第6話 勇者4
ソウタが森の中で採取していると、ユウキに声を掛けられた。
「ソウタ、森にオークが出たらしいぞ。討伐するからついてこい」
「いやいや、俺は戦えないから断るよ。」
首を振って拒否の意思表示をした後、踵を返し、元来た道を歩き出すソウタ。
「良いから来い!」
ユウキがソウタに駆け寄り腕を掴んで、引き摺る様に連れていく。
「止めてくれ、死にたくないよぉ! 家で病気の母が待ってるんだぁ!」
「俺が守ってやる」
不敵な笑みを浮かべるユウキ。
「薬草を取って帰らないと、食事を食べさせられないんだぁ」
「1日ぐらい大丈夫だ」
喚き散らすが、ユウキの意思は固く、無理矢理森の奥にソウタを連れていく。
「森の奥に、お前の母の病気が治る様な、特別な薬草があるかも知れないだろう」
「そんなものは無いよ! 例えあったとしても、俺が死んだら意味が無いだろう」
「ああ、うるせー! 良いから来い!」
(ユウキは俺に何をさせたいんだ? 足手まといにしかならない俺を連れて行って、どうしようって言うんだ。この前の泥棒が発覚した事の意趣返しか? 逆恨みもいいところだよ)
「何で、俺を連れて行くんだ! 足手まといだろう?」
「オークとは初めて戦うからな。保険だよ」
「保険ってなんだよぉ」
「良いから黙ってついてこい!」
ソウタの大声に反応し、時折、ゴブリンやコボルトが現れると、ソウタの腕を離して倒しに行くユウキ。
その隙にソウタはこそっと逃げるが、直ぐに追い付かれてまた腕を掴まれる。
力も走る速さもユウキに全く敵わないので、ソウタは連れていかれるがままだ。
「静かにしろ! オークが居たぞ!」
ユウキがソウタの耳元で脅す様に、小声だが低音で言った。
しかし、ソウタの声にオークは反応していた。こちらを向いて歩いて来る。
オークは顔が猪の人型のモンスターだ。人間より身長が高く2mを越える個体も珍しくない。怪力を誇り、大人の村人でも数人がかりでやっと倒せる実力。
群れで行動する場合が多いが、稀に単独でいる場合もある。単独でいるオークを『はぐれ』と言う。群れのオークも恐ろしいが、『はぐれ』も脅威の存在だ。
『はぐれ』は、群れのオークより個体の力が強く狂暴であり、一回り大きい。
ユウキとソウタが見たオークは『はぐれ』だった。身長も2mを楽に越える群れのオークより大きい個体だった。
「しっかり肉壁になって貰おうか。お前が食われてる間に倒してやる」
ユウキがオークを睨みながら言った。
「肉壁! それが目的かぁ! 手を離せぇ」
「うるせぃ! さあ、殺られちまえ!」
ソウタの腕を掴んでいるユウキの手に力が入り、ユウキはソウタをオークの元へ放り投げようとする。
ガサガサ……。
その時、草むらが揺れて、1匹の獣が飛び出した。そして、ソウタの腕を掴んでいるユウキの手に噛みつく。
「イタっ! ちっ、何だこいつ。」
ユウキはソウタの手を離し、獣を振りほどき剣で切りつけた。
獣は躱しきれず額を浅く斬られる。
「がぅうううう」
飛び退いた獣は額から血を流しているが、ソウタを守る様にユウキを睨み唸る。
「てめぇ、許さんぞ」
獣を睨むユウキ。
しかし、斧を持ったオークがユウキに向かって、ゆっくりと近付いて来ていた。
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