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婚約少女と、恋人未満のクラスメイト? 好意対決の末、誰を選ぶ?  作者: 不知火 カエン-赤色
第一章 平穏な日常に現れた婚約者⁉
6/10

06_落ち着かない朝


「んんッ」

 双月緋色は来客用のベッドで睡眠をとっていた。が、布団の中に違和感を覚え、ゆっくりと瞼を開く。カーテンの隙間から光が入り込んでくる。

 もう朝なのか。

 緋色は上体を起こすと、隣の布団が膨らんでいるのが分かった。

 違和感の正体は、これかと思い、布団をはいでみる。


「⁉」

 緋色はとあるものを見た瞬間、視線をそらし、布団を、それにかけなおしたのだ。

 な、なんだ⁉

 心臓の鼓動が高まり、冷静さを保てない。

 ごそごそと布団が動き、そして、葵が姿を現す。


「おはよう、ひーろー。どうして、私を無視したの?」

「いや、無視してなんて……あ、葵。何か着たら?」

 少女は上半身、何も纏っていない。

 さすがに、目のやり場に困ってしまう。


「そんなところが気になるなんて、ひーろーのエッチ」

「あ、葵が、勝手に脱いで寝ていたんだろ」

「別にいいじゃない」

「いや、僕の方がよくないんだよ」

 こ、こんなのいきなりすぎるって。

 一瞬だけ見えたのだが、やはり、葵のは小さい。


「もうー、こっちを見てよ」

 葵に言われるものの、どうしても視線を向けることはできなかった。

「葵はなんで、ここで寝てたの?」

「だってー、昨日部屋に戻ってこなかったじゃん」

 葵は不満げに、緋色をジト目で見ている。


「あれは葵が、どうしたって、ベッドから離れなかったじゃないか」

「もっと言ってくれたら、別の部屋で休んだのに」

 彼女は拗ねていた。


「本当かよ」

「嘘だけど」

「嘘じゃんか」

 緋色は呆れ、ため息を吐く。

 少女と一緒にいると、本当に疲れる。

 朝からこんなだと、いつまで体力を維持できるか、不安だった。


「私はひーろーと一緒に休みたかっただけなのにぃ」

「僕は遠慮したい」

「拒否しないでよー」

「どうせ、変なことをしてくるんだろ?」

「そんなことないし」

「本当か?」

 緋色はその疑問をぶつける。


「変なことって。将来結婚するなら、普通じゃない」

「って、やっぱり、やってくるじゃないか。というか、僕は、葵のことを婚約者だとは思っていないからな」

「えー、私はもうその気でいるのに。だからこうして、愛する人の家に来て、尽くそうとしているのに」

 少女はどうしても、結婚したいらしい。


「ひーろー。昔、婚約するって言ったでしょ」

「でも、あれは本心じゃないから」

 言わされたようなもの。


「またまた、そんなこと言って、素直じゃないねぇ」

 葵は上半身裸のまま、すり寄ってきて、抱きしめようとする。

「いや、僕はそんな気分じゃないし」

「じゃ、どうしたら、やってくれるの?」

「それは、その、無理だ。葵には、そんな感情は抱けない」

 緋色は言葉に戸惑いつつ、自身の意見を告げた。

 葵は、そんなセリフを無視するかのように、舌で頬を舐めてくる。


「んッ⁉」

「ねえ、やろうよー」

 如何わしい表情で、誘ってくる。


「そ、そんなことよりさ。この部屋から出てくれ」

「でも、布団から出ちゃったら、全裸になっちゃうよ」

 葵は誘惑するような視線を向けてきた。


「は? も、もしかして」

「うん♡ 下の方も何もつけてないから」

 ああ、どうしてそうなってるんだよ。

 緋色は頭を抱え込んでしまう。

 どうにもならない状況に追い込まれ、絶望的だ。


「でもぉ、ひーろーが望むなら、見せてもいいよ」

 葵は、下半身を隠している布団に手を当てた。

「いや、ちょっと待ってくれ」

「婚約者なんだよ。いいじゃん」

 少女はどうしても新婚のようなやり取りをしたいようだ。


「もう、本当だったら、すぐにでもひーろーと結婚に向けて、生活する予定だったのに。あの、お姉さんがいなかったら、よかったなぁ」

 葵は一瞬、悲しそうな顔を見せる。


「僕は、起きてるから。葵は服を着てから、リビングに来てよ」

「えー、もうリビングに行くの?」

「ああ」

 緋色は、葵の方を見ることなく、ベッドから立ち上がった。

 葵が、そんなに悪い子ではない。

 そんなことはわかっているのだが、やはり、少女の好意を受け入れることはできなかった。

 今は、綾瀬という恋人未満の友達がいる。

 彼女とどうやって、付き合っていけばいいのか、考えないといけないのだ。

 だからこそ、葵とは深い関係性も持ちたくなかった。


 まあ、学校に行けば、常に綾瀬と関われるし……というか、考えてみれば、綾瀬の方が、この勝負。有利なのでは、と思ってしまう。

 そもそも、葵は、平日何をしているつもりなのだろうか?

 と、考え事をしながら、部屋の扉の前に立つ。

 緋色が扉を開けようとした直後、異変が生じた。

 突然、扉が開き、そこで綾瀬とばったりと会ってしまったからだ。


「ねえ、緋色君。服を着てからって、どういうことかな?」

「え? あ、綾瀬さん⁉ な、なんでここに?」

 緋色は彼女を見、いろいろな意味でドキッとしてしまう。


「さっきから、ここの部屋から声が漏れてて、何かと思って開けてみたの。まさかとは思っただけど。ねえ、これ、どういうこと?」

「そ、それは」

 緋色は戸惑い、どこから説明をすればいいのか、わからない。


「貴女もよ。昨日、約束したよね? 朝の六時まで休戦だって」

「えー、そうだったかなぁ?」

 全裸の葵は、とぼけている。


「――もうッ ありえないわ。緋色君」

「お、おはよう」

「……挨拶で誤魔化さないで。まあ、一応挨拶はするけど」

 綾瀬も軽く挨拶をしてくれた。

 一旦、葵は服を着、そして、三人はリビングへと移動し、そこの床に座る。

 綾瀬はまだ、怒りを抑えているようだった。


「まあ、あと数秒で、六時半だから。ここからが勝負だから、貴女がずるしたのは、今回は見逃すから」

「でも、勝つのは私だから」

 綾瀬と葵は、にらみ合っている。

 そんな中、時計の針が六時半を指し示すのだった。


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