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婚約少女と、恋人未満のクラスメイト? 好意対決の末、誰を選ぶ?  作者: 不知火 カエン-赤色
第二章 戦いの火蓋
9/10

09_放課後はどっちにする?

 

 今は午後であり、授業が先ほど終わったところだ。

 なんか、今日もいろいろと大変だったと思いつつも、双月緋色は帰宅する準備をしていた。

 後は何事もなく、学校を後にできればいいだけである。

「なあ、緋色。今日は何か予定とかってあるか?」

 隣の席の疾風が聞いてくる。


「特には」

 そういえば……葵が、本屋に行きたいとか言ってたな。

 そんなことを思い出す。

「でも、疾風は部活じゃなかったの?」

「ああ、それなんだけど、今日は休みになってさ」

「そうなんだ」

 疾風は自分で設立した部活を持っていて、そこの部長である。実際のところ、どんな部活なのかは詳しく教えてはくれない。

 入部すればいつでも教えてやると言っていた気がした。緋色自身、部活に所属することに抵抗があり、あまり乗り気ではなかったのだ。

 知らない方がいいのかもしれないと思う。


「俺も今日は暇でさ。暇だったら、緋色と帰ろうと思ってさ」

「どうしようかな」

 緋色は考え込む。

 そんな時、空気が変わった。

「ねえ、緋色君。一緒に帰らない?」

 話しかけてきたのは綾瀬だ。


「いいけど」

 緋色は友人を一度見る。

「おい、俺とは無理なのかよ。でも、まあ、いいや。帰る相手が綾瀬なら、俺は強制しないからさ。彼女と一緒に帰りなよ」

「いいの?」

「ああ。俺は一人で時間を潰すし。それと、緋色は綾瀬と一緒に帰宅したいんだろ?」

 疾風は小声で話しかけてくるのだった。

 そして、緋色は頷く。


「じゃ、俺は帰るよ。明日な」

「うん。また明日」

 緋色はそう言った。

 疾風は教室を後にしていく。

 これが一番いい選択だったのだろうか?


「緋色君、帰ろ」

「う、うん」

 緋色は必要なものをバッグに入れ、席から立ち上がる。

「あと、葵ちゃんとの一夜とか、それらの経緯を聞きたいんだけど」

 耳元で囁くように言う。それが一番怖い。


「い、言わないとダメか?」

「んん、まあ、いいわ。私がもう少し監視を強化すればよかっただけだし。ねえ、緋色君。その代わりに、どこかに連れて行ってよ」

「どこかって?」

「緋色君が行きたい場所」

「いきなり言われてもな」

 緋色はすぐに良い提案ができない。

 綾瀬とは、友達になる前から、あらかじめ行く場所を決めていた。が、行き先としては住んでいる場所からは程遠い。

 綾瀬の方から話しかけてきてくれたのだ。このチャンスを逃すわけにはいかない。

 そう思うも、どこに行くかはすぐに決められなかった。

 街中に到着してからでも遅くはないだろうと考え、一度廊下に出ることにしたのだ。

すると、なぜか疾風の姿があった。

 帰ったんじゃ?


「なあ、緋色。この子、まだいるんだけど、どうする?」

「え?」

 突然の発言に、嫌な予感を覚えつつも、疾風が示す先へと視線を向けた。

「ねえ、ひーろー、一緒に帰ろ」

 そこには、葵の姿があり、一瞬硬直した。

 なんで、こんなところに?

 もう帰ったのかと思っていたからだ。

 緋色は予定が狂ってしまい、頭を抱えてしまう。

 ああ、なんでこんなことに。


「ねえ、それより、どうして、あの子が来ているの?」

 綾瀬は疑問口調。

 多分、実家とかに相談して、何とかしてもらったのだと思う。

にしても、少女の家族はどんな人なのだろうか?

 逆に気になってしまう。

 一応、父親と繋がりがある人だと聞いていた。

 父親の人脈は広く、なんでも引き受けてしまう人であり、たまに面倒な人との関わりも作ってしまうのだ。

 そんな父親の性格だからこそ、母親がずぼらな感じになったのだろう。


「ねえ、葵ちゃん。ここは貴女が来る場所じゃないんだよ」

 綾瀬は、少女と同じ目線で注意深く伝えている。

「なんで、別にいいじゃない」

 葵は自分勝手な態度を示す。

「いいから。明日から来ないでよね。いい?」

「だって、それだと、佳の方が有利じゃないッ」

「けど、葵ちゃんは競い合う前に、何も質問してこなかったでしょ?」

「そ、それは、そうだけど……ずるいよ」

 葵は慌てつつも、自身の意見を告げていた。

 少女の言い分もわかるのだが、勝負というのはそういうものだと思う。

 一回でも了承したり、確認を怠ったら、そこで終了なのだ。

 そんな中、周辺に人が集まってきている。


「何があったんだ?」

「あれ? 学食にいた子じゃ」

「噂になっていたのは、あの子か」

 面倒な感じになってきて困る。

「でも、私はひーろーと約束したんだもん。本屋に行くって。だから、こうして、待ってたの」

「私だって、約束したわ」

「いつ? 何時何分に?」

「あのね、そんな幼稚なことじゃなくて」

 争いが始まった。


「ねえ、ここじゃ、迷惑だし、別のところで」

 緋色はなだめるように言う。

「じゃあ、緋色君が決めて」

「え?」

「だから、どっちと行くか、決めてってこと」

「僕が?」

「そうよ。この勝負。緋色君の評価が基準で進行していくから。緋色君の考えが知りたいの。どっちと行動したい?」

「そうだよー、ひーろーが決めて」

「ああ、わかった。じゃあ、決めるから」

 そんなことも決めないといけないのか。

 と、思いつつ、悩む。


 でも、最初に約束を交わしたのは、葵の方だ。

 まあ、自宅に帰れば、いつでも綾瀬と関われるタイミングが作れる。

 逆に葵の方を放置したとしたら、後々面倒になるような気がした。

 すぐに駄々を捏ねるし、我儘で扱いが面倒な時が多い。

 そんな子と結婚したら、先が思いやられる。

 んッ、何考えてるんだ、僕は。

 葵と結婚だなんてありえないが、今はそんなことじゃなくて。

 いろいろと考えた結果。


「今回は葵の方で」

「葵ちゃんの方?」

 綾瀬は少女を怪訝そうに見やる。

「やったー、私の方ね。残念だったね、佳」

「ふんッ」

 綾瀬は不満そうな表情を見せ、そして、緋色を睨んだ。

 まあ、彼女には悪いが、ここはしょうがないと思う。


「まあ、いいわ。今回はいいけど、後でいろいろとしてもらうから」

「うん、わかったよ」

 綾瀬は背を向け、いつもの友人のところへと向かい、帰宅しようとしていた。

 こ、これでよかったのかな?

 的確な判断だったのかは不明だ。

 緋色は葵を見た。


「ねえ、一緒に行こ」

 少女は早く本屋に行きたくてうずうずしている感じだ。

「というか、君、葵ちゃんだっけ?」

「うん」

 葵は疾風へ視線を向けた。


「あの綾瀬と何か勝負しているのか?」

「うん。そうだよ」

「へえ、そいうか。でも、どこでそんな繋がりが?」

「私と佳は、ひーろーの家に住んでいるの」

「え?」

 疾風は一瞬、耳を疑っていた。そんな表情だ。


「あああああッ、なんでもない、聞こえない、聞こえないッ」

 緋色は突然、大きな声を出した。

「どうした、緋色?」

「ごめん。なんか、窓の外にいる未確認生命体に洗脳されそうだったんだ」

 緋色は無茶苦茶な発言をして、誤魔化そうとする。

 それしか思いつかなかったのだ。

 でも、これで葵のセリフは聞こえなかっただろう。

 一緒に住んでいるという情報が、他人に伝わってしまったら確実に終了だ。


「え? 窓の外に? 何もいなくないか?」

 疾風は廊下の窓を開け、辺りを確認していた。

「そっか、じゃあ、僕の見間違いかな。あはは……」

「だったら、いいけどさ。いきなり大声を出すなよ。俺もびっくりするし。緋色は、変な漫画でも読んだのか?」

「いや、そうじゃないんだ。多分、疲れているだけだと思う」

 何とか、誤魔化せたみたいだ。

 自分自身の立場が大きく危うくなったものの、これでいい。

 あと、葵が何を言い出すか不明であり、そこも気を配っていかないといけないだろう。


「ねえ、ひーろー」

 緋色は気まずそうに頷き、歩き出す。

「じゃ、俺もついて言っていいか?」

 疾風が駆け寄ってくる。

 一人で帰るんじゃなかったのか?


「いいよ」

 葵は受け入れていた。

 結果、三人で帰宅することになったのだ。

 これから、大変なことが起きそうだと思い、何かしらの対策を考えようと心に決めたのだった。


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