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婚約少女と、恋人未満のクラスメイト? 好意対決の末、誰を選ぶ?  作者: 不知火 カエン-赤色
第一章 平穏な日常に現れた婚約者⁉
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02_いきなりのキスと、同居⁉


 双月緋色は今、自宅のリビングにいて、床で正座をしている。二人の美少女に囲まれ、対応に困っていた。

「ねえ、これはどういうことなの?」

 クラスメイトであり、友達の綾瀬に問い詰められてしまう。


「いや、これは僕にもわからなくて……」

 そもそも、彼女とは単なる友達だったはず。彼女がそこまで問い詰める必要性もないと思うのだが……

 でも、好きな人から、指摘されるのは、内心、嬉しくもあった。

 しかし、状況が状況なだけに、なんとも言えず、次の言葉が思いつかない。


「ねえ。ひーろー、なんで、このお姉さんといるの? 私だけを愛してくれるって、言ってくれたよね?」

 近くにいる水色の髪をした、小柄な少女に言われ、この場合、なんて返答するのが正解なのか、戸惑っていた。


「君とは、そんな約束した覚えがない気が」

 緋色は言葉に詰まりながらも言い切る。

 本当に記憶にないのだ。

 知り合いでもなく、身に覚えのない発言は、兎に角撤回したい。


「ねえ、本当にそんな約束をしたの? ねえ、緋色君。というか、この子とは、どんな関係なのよ」

 綾瀬は近くにあるテーブルを叩き、尋問してくるのだ。

 普段から想像もつかないような、怖さがそこにはあった。


「そ、それは、僕にも、さっぱりわからないんだ」

 視線を逸らし、気まずそうに言う。

「どうして? こんなに親しい呼び方をされているのに、知らないわけないでしょ?」

「いや、それはさ。多分、この子の勘違いさ。別の人と間違っているだけ、だと……」

 緋色はすぐに考えれず、変な発言をしてしまう。


「勘違いって、ひどいよー、私たち昔、いろいろと呼び合った仲でしょ?」

「そ、そんなことはないような」

「ねえ、忘れちゃったの?」

 少女の水色の髪には、小さなアクセサリがついている。そんな彼女は、緋色の態度に、泣き目になっていた。

 な、泣かれても。

 というか、なんで、こんなことになってしまうんだよ。

 ああ、どうしたらいいんだぁ。


「ねえ、貴女。ウソ泣きはよくないわ」

 え? ウソ泣き?

「ばれちゃった?」

 少女は舌を小さく出し、すぐに泣き目ではなくなり、先ほどのことがウソのように、綾瀬をジト目で見やっている。

 敵対視するように。


「ねえ。恋人か、わからないけど、お姉さんこそ、帰ったら?」

「何でよ。私は本当に、緋色君の――こ、恋人なのッ」

 綾瀬は慌てたように言う。


「え、こ、恋人でいいの?」

「え、まあ、そ、そうよ、恋人でいいの」

 なんか虚勢を張っているようで、違和感を覚えてしまう。


「ねえ、じゃあ、お姉さんは、ひーろーと、キス。できるんだよね?」

「え、ど、ど、どうして、そんな話になるのよ」

 綾瀬は動揺し、言葉がこんがらがっている。


「だってー、好きな人とは、キスをするのが普通でしょ?」

「え、まあ、そうね。そうかもね」

「じゃあ、キスをしているところを見せてよ」

「ここで?」

「うん。できるよね? 本当に恋人なら」

 少女はニヤニヤして、綾瀬の戸惑う姿を見ている。


「わ、わかった。じゃ、き、キスをしましょ、緋色君」

「え、ちょっと、待ってくれ」

 好きな子とキスできるのは嬉しいことだが、いきなりは、さすがに恥ずかしい。

 彼女は緋色の方に視線を向け、少しだけ、瞼を閉じ始める。

 ほ、本当にやるのか⁉

 いきなりのシチュエーション。

 こういう風な感じのキスでいいのか?

 と、思いつつも、嬉しさを抱き、恥じらいを見せている綾瀬と向き合う。

 彼女は頬を赤らめ、キスをしようとしているのだが、途中で――


「ちょっと待って……」

 綾瀬は中断した。

「やっぱ、できないじゃん」

「で、できるわよ。緋色君。ちょっと、まっすぐになって」

「え?」

 綾瀬は再び、瞼を閉じ、顔の方に近づいてきた。

 そして、彼女の息がかかった直後、頬に唇が当たる。

 口づけではなかったが、頬にあっただけでも嬉しい。


「やっぱり、無理だったみたいね」

 刹那、

 え?

 緋色が気づいた頃には、水色の髪をした少女の顔が目の前にあり、そのまま抵抗する間もなく、唇を奪われていた。

 頬へのキスではなく、互いの唇が重なっている状態。

 え? え⁉

 緋色は、頬を赤く染め、心臓の鼓動が高まった。


「ちょ、ちょっと……」

 その光景を見ていた綾瀬も、言葉を失いつつあった。

「ね、私はできるよ、このようにね。お姉さんより、私の方が相応しいの」

 初めての口づけが、こんな感じにあっさりだとは思っていなかった。

 緋色は一瞬、時間が止まったような感覚に追い込まれ、硬直する。

 好きな子がいる前で、見ず知らずの女の子と、キスするなんて、あ、ありえない。


「嫌らしい」

「え?」

 緋色は聞き取れなかった。


「い、嫌らしいって、言ってるのッ」

「え、それを僕に言われても」

 綾瀬は怒りをあらわにしていて、少女はその光景を見て、勝ち誇った表情を見せていたのだ。

 好きな子と友達になったばかりなのに、こんな経験をするなんて――

 今後が不安でしょうがなかった。



 緋色は、水色の髪ショートヘアの少女からキスをされ、動揺している。

 心が揺さぶられているような感じで気まずい。

「キスして、よく普通に対応できるものね」

「まあね」

「褒めてないんだけど」

 綾瀬は、少女を見やる。


「ねえ。き、キスのことは一先ず置いといて、貴女はどこかから来た子なの?」

「私は、遠い場所から」

「遠い場所って、どこ?」

「何でそんなことを聞くの?」

「貴女、どう考えても部外者だし、素性も不明で怪しいじゃない」

「そんなことないもん」

 少女は不満げな態度をとっている。


「緋色君だって、知らないって言ってるんだよ? 家の持ち主が知らないんだったら、部外者じゃない」

「ひーろーが忘れているだけ。だよね、ひーろー」

「え、いや、さあ? わかんないけどさ。なんで、ひーろーなの?」

「え? 前に、名前聞いた時、ひーろーって言ってたじゃない」

 少女は以前あったかのような話し方をする。

 この子のことは本当にわからない。

 というか、いつまでこの家にいるのだろうか?


「緋色君も困ってるでしょ。今から警察に連絡するから」

 綾瀬はスマホを取り出す。

「警察? って何?」

「え? 貴女、そんなものも知らないの?」

「え、知らないとまずいの?」

「普通は知っているわ」

 綾瀬は驚きを隠しきれていない。


「ひーろー、そうなの? 知らないとダメなの?」

「まあ、そうだな」

 警察を知らない少女って、本当にどこから来たんだ?

 現代文明と違うところか?


「まあ、いいわ、今から警察に連絡するから、許可も取らずに入っているって」

 綾瀬は、スマホを操作する。

「私、許可とってるよ」

「え?」

 緋色は首を傾げる。

 まったく、そんなことを両親からも聞いていないからだ。


「僕は知らないんだけど」

「緋色だって、そういっているじゃない。嘘ばっかり言わないで」

「嘘じゃないもん。だったら、ひーろー、電話してよ」

「どこに?」

「ひーろーの親に」

「僕の?」

「うん」

 少女は頷き、緋色はしょうがなく、スマホを片手に、父親と連絡を取ってみることにした。

 そして、通話が始まる。


『お、緋色か、どうしたんだ?』

「いや、なぜか、家に帰ったらさ。知らない子がいるんだけど。お父さん知ってる?」

『ん? ああ、もしや、あの子のことかな?』

 え?

 緋色は衝撃を受けた。

 父親が次の発言が怖く感じる。


『その子はね。父さんの昔の友人の子供でね。家庭の事情か、村の都合かなんかで、同居しないといけないらしんだ』

「え? そ、そうなの?」

 嫌な感じしかしない。

 なんで、そんなことを勝手に決めたんだよ。


「父さん、そういう風なのは、勝手に決めないでくれないかな?」

『ごめん。仕事が忙しくて、気づいたら、約束してたんだ』

「それ本当に困るよ」

 緋色は嫌そうな顔をしつつ、それを二人に見せないように、電話先の父親に返答していた。


『まあ、頑張りなさい。父さんの友人の子だから親切に接するようにな。そろそろ、仕事が始まるから、ここで切るから』

「え、ねえ、ちょっと」

 通話が終わった。


「……」

 そして、緋色は無言で放心状態になっていた。

 彼は苦笑いをしながら、少女を見やる。


「ね、そうでしょ」

「ああ。本当だったな」

 まさか、こうなってしまうとは。


「ちょっと、それって。二人はど、ど、同居するってこと⁉」

「そうだね」

「ううう、だ、だったわ、私もここに住むからッ」

「は? ……え? い、いきなり⁉」

 嬉しいけど、二階の自室を特にいろいろなものが散乱している。

 すぐに泊めるわけにもいかなかった。


「二人っきりだと、絶対、変なことが起きるでしょ?」

「そんなことは」

「ないって、言い切れるの?」

 綾瀬が顔を近づけてくる。


「それは、断定できないけど」

「だから、私もここに住むの。今日からね」

「え、きょ、今日から⁉」

「そう決まったの」

「いや、でもさ。寝るとこなんてすぐには用意できないし」

「使っていない部屋でいいわ」

「え、それは……」

 自室だけじゃなくて、大半の部屋が散らかっているのだ。

 今は父親と出張で居ない母親は、そんなに掃除とかもしない人だったので、いまだに汚いままである。

 好きな子に、そんな汚い部屋を見せたくはない。


「今から必要なものを持ってくるから、ちょっと待っててね」

 綾瀬は颯爽と緋色の家から立ち去っていく。

 また、来るのか。

 嬉しいような、大変なような、複雑な心境だ。




 なんか、静かになった。

 嵐が消え去ったかのように。

「ねえ、あの子がいなくなったし、ゆっくりと、昔の話をしましょ」

「昔の話?」

 少女とはそんな仲でもなければ、初対面。

 父親の知り合いの子だったとしても、身に覚えがない。


「それで、まだ聞いていなかったけど。君の名前は?」

 緋色は、隣に座っている少女に問う。

「そういう風なの。気になるの? ひーろー、エッチ」

「いや、なんでそうなるんだよ」

 少女は頬を赤らめ、恥じらう素振りを見せている。


「私は、葵でいいよ」

「葵? 上の名前は?」

「上だなんて」

「いや、まったく卑猥な発言はしていないんだが」

「双月」

「は?」

「だから、双月葵」

「僕とたまたま同じってこと?」

「だって、将来結婚するんだし、いいじゃない」

「本当は違うってことか?」

「うん。でも、いいでしょ」

 はああ、なんか、先が思いやられる。


「ねえ、本当に私の事、思いていないの?」

 水色の髪の少女――、葵が見つめてくる。

「覚えてないよ」

「じゃあ、昔。とある森で迷子になったことってなかった?」

「とある森で?」

 考え込んでみる。

 けど、まったくわからないが、どこか、心に引っかかる記憶が脳内をよぎる。


「多分、そんなことがあったような? あったかな?」

「そこの森で、ひーろーが落とし穴にはまっていたの。それを私が助けたの。覚えてない?」

「なんか、そんな気が……」

 しかし、ハッキリとは思い出せなかった。


「私と婚約するなら助けるって。そんなやり取りがあったでしょ?」

「ん? ああ。なんか、そんなことが、あったなぁ」

 そんな遠い日のことを、少しだけ思い出す。

 あれが葵との出会いだったのか?

 でも、なぜ、あの場所にいたのか不明である。

 疑問に感じ、いくら考えても、そのモヤモヤが解消されることはなかった。

 でも、あの時は、助けてもらわないといけない状況でだったはずで、その流れで言ってしまったような気がする。


「それが、私に対する、ひーろーからの告白だったの♡」

「いや、それはさすがに強引すぎるというか、都合のいい解釈じゃ」

 あの一言で、人生が変わるきかっかけになったのか?

 だが、落とし穴から助かる方法はそれしかなかったと思う。

 しょうがないと思いつつも、あまり納得はできていなかった。


「それでね。私の村のしきたりで、婚約した人と一緒に生活することになってるの」

「村のしきたり?」

「うん。私が結婚できる年になるまで、ひーろーは婚約者として、一緒に付き合うの。そのあとは、村に戻って、いろいろなこと、きゃッ♡」

 葵は、一人で妄想しながら頬を両手で抑え、興奮していた。


「いろいろなことって?」

「私に言わせないでよ。決まってるでしょ、子作り」

 葵は、耳元で囁くように呟いた。

 不覚にもドキッとしてしまう。


「え、ちょっと、僕は好きな人がいて、それは無理だって」

「……もしかして、さっきの人?」

「うん」

 緋色は頷く。


「じゃあ、別れて。私だけど愛して♡」

「いきなりは、ちょっと」

「えー、いいじゃない」

 葵が執拗に話しかけてくる。

 そして、服の隙間から、チラッと、嫌らしく胸元を見せてきた。

 そんなに大きい方ではないが、それを見ている彼の方が恥ずかしくなってくる。


「ねえ、いろいろなことしよ♡」

「でも、ほぼ初対面だよ」

 この子は、まだ未成年である。

 体との関わりは、あまりよくない。

 むしろ、緋色自身が、警察と関わってしまう可能性だってある。


「じゃあ、夜だけにしてあげる♡」

 自分自身よりも、年下の子になびいてしまうなんて、ありえない。

 今は冷静さを保つしかないだろう。

 そう頑なに、心に誓うのだった。


「ま、いいわ。夜のことについては、暗くなってきてから、きゃッ♡」

 そういうと、彼女は立床から立ち上がる。

「今日は私が、料理を作るね」

「料理? できるの?」

「うん、当たり前でしょ。ひーろーのために一生懸命頑張ってたんだから。楽しみに待っててよね」

 少女はキッチンの方へと向かっていく。

 本当に任せてもいいのだろうか?

 少々不安を抱きつつ、緋色は少女の後ろ姿を見ているのだった。


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