表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約少女と、恋人未満のクラスメイト? 好意対決の末、誰を選ぶ?  作者: 不知火 カエン-赤色
第一章 平穏な日常に現れた婚約者⁉
4/10

04_そして、競い合いの前夜、


 双月緋色は自宅リビングにて、普段と比べて精神的に落ち着かない。

 今、視界の先には二人の女の子。葵と綾瀬がいて、敵対視しているので空気が少し、険悪になっていた。彼自身も、何かしなければいけない気持ちになってしまう。

 実際のところ、何をすれば、この環境を改善できるかなんてわからない。


「そ、それでさ。何をして白黒つけるの?」

 緋色は彼女らに聞いてみる。

「それは簡単なことよ。私と、この子。どちらが緋色君に好感を与えることができるかで決めるの」

 綾瀬が身振り手振りで教えてくれた。


「ちょっとー、勝手に決めないでよー」

 葵は頬を膨らませ、不満げな態度を見せている。

「いいじゃない。どうせ、付き合うにしても、好感度がないと成立しないでしょ」

「そうだけど。勝手に方向性を決めないで」

 綾瀬を見て、自己主張していた。


「勝手にって。その日ごとに、お題は交互に決めるのから安心して」

「そうなの?」

「それ以外に、貴女からの提案があるなら別だけど」

「うう。すぐには思いつかないし。んん、そのお題を交互に決められるなら、お姉さんに従う……」

 葵は声を小さくしていた。


「じゃあ、決定ね」

 綾瀬は勝ち誇った表情をしていた。

 少しでも優先権を得られたことで、優越感に浸っているかのような態度。


「それで、その判断は僕がすればいいってことだよね?」

「そうよ。緋色君に対して、何かを与えるわけだし。お願いね」

 綾瀬から言われると、なかなか、断ることができなかった。


「う、うん」

 評価か。好きな人を評価するなんて、嫌だな。

「あとね、さっき、家に帰った時に作ってきたんだけど。これに記入してね」

 綾瀬はテーブルに、その用紙を置いた。


「これは?」

「評価シートよ。緋色君が、感じたことを書く用紙。最終評価の時、使うから。その都度、書き込んでよね」

「これに?」

 その評価シートには、いろいろな項目が用意されている。

 その通りに感じた通りのことを的確に記せばいいだけなのだが、なんか、恥ずかしい。

 自身の感情を書くことに、そんなに耐性があるわけでもなく、極力見せたいとは思えなかった。

 見せないといけないのか。

 変なことはかけないな。


「貴女も、大体の事わかったでしょ?」

 綾瀬は敵対勢力を見るかのような視線を、少女に向けている。

「うん、いいわ。絶対に卑怯な手段はダメから」

 葵は綾瀬を見、宣言する。

 互いに納得しているようなので、問題はないだろう。多分。


「それと、今日は一時休戦ね」

「何で?」

「だって、疲れているでしょ?」

「そ、そんなことは……んッ」

 葵は、お腹の音を鳴らしてしまい、視線を下に向けていた。

 対立している綾瀬と、婚約者の緋色に聞かれてしまったことに、羞恥心を抱いている様子。


「わ、わかったわ。きょ、今日は休戦ね」

「ええ。約束できる?」

「う……うん」

 少し言葉に間があったものの、頷いてはいる。


「それと、緋色君」

「はい」

「緋色君に何かするのは、毎朝六時半だから。いいよね?」

「うん。六時半か。でも、早くないか?」

 綾瀬は簡単にスケジュールを勝手に決めていた。


「いいの。朝でも、いろいろなことができるでしょ?」

「まあ、そうだけど」

 緋色は考え込み、明日怪しいことにならないか、不安さを感じつつも頷いた。


「貴女も、わかった?」

「うん。じゃ、明日は早起きしないと」

 葵は張り切り、闘志を燃やしていた。


「あと、これ、お題」

 綾瀬は緋色に見せないように、少女へと一枚の紙を渡していた。

「ふむ、ふむ、こうやればいいのね」

「そうよ。明日はね。明後日は、貴女が決めなさい」

「いいわ。絶対に私が勝てる内容にしてあげるから」

「ええ。どんな内容でも受けるから」

「ううッ」

 葵が唸る。


「これで話は終わり、それと、緋色君。お風呂ってどこにある?」

「お風呂?」

 一瞬、綾瀬が湯船に浸かっているシーンを連想してしまった。


「少し、汗かいちゃったし」

 今日は走って、この場所まで戻ってきたのだ。

 それなりに大変だったと思う。

 彼女の制服は、汗で透けている。

 下着のようなものが視界に映り、見ないようにして咄嗟に別の方を見た。


「どうしたの?」

 彼女は首を傾げている。

 綾瀬は透けていることをあまり気にしないのだろうか?


「な、なんでもないよ」

 緋色は、視線を合わせられなかった。

「変なの。まあ、いいわ。案内してくれないかな?」

「はい。こっちです」

 緋色は緊張気味に言い、カクカクした動きでリビングを後にし、風呂場があるところまで一緒に向かうのだった。

 そんな様子を葵は、不満げに、そして、何かを企むように見やっていたのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ