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糸電話/完全なる不完全
糸電話
鈴 初夏ノ影
一直線の紅い糸 二つの受話器をコネクトする
ピンと張られたその糸は 細く細くいつ切れる
静電気の起こるよう 低湿度で寒々しい
緊張する受話器の間 紅き糸はいつ爆ぜる
少し凹だ歪な受話器 瞳を閉じて口に宛がい
もしもしと呼びかける もしもし、もしもし
『お掛けになった電話は 電波の届かない場所にあります』
紅い糸は弛まされていた
完全なる不完全
鈴 初夏ノ影
生死の狭間 枯れ掛けの薔薇
棘が喉に絡みついている
突き抜ける 傷に塗れる白い肌
砕ける硝子片 一身に受け止めた
歪に口に弧を描かせる 真白の歯
瞳から花弁が零れ落ちる
「サヨナラ」を空振らせた最期
今回、「糸電話」は微妙な友好について、つまりはいつも通りですが、二つ目の「完全なる不完全」はただの私の美意識というか、性癖というか、そんなものです。気が向いたら、「完全なる不完全」の絵を描きたいです。