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涙溜まりに三日月の/雨檻/満月に酔い
涙溜まりに三日月の
鈴 初夏ノ影
「あ、綺麗。」
西に傾く月に告ぐ
笑みを浮かべた夜暗し
「嗚呼、嗚呼。」と
何にも成れぬ嗚咽共
水の溜まりに刻む波紋
「三日月だ。」
深夜の悲泣の碧落に
見上げぬ月に酔っていた
雨檻
鈴 初夏ノ影
閉めたカーテン 聞く雨音
一瞬ばかりの閉塞感
暈した景色 滴る粒
冷涼なるその温度
狭き世界 私だけ
もうここからは出られない
満月に酔い
鈴 初夏ノ影
蒸された秋雨あがりのにおいを嗅ぐ
腐敗した紅葉のような
生乾きの衣類のような
重く蝕む空気を飲む
高湿度な夏の名残に
頬を撫でさせ歯を合わせる
膨大なる感情と倫理のその最果ては
哲学の終着駅にこそあった
永遠に廻めぐり続ける環を
肩に担いで歩いていた
しかし悲愴に見上げた空の
孤独な月の美しさ