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第2話 ゾンビとかけまして妹と解く

 

「それで、具体的にどうすればいいんだ?」


「具体的にって言われてもなあ。こういっちゃあなんだけどオレもさっき思い付いたばっかりだし。まー学園生活の中で男の娘と接する機会があったらオレがアシストしてやるって感じかな。一人の時にパニックになっちゃったら大変だろ?」


「それは確かにな。でもお前だけでも練習相手になってくれたらそれで充分な気もするんだが」


 那月以外との接触があったら?それはもちろん逃げるさ。


「オレを男の娘に数えないで欲しいんだけどなあ!それに何かある度に股間をまさぐられるのはゴメンだね」


「う、申し訳ない。今後そのようなことが無いように気を付けますのでご容赦ください」


「うむ、気を付けたまえ。それで、参考までに何か今まで女性恐怖症を治すためにしたこととかあれば聞きたいんだけど」


 思い出したくない記憶しかないのだが、何かヒントになるかもしれないのだ。致し方ない。


「んー、まぁとりあえず女性と出来る限り近づいて見ようと人通りの多い交差点を歩いて見たんだがアレは失策だったな。四方八方から迫り来る恐怖、まるでゾンビ映画の主人公の気分だったよ。」


 もしくはサメが取り囲む檻の中に閉じ込められた人か。


「あとドラマやバラエティだったりテレビで見る分には平気なんだよ。だからまずは2次元から3次元へ慣らして行こうと思ってVRを見てみることにしたんだ。でも思った以上にリアルでね.....下手なゾンビもののVRよりも恐ろしかったよ」


「君の例えの引き出しにはゾンビしか無いのか?」


 .....いやだってお化けというよりはゾンビだし、迫ってくるし、人型だし。


「あー、あと直に接しなければいいんじゃないかと思ってチャットアプリで知らない相手と通話してみることにしたんだよ。いやー失敗失敗。ゾンビに囁かれている気分だったよ」


「ゾンビは呻き声しかあげないよっ!」


 後は精神科に行ったり催眠療法を試してみたりもしたんだけどなかなか上手くいかなかったな。そのうち俺もどうしようも無いもんだと思って治すのを諦めてかけていたって訳だ。


「うーん、とりあえずやっぱり色々な男の娘達と触れあって慣れさせる、これしかないな」


「結局元の案のままだな」


「まあまかせてくれ、こう見えてもオレは結構な情報通なんだよ?この学園の男の娘情報なら一通り把握してるんだ」


 おや、こいつまさかギャルゲーでやたらヒロインの情報を教えてくれる主人公の親友ポジションの奴だったのか?男の娘のくせに!


「なんか変なこと考えてなかった?」


「いえいえ別に」


「何にせよ、今日はもう学校も終わっちまったしな。また明日から色々頑張ろう」


 え、いま学校終わったって言った?


「ウソォ!いま何時!?」


「もうすぐ17時を回ろうかと言うところだね」


 なんてこった!俺の華々しい学園生活の、その転校初日をほとんど寝て過ごすなんて!?

 え、ってことは俺転校してきたと思ったらいきなりぶっ倒れてそのまま帰らぬ人となった奴みたいに思われてるの!?どうしよう明日から学校行きづれえ!いっそのこと病弱キャラで押し通すか!?


「そんな慌てなくても大丈夫だよ、今日はホームルームと新年度を向かえるにあっての簡単な説明ぐらいしか無かったから、部活が無い人達は午前中で解散だったし。そのぐらいなら緊張し過ぎてぶっ倒れたってことにすれば何とかなるんじゃない?」


「そうか、ならまだ大丈夫か。.....あれ、那月もしかして俺のために残ってくれたのか?」


「明日の時間割とか持ち物とか教えなきゃだったしね。あと一応オレ保険委員だし。先生に任せて帰っちゃっても良かったんだけどまあ暇だったしな、だから全然灯夜が気にすることは無いよ」


「そうか、でもやっぱりありがとう」


「ほい、どういたしまして」


 そろそろ帰ろうかということになったので下駄箱まで那月と一緒に歩く。改めて見ると顔だけでなく体つきも小柄だし筋肉も付いてないしでやっぱり女子っぽいように思えるが、身に纏う男子制服がかろうじて男であると主張していた。


「それじゃあまた明日」


「おう、また明日なー!」


 那月と別れて家路を歩く。俺にとってはこの通学路もゾンビが闊歩する道なので油断ならない。この時間だからなのかこの地域がそうなのかは分からないが、幸いにも人通りは少なかった。


「ただいまー」


「灯夜!大丈夫だった!?クラスには馴染めた?いじめられたりしてない?お母さんもう心配で心配で」


「おにい!大丈夫だった!?俺様生徒会長に強引に迫られたり、人畜無害そうな顔した後輩に鬼畜攻めされたりしてない!?妹はもう心配で心配で」


「おい妹よ」


 これが俺の母と妹である。母ちゃんはもともと親バカなところはあったが、俺が女性恐怖症になってからはますます過保護になっている。まあそれもしょうがないことだと思うし愛されてると考えると悪い気はしない。妹はお察しの通りBLを嗜む腐女子で、俺が男子校へ行くと聞いてからというもののご覧のようなはしゃぎっぷりだ。ちなみに父は仕事熱心な人なので帰るのは大抵夜遅くだ。


 俺の女性恐怖症は幸いなことに家族に対しては問題なかった。


「大丈夫何も問題は無かったよ」


 転校初日からぶっ倒れてずっと保健室で寝てました、なんて言ったら母ちゃんの方が失神してしまいそうだ。妹は妹で保健室のベッドで一体何をしてたんですかねえ?とかいいそうだし


「おにい、何かあったら逐一報告してよね。漫画のネタにするから」


 そういえば、実際保健室のベッドで同級生の股間をまさぐったような.....


「なあ妹よ、因みにお前的には男の娘ってあり?」


「うーん、ショタならともかく男の娘はちょっと....あくまで私的にはだけどね。人によってはアリかもだけど、男の娘はBLとは認めないって人とか地雷だって人も多いから注意した方がいいかな」


 注意するタイミングが分からないのだが一応肝に銘じておこう。


 その後は夕食を食べてお風呂に入って後は寝るだけだ。布団に入って今日1日のことを思い出す。想像していた学園生活とはまるで変わってしまった、初日から気絶するわ男の娘に驚かされるわ。それにまだ他にも男の娘が何人もいるなんて全く持って想定外だ。

 ただ.....それでも友達が出来た。まさか転校して初めての友達が女子みたいな男子だとは思わなかったけど良い奴みたいだし。


「明日から.....楽しくなるといいな」


 よし、寝よう。電気を消した瞬間、唐突に思い出した。


「そういえば明日の時間割聞いてねえじゃん!!」


 翌日、全教科の教科書を持って登校する灯夜の姿がそこにあった。



















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