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婚約少女と、恋人未満のクラスメイト? 好意対決の末、誰を選ぶ?  作者: 不知火 カエン-赤色
第一章 平穏な日常に現れた婚約者⁉
5/10

05_からの、夜の行為…


「ああ、どうしよ」

 双月緋色は自室の椅子に座り、先ほど綾瀬から貰った評価シートを見ていた。

 他人を評価するのはなんか嫌だ。

 本当にこの方法でいいのか。そんなこと、わからない。が、実際のところ、良い案が思い浮かばず、何の意見も言えなかった。

 なんか、モヤモヤしてしまう。

 複雑な環境下ではあるが、綾瀬と一緒に生活できるようになったのは、いい兆しだ。

 同居していると、見たくない嫌な部分も明白になってくるのだが、それはしょうがないと割り切っていた。

 そんな中、扉が開く。


「な、なに?」

 突然のことに驚き、緋色は自室の入り口へと視線を向けた。

 そこには、葵の姿があったのだ。


「ねえ、何してたの」

 少女が歩み寄ってくる。

「いや、少し考え事」

「そうなの?」

 葵はニヤニヤとしていて、企んでいるような、そんな印象。


「ねえぇ、変なことぉ、考えてたでしょ?」

「いや、そんなことは……」

 緋色は言葉選びに迷う。


「ねえ、そういえば、不思議な本があったんだけど」

「はッ、というか、やっぱり、君が勝手にこの部屋を掃除したんだね」

 先ほど部屋に戻った際のことを振り返り、葵に言う。


「ごめんね。でも、今後の一緒に生活するし、何が趣味なのかなとかぁ、いろいろと確認しておきたかったの♡」

 少女は照れながら、右手で髪を触っていた。


「いいよ。そんなのは」

「いいじゃない。婚約者のことを知らないなんて、失礼じゃない」

「……」

 勝手に自宅にいた方が失礼だと思う。

 葵は不法侵入ではないので、警察には伝えてはいないが、そんな少女の言動を見ていると、今後が不安でしょうがなかった。


「ねえ、ひーろー、私のことは、葵って呼んで」

「何で急に?」

「一緒にやっていくのに、お互いに下の名前で」

 けど、まだ、結婚するとは決まっていない。


「……葵」

「うん、ひーろー」

 そんな流れで、キスを迫ってくる。


「いや、そんな気分じゃないし」

 緋色は彼女の体を退けた。

「もう、なんで、よけるのッ」

「いや、まだ、そんな間柄でもないし」

「えー、でも、さっき、キスしたじゃない」

「うッ、そ、それは」

 緋色は強引に唇を奪われたことを思い出す。余計に恥ずかしくなった。


「そ、それは忘れてくれ」

「無理だよ。もう、私の口には、ひーろーの口の感触が」

「ああ、本当に頼む。蒸し返さないでくれ」

 恥ずかしさのあまり、脳内がどうにかなってしまいそうだった。


「もう、つれないのね」

 葵は、不満げにそっぽを向いていたが、すぐに緋色の方をじっくりと見始めた。

「ねえ、今夜だし、上の方じゃなくて、下ってこと?」

「いや、そういう風な話じゃないから」

 ああ、やめてくれ。

 これ以上、困らせないでほしい。


「ねえ、いいよ。私は」

 青は少し大人びた口調になり、誘惑しようとしていた。

「いや、まだ、君は未成年だろ」

「関係ないよ、年齢なんて」

「いや、ちょっと待って。今日は休戦中だろ」

「いいの」

「いや、良くないよ、約束は守らないと」

「んん」

 葵はムスッとした表情を見せ、緋色のベッドと向かうなり、そこにダイブする。


「そこは葵の寝るところじゃないよ」

「私のだもん。ひーろーと一緒に寝るの。早く、布団の中に入って」

 これ、いろいろとやばい。


「そうだ。確か、来客用の部屋があって。そこを貸してあげるからさ。ね、いいだろ」

「いや、ここがいい。ひーろーのベッドがいい」

「でも」

「ここがいいの」

 葵は我儘ばかり言って、なかなか、ベッドから離れようとはしなかった。


「私は絶対に、ここから動かないから」

 ああ、面倒だ。

 緋色は頭を抱え込んでしまった。




 そんな中、階段を上る音が聞こえる。

 その足音は確実に綾瀬であろう。

 絶対に自室のベッドで、葵が寝ているところを見られたら確実に終わりだ。

 緋色は部屋の電気を消し、一旦部屋から出る。

 その直後、ばったりと綾瀬と出会う。


「どうしたの? そんなに焦って」

「な、な、なんでもないよ」

 緋色は自室の扉を隠すように佇んでいる。


「えっとさ、一階に行こうと思ってさ」

「そうなんだ」

 というか、綾瀬は風呂上りで、バスタオルを巻いただけの状態である。

 これって――

 緋色は、どこに視線を向ければいいのかわからず、目をキョロキョロさせてしまう。


「どうしたの? おかしいよ、大丈夫?」

「う、うん。大丈夫だよ。本当にさ」

 緋色は過剰に反応し、何とかその場しのぎをしようとする。

 彼はいろいろな意味で焦り、次の言葉を見つけることができていなかった。


「それで、私はどこで休めばいいのかな?」

「僕の部屋って言わないよね?」

「それはいいわ。休戦中ですし、今日は諦めるわ。そういえば、あの子は?」

「あ、あの、その、ですね」

 視界の先にいる綾瀬は、挙動不審な緋色の態度に首を傾げている。


「さっき、使われていない部屋を貸してさ。その部屋にいると思うよ」

「そうなんだ。私にもそういった部屋ってあるの?」

「うん。客室用だけど、今は両親が仕事で居ないから大丈夫なんだ。案内するよ」

 緋色はそんな風に言い、一緒に歩く。

 葵の存在は誤魔化せたかは定かではないが、自室を確認されないことを常に祈っていた。

 隠さないといけないことが多く、心臓の鼓動が収まりそうもない。


「ここでいいかな?」

 扉を開け、綾瀬に来客用の部屋を見せた。

 ベッドや机、簡易的な冷蔵庫など、最低限の備品などが置かれているのだ。

 ここでは、両親が仕事関係の人を呼ぶときに利用することが多い。

 今日は他に誰も来る予定もなく、すんなりと通してあげたのだ。


「いいね。ありがと。でも、急に泊まるだなんて言ってごめんね」

 綾瀬は申し訳差なそうな顔をしていた。

「いいよ。今は両親もいないし。で、でも、どうして、恋人なんて言ったの?」

「だって、緋色君に婚約者がいるって知って、少し焦ってしまったというか。このままだとよくないと思って。咄嗟に……」

「じゃあ、流れで恋人って言った感じなの?」

「そ、そうかな?」

「じゃあ、まだ、僕は恋人じゃないってことかな?」

「う、うん、そうかもね……」

 綾瀬は声のトーンを落としながら言う。


「そうか、そうだよな。ただの友達だよな」

 緋色は悲しくなった。

 でも、なんとも言えない感じになった。


「じゃあね、また明日」

「う、うん」

 綾瀬はゆっくりと扉を閉めていたのだ。

 そして、廊下で一人になった直後、そこで深呼吸をし、心を落ち着かせた。

 緋色は、どこで寝ようか、考えた結果。一階リビングの隣にも来客用の部屋があり、そこで就寝しようと思い、階段を下がっていく。


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