今さら、金田一少年批判
現在の金田一少年の事件簿を批判するものではなく、連載初期当時に問題となった事柄の解説です。
今は解決済みです。
さて、4月より、新キャストで金田一少年の事件簿がテレビドラマで放映されるようだ。批判なんてタイトルに書いているが、私はこの作品自体は実は嫌いではない。ただ、当時ミステリーファンや関係者を盛大に怒らせ、批判されたのは事実であるし、因みに私も怒った一人だったりする。
なぜ、当時のミステリー界隈で、問題になったのか、何が問題になったのか、奴隷乙教授と愛猫、テン助ちゃんの口語方式で解説していこうと思う。
「というわけでテン助ちゃん、金田一少年の事件簿は知ってるかな」
「もちろん、知ってるニャ。1992年から2001年まで講談社コミックスから週刊少年マガジンの連載作品だったニャン」
「さすがは宇宙一賢いニャンコのテン助ちゃんだね。その後には文庫版やテレビドラマ化もしたね」
「そんな金田一になんで批判があったニャン。まさか、本格ミステリファンや関係者は『マンガにするなんぞ、けしからん』って人ばっかだったニャン」
「一部にはそういう人もいるかもね。アガサ クリスティは遺言で他媒体への自作の引用やオマージュを認めていたけれど、コミックス化だけは許さなかったって言うし、でも、これはそんな事ではないんだ。それなら、先にサンデーで連載されてたコナン君の方が非難されるからね」
「確かに、あっちの方がアレコレととっちらかってるニャン」
「そうだね(笑) 先ずは金田一少年の設定を思い出して見ようか」
「んー、勉強の成績も運動神経も今一なダメ少年の金田一 はじめは実は日本に名だたる名探偵金田一耕助の孫で、難事件に巻き込まれるとおじいちゃんばりの名推理で事件を解決って、痛快ミステリ物ニャ」
「うん、そうなんだけど、横溝正史の金田一耕助って、生涯未婚なんだよね」
「へっ、じゃあ孫なんていないニャ」
「原案者もその辺はわかっていたのか、はじめちゃんに『じいちゃんが結婚してなきゃ、俺が産まれねーよな』みたいなセリフを言わせてるね」
「本末転倒ニャ」
「うん、まあね、未婚でも作中で結構モテていた耕助に子供がいたのかも、って思えばいいかもだけど、流石にご遺族に承諾なしでやっちゃダメだよね」
「へっ、許可とってないニャ」
「まあ、横溝正史のご遺族は寛容な方で、大槻ケンヂなんかも、オマージュの許可申請に快く応じて貰えたそうだし、この件も和解したらしいけどね」
「だから、ミステリファンが怒ったのかニャ」
「それだけじゃないんだけどね」
「まだ、あるニャ!」
「金田一少年の最初の大事件は異人館村殺人事件だよね」
「コミックスの2巻から3巻、最初のテレビドラマでは第1話目を飾った事件ニャ」
「うん、これのトリックや人物の背景、殺人のおこる背景なんかが、島田荘司先生の占星術殺人事件にそっくりなんだよね」
「へっ、パクりだったニャ」
「うん、島田荘司先生が訴えて、原案者が盗作を認めたから、パクりだったんだね」
「大変ニャン」
「結局は和解できたようだけど、文庫版収録時には『この作品は島田荘司 占星術殺人事件をオマージュしております』って文言が入るハメになったし、DVDでは記念すべき第1話なのに未収録になってしまった」
「和解したのにニャン(=゜ω゜=)?」
「元々、占星術殺人事件は島田荘司先生ご本人が映像化不許可を公言していた作品なんだ」
「あちゃー、そりゃ、ドラマ化なんて大問題ニャン」
「この作品はミステリファンやミステリ界隈でも重要な作品だったから、余計に怒りをかったんだ」
「どういうことニャン」
「この作品は島田荘司先生のデビュー作で」
「よりによってニャン」
「本格ミステリーが下火になっていた当時に、本格ミステリー復活の一作、なんて言われるほど、業界やファンが重要視した作品なんだ」
「とんでもない大物ニャン」
「さらには、今までにない、斬新な設定とトリック、それを紐解く、推理の着想から解決にいたる流れ、どれも独創的だった」
「一番パクったら即バレするやつニャン」
「というわけで、あっという間にミステリーファンにバレた挙げ句、一度問題視されたのに、何故かドラマ化作品の一話目に持ってくる製作の無神経ぶりで、島田先生に訴えられたんだよね」
「関係者一同、脳がスポンジケーキになってたニャン」
「その発言は色々と誤解を招くね。まあ、この他にも度々パクりを疑われて検証本が出てたりしたね」
「なんだかなニャン」
「それこそ、コナン君みたいに本格ミステリのエッセンスだけ纏った、中身は推理要素のあるバリバリの少年マンガだったら、まだそこまで非難されなかったんだけど、なまじっか本格ミステリのコミック作品って雰囲気出してたから余計にね」
「横溝作品みたいな世界観の事件とかあったニャン」
「うん、そういうのが、ミステリファンからしても、許可も取らずに堂々とオマージュとか言っちゃうのはプロじゃねーだろ。って思われたんだよね」
「最近のトレパクの人みたいニャ」
「まあ、金田一少年は面白いとは思うし、そういうのが、勿体ないなって思ったよね。僕自身は島田先生のファンだから、異人館村殺人事件は初見の時は結構、腹が立ったけどね」
「気を付けないといけないニャン」
「そうだね、僕も気を付けないといけないね」
「ということで、解説終了です。おわかり頂けましたでしょうか」
「バイバイニャン(=゜ω゜=)」