天崎から目をそらすためだなんて言ったら、死ぬほどいじられるに決まっている。


 というかなんでこいつ、なんでこんなに自分のことに無頓着なのか。自分が校内で人気があるとかそのあたりの評価はちゃんとできてるのに。


「まあ、いいや。高原くんがちょっと変なのはいつものことだし」

「ちょっと待て、その認識には異議を唱えるぞ」

「異議を却下します。とにかく、わたしたちは生徒会活動をして、みんなの異性交遊を促進していけばいいってことだよね」

『言い方はともかくだけどその通りだね~』

「よし! じゃあやることも決まったし、改めて、これから生徒会活動頑張っていこうね、高原くん! ほら、握手しよ握手!」

「あー……うん、まあ、その、よろしくお願いします」

「なんで急に敬語なの? やっぱり高原くんはちょっと変だなぁ」

 

 差し出された天崎の手は、想像以上に小さくて柔らかくて暖かった。

 さっき両腕を掴んでぶら下げることまでしたのに、握手がなんだか妙に気恥ずかしい。


 女子の手を握るのとか初めてな気がするな……あ、手汗とか出てきてるんじゃないか!?


 そんな不安がよぎって慌てて手を放そうとすると、なぜか天崎がさらに力を込めて手を握ってきた。

 思わずどきっとして、天崎の顔を見ると、彼女は見覚えのあるとても綺麗な笑顔をしていた。


「これでわたしたちは一蓮托生。ぜっっっっったい逃がさないからね?」


 しかし、悲しいかな天崎のその目は濁っていた。

 別の意味でどきっとして、天崎の手の感触が妙に重たくなった気がしたのだった。


 そんな俺たちを見て、神さまはやっぱり楽しそうに笑っていた。


 うーん、この神さまのけっこう謎だ。手伝いの内容も、ただ生徒会活動をするだけって、実質あってないようなものみたいに感じるし……というかプライベートが全部筒抜けみたいなことを天崎が言ってた時に否定しなかったけどまじなのか? そこだけはノーコメントはやめてほしいぞ神様!

 

「ちなみに天崎、生徒会活動って結局、どんなことするんだ?」

「知らないよ? 高原くんこそ知らないの? 去年、お姉ちゃんと一緒に活動してたでしょ、内縁の役員として」

「内縁の役員って何!? さっきも言ったけど、ちょっとした手伝いしかしたことないって!」

「うーん……これは困ったね~。あ、そうだ、神さま神さま、わたしたちの縁に関する問題って、どれくらいお手伝いしたら治るの? すぐに終わりそうだったら、ちゃっとやっちゃってさっさと生徒会なんて辞めてうちでダラダラしたいし」

『うん、そのお話もしないといけないなって思ってたけど、今の日縁ちゃんのお話を聞いて、具体的なことは言わない方がいいと思ったから絶対に言いません』

「そんなひどい!」

「いや、お前が一番ひどいだろ……」


 とりあえず、今後の方針とか色々なことがなんとなくわかった放課後だった。

 ただ、生徒会活動の前途が怪しいことだけは間違いなさそうだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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