第一話 未知との遭遇
ラブコメです。コメディ多めになります、下ネタ多いのでご注意ください
「いいか、先生が一旦先に中に入ってクラスの連中に説明するから、篠塚は先生が呼び込んだら入ってくるんだぞ」
「は、はい!分かりましたっ」
本日は4月8日、調べてみると4月8日は指圧の日だったりタイヤの日だったりするらしいが俺にとって今日は転校初日という大事な日だ。
そして俺が転校してきたこの学園にとっては今日は始業式の日ということになる。
年度が変わるならクラスの顔触れも変わり、転校生がサラッと混じっていても誰も気づかないんじゃないかと思っていたが、どうやら乙高ではクラス替えは無いらしく、3年間ずっと同じクラスメイトでやっていくようだった。
俺は今日から2年生。つまりこの教室には1年間絆を深めて来たであろうグループが出来ている訳で、そこに飛び込む俺という異物を果たして受け入れて貰えるだろうか.....ああ、ダメだ。緊張してどんどんマイナスな方向に思考が向いてしまう。
「そんなに緊張しなくてもみんな気の良い野郎共だから大丈夫だ、先生が保証しよう」
野郎共。そう、野郎だ。今日から通うこの私立乙好学園は男子校なのだ。ここはスポーツの強豪高でも無ければ偏差値の高い学校でも無い普通の男子校である。俺はとある事情から進んで男子校を選んだ。
「じゃあちょっと生徒達に説明してくるから」
先生はもう教室へと入っていってしまった。ああ~どうしよう緊張でもう吐きそうだ。大丈夫だよね、男子校って明るくてノリが良くて転校生なんて来た日にはもうすごい歓迎ムードで接してくれるって聞いてますけど!
「今日はみんなに転校生を紹介します!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
あ、待って!?そんなに期待値上げられるとそれはそれで出ていきづらいから!!俺なんて大した人間じゃないから!きっとみんなガッカリしちゃうからぁ!!
「それではさっそく入ってきてもらおう、転校生の篠塚くんだ!」
速いよお、まだ心の準備が出来てないのに!ええい、こうなったら行くしかない!俺は教室の中へ足を踏み入れた。
「て、転校生の篠塚 灯夜です!よろしくお願いします!」
しまった、趣味とか特技とか言うべきだったか?あまりにもシンプルな自己紹介になってしまった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ただの自己紹介でそんな盛り上がるの!?男子校ハードル低過ぎだろ!!それともこいつらが特殊なのか?
「はいみんな静かにー。じゃあ篠塚は、窓側の一番後ろの席に座ってくれ」
「はい!」
何はともあれ良かった!すごい歓迎ムードだしこいつらとなら残り2年間も楽しくやっていける気がする!
さて、俺の席は
「篠塚くんだったよね!オレは茅ヶ崎 那月、これから2年間よろしくな!」
隣の席から声をかけられて振り向くと、そこにはあり得ない光景が待っていた
「え.....女、の子.....?」
端正な顔立ち、サラサラと流れる栗色の髪、つぶらな瞳、長い睫毛、薄い唇、そのどれもが女らしい。
.....え、なんで男子校に女の子が、女の子、女、おんな、おんな、おんな、あ、駄目だ。
「アゥ.....」バタリ
俺が男子校に来た理由、それは女性が怖いから。俺は女性恐怖症なのだ。
こうして俺は転校初日から保健室へ運ばれることになった。
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「.....知らない、天井だ」
転校初日だから知らなくて当たり前なんだけど。ここは、病院?いや、保健室か。そういえば保健室のベッドに実際に寝かされるのはこれが初めてだなあ。うむ、思ったより寝心地が良い。このまま二度寝してしまうのもありか。ってアレ?そもそも俺はなんでこんなところで寝てるんだっけ.....
「おっ、やっとお目覚めかー?心配したぞまったくー」
そう言って俺を覗きこむその顔の、長い睫毛が、ほんのりとピンクを帯びた瑞々しい頬が、薄くハリのある唇が、その、潤んだ瞳が、その可愛らしさが、
たまらなく恐ろしい
「うわああああああああああああああ」
「うええええええええっ!?お、おいどうしたんだよ!?」
彼女が心配そうに俺を見つめてくる。
「ひいいいいいいっ!こ、来ないでくださいぃぃぃぃぃぃ」
女が近い!!女、女だうわあああああああああああああ
「う、うえぇ?オレ何かしちゃったかっ?」
彼女からすればいきなり倒れた転校生が目覚めるなり発狂しているものだからさぞや困惑しているのだろう、申し訳ない、彼女は何も悪い訳じゃ無い、悪いのは俺なのだ。しかし、悪いとは思っているが俺の体は正直なのであった。
「ご、ごごごごごごごごめん、ちょっと、離れて、いただけないでしょうかぁ!?」
少しばかりたどたどしくなってしまったが、これでもよく言えた方である。偉いぞ俺!
「う、うん!?分かった、離れるから!」
彼女が物わかりのいい人で助かった。倒れた俺に付き添ってくれていたし、発狂した俺に嫌な顔を浮かべるどころか申し訳なさそうな顔を浮かべているし根がいい人なのだろう。顔を直視していると危険なので目はそらさせていただくが。
「ハァ.....ハァ.....すまない、少し時間をくれるだろうか.....」
「お、おう。ゆっくりでいいからなっ?」
俺なんぞの気遣いまでしてくれるとは。
お言葉に甘えて、少しばかり深呼吸する。視界に入るだけで危険なので彼女に背を向ける。.....ふう、さて色々と聞きたいところだがまずは非礼を詫びておかなくては
「あの、先ほどはすまなかった。申し訳ない」
「そんな背中越しに謝られたのは初めてだけど.....でも、全然大丈夫だよ。ちょっとびっくりしちゃったけど。それより体の方はもう平気なのか?転校してきたと思ったら急に倒れるもんだから何事かと思ったぞ!」
「あ、ああすまない心配かけて。体は別に問題無いんだ」
「大丈夫ならいいんだけど。.....なら、なんで急に倒れたんだよ?」
.....どうしよう、正直に話した方がよいのだろうか。しかし女性に面と向かって女性恐怖症だと話すのはいかがなものなのだろうか。適当にごまかすか?しかし、正直に言っておかないと今後も接近されてしまう危険性もあるし.....
「どうしたんだ?また具合でも悪くなったのか」
そう言って彼女が近づいてくる。見てはいないが気配で分かる!やばい、これはもう素直に言うしかない!
「じ、実は俺........女性恐怖症なんだ!!だ、だから君が突然現れてたもんで、ビックリしちゃって」
女性恐怖症とはいえ普段から女性に出くわしただけで気絶するようにはできていない。ただ今回の場合はここが男子校であり女子と出会うなんて可能性は露ほども考えていなかったため、いつも以上に過剰反応を起こしてしまったのだ。ほら、麦茶かと思ったらめんつゆだった時ってビックリするじゃない?最初からめんつゆだと分かってたら美味しく感じられたかもしれないのに.....
いやめんつゆは分かってても無理だな
「え、いまなんて?」
「いやだから、女性恐怖症だから君が怖いって」
「ま、待った!オレは.....オレは男だ!!」
..........は?
何を言っているんだこの子は。こんなに可愛い子が男の子な訳無いだろう。
「な、なんで無言なんだ!お前、まさか信じてないんだなあ!?ちょっと待ってろ.....ほら!こういう時のために戸籍表のコピー持ってるんだ!見ろ!」
「まさか、そんな訳」
そんな訳無い、と安易に振り返ってしまった。
瞬間、目が合ってしまった。可愛いという名の暴力と。
「うわあああああやっぱり女の子じゃないかああああああああ」
「ち、違う!オレは男だ!ほら、ここに書いてあるだろ!性別《男》って!」
「ひいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ来ないでえええええええええ」
「おい!見てくれよ頼むから!.....ダメだ、錯乱して全然見てくれない。一体どうしたら分かってもらえるんだ.....」
「あばばばばばばばばばばばばば」
「どうしようこのままじゃまた気絶しちゃう!一体どうすれば.....ハッ!お、おい腕を貸せ!手を出せ.....ほら!」
薄れ行く意識の中で俺は手の中に優しい温もりを感じた。それはどこか懐かしく、それでいて生命力に満ち溢れているように感じた。
「.....ほら、これでオレが男だってわかっただろ.....?」
なんだろうこの感触は、何か慣れ親しんだ感触だ。柔らかな丸みの上に、弾力のある棒状の物体。何故だろうこれを触っていると自然と恐怖が薄らいでいく
「ちょっ、ちょっと、いつまで揉んで....あっ.....!」
触っていると棒状のものが徐々にその硬さを増していく.....ああ、この硬さ、硬ければ硬いほど俺に安心感を与えてくれる。もっともっと触っていたい.....!
「あっ、もう、これ以上はダメ.....や、やめ.....やめろって言ってんだろぉーっ!!!!」
「ぐはっ!」
俺は正気に戻った!
「ハァ.....ハァ.....わ、分かっただろ!?オレは男なんだよ!」
「あ、ああ、悪かった。君は間違いなく男だ.....」
未だ、信じられない気持ちは強い。しかし、俺がこの手で弄んだそれは間違いなく男の象徴であった。
(.....ふたなりという可能性も)
いや、しかし流石にそう問い詰めてしまうと泣かせてしまいかねないのでここは彼の言を信用することにした。
「いや、その本当にすまない。ちょっと動揺してしまって」
「ちょっとどころじゃ無かったけどな」
プクーと頬を膨らませてむくれている様子も可愛らしい。.....ああ、いかんいかん。意識を集中させなければ!コイツは男、コイツは男.....!
「あのさ、まだオレのこと、怖いか?」
「.....最初ほどでは、無くなった。君が男なんだと強く意識すれば、なんとか正気は保ってられそうだ。だけど、いつまで耐えられるかは分からない。」
「そうか.....うーん、ちょっとそれはまずいかも」
まずい、か。確かにコイツとはクラスメイトのようだし顔を合わせない訳にはいかないだろう。
「ごめんな、こんな厄介な体質の奴がクラスメイトになっちゃって。俺のことは気にしなくていいから普段通りにやっていてくれ」
「いやいや!オレの方こそこんな女みたいな顔しててゴメン!いや、でもオレだけならまだなんとかなったかも知れないんだけど.....」
コイツが謝ることなんて一つも無いだろうに、謝らせてしまったことに罪悪感すら覚える。ん?オレだけならなんとかなったというのはどういう.....?
「なあ、つかぬことを聞くんだが君はどうしてこの乙好学園に入学してきたんだ?」
うん?唐突に話題が変わったな。
「俺はその、中学3年の時にちょっと色々あって女性恐怖症になってな。それで、高校1年までは通信制の学校に通っていたんだけど、やっぱり外で高校生活を送りたいって思って。で、男子校で家からの距離とか偏差値とか考えたらちょうどいいのがこの乙好学園だったんだ。」
「そうなんだ.....じゃあ、やっぱり知らなかったんだね」
知らなかったとは何をだろうか
「じゃあここで私立乙好学園の歴史を紐解いて見ようか。この私立乙好学園、通称乙高は今年で創立34年の比較的新しい学校なんだ。」
「お、おう」
いきなり学園の歴史の授業が始まってしまった。
「創立してから5年、手探りの学校運営ではあったものの特に問題はなく、生徒からの評判も概ね好評だった。しかし、そんなある日事件が起きた。」
「とある生徒と同じクラスの生徒との交際が発覚したんだ。つまり、男同士のカップルってことだね」
「それは、確かに世間からしたらセンセーショナルな問題なのかも知れんがそんな事件ってほどのことでもないだろう。なんというか、その、男子校だとよくあることだって聞くし.....」
「そう、それだけなら問題にはならなかった。学校側も節度をもった交際であるならばと黙認していたし、幸いにも周りの生徒からも少し囃し立てられはしたものの、いじめに発展したりということは無かったんだ。」
「だけど、それが二人の親にバレた。当時は今ほどLGBTの認知が進んでいなかったし、二人の親は古風な人間だったみたいでね、交際を認めないばかりか、家の恥さらしだとかお前なんか自分の息子じゃないとかそういうタイプの人だったんだ。それでとうとう学校に行くことも禁止したんだ。」
「それは.....ひどいな。」
「だけど、当時の学園長。今の理事長なんだけど、学園長はそれが許せなかった。二人は何も間違ったことはしていない、生徒を守りたいという思いが学園長に火を付けたんだ!学園長は何度も二人の両親の元へ向かった。最初は門前払いだったけど、何度も頭を下げ続け、そして長きに渡る説得の末、やっと二人の交際を認めさせたんだ!」
「学園長.....!教育者の鑑だぜ!」
「そして学園長の、引いては乙高の噂は密かに広まっていったんだ。LGBT問題に熱心な学校、そういった生徒を守ってくれる学校だって。」
「そうだったんだな、全然知らずに入学しちゃったけどいい高校じゃないか!」
「だから今では性的マイノリティを自認している入学希望者が増えているんだ、だから.....つまり.....」
「うんうん、つまり?」
「女の子みたいな生徒が、オレ以外にもいっぱいいるんだ」
.....え?
「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」
ええええええええええええええええええええ!?
「そんなモノローグでまでビックリしなくても」
そうは言うがこれは人生を左右しかねない一大事なのだ!女子と関わるのが怖いからこの学園に来たんだぞ!?いや、本当にマズイ。事と次第によってはもう一度転校もあり得るか?いや、しかし今から転校先を見つけるのも相当な難度であろうし家族にも迷惑が、
「あー.....大丈夫?」
「あ、ああ大丈夫だ」
何も大丈夫では無いがこういう時に虚栄を張ってしまうのが悲しき俺の性というものか。ああ、張るのは虚勢か。落ち着け、とりあえず状況を整理しよう。
「えーと、君みたいな、その、女の子の格好をした生徒が他にもいっぱいいるってことか?」
「お、オレは女の子の格好はしてないだろ!?ただちょっと見た目がアレなだけだッ!!」
.....言われて気づいたが確かにコイツは可愛いらしい容姿をしているものの、格好は普通の男子生徒と一緒だ。(まあ体格も小柄で華奢な体付きはしているが)それにしゃべり口調も女の子言葉ではないし、一人称も『オレ』だし。
「.....お前、もしかして普通の男なのか?その.....オネエ系では無く?」
「あー.....やっぱりそういう風に思われてたのかー.....そうだよなあ、オレ、可愛いもんなあ.....」
自分の可愛さに落ち込む人というものを初めて見た。
「.....素でその可愛らしさなのか?化粧も無しで?」
「そうだよ!!素だよ!!なにもしてないのにこんなに可愛くなっちまったんだよおおおおおおおおおおおお!!!!」
.....世の女性達が聞いたら炎上間違いなしな台詞だな。
「ごめん、話の流れ的に君もソッチ系の人なのかと。じゃあ君はなんで乙高に来たんだ?」
「.....オレも君と同じさ、知らなかったんだよ。そういう人が多い学校だって。」
なるほど。まあ別にこの学園がオネエ系の人専門の学園という訳じゃあ無いみたいだし、俺も那月も悪いことはしていない筈だ。そう、今となってはあまり記憶に無いが自己紹介の時に教室をザッと見た感じだと女子っぽいのは那月以外には見当たらなかったような気がするし。
「なあ、那月。この学園にはその、いわゆる男の娘ってやつは何人ぐらいいるんだ?」
出くわす頻度が少なそうであれば残りの学園生活もどうにかやり過ごせるかも知れない。
「そうだなあ、オレの知る限りでは新一年生に一人、二年生に三人、三年生にも三人かなあ。あ、オレは人数に含めないからな!」
おっと!さっき那月がいっぱいいるって言ってたから一学年に10人くらいはいるんじゃないかと思ってたけど思ったより少ないぞ、これなら行ける!
「ちなみにウチのクラスに2人いる」
「ちくしょう!偏り過ぎだろ!!」
2学年は6クラスあるんだぞ!なんで4人中3人が1クラスに集まってんだ!
「あんまりひとつの文章で数字を使いすぎるとよく分からなくなるから注意するんだぞ?っていうかオレを男の娘の人数に含めやがったな!?」
そりゃあそうだろう。お前をカウントしないで誰をカウントするんだって感じだ。もっと自分の可愛さに自信を持て。
「それで、どうするんだ?」
「どうするって言われてもなあ、もう一度転校するって案も頭を過ったけれど現実的じゃないし。極力男の娘達を避けて生活するしか無いんじゃないか?」
「.....灯夜は本当にそれでいいの?」
「なんだその、迷っている主人公の背中を推す幼馴染ポジションみたいなセリフは!.....それでいいかと言われれば良くはないよ、けど他にどうしようも無いじゃないか」
俺が女性恐怖症なのは俺が勝手に抱えている問題だ。男の娘に非はない以上俺が我慢する他に無いじゃないか。
「.....なあ、灯夜は今オレと普通にしゃべれてるけど女の子相手だとこんな風にはしゃべれないんだよな?」
「まず一つ訂正すると、俺はいま普通にしゃべれてはいない。やっぱり少し、いや割りと大きめな恐怖と戦いつつもどうにか冷静でいようと努めているだけだ。ただ、そうだな。確かに普通の女性と話す時だったらこんな風には出来ないな。そもそも喋れないな、奇声を上げるか脱兎のごとく逃げ出すかだろう。」
「じゃあなんで今はまだ耐えられてるのかな」
「やっぱりそれは、那月が本当は男だからかな。見た目だけで言えば恐怖の塊みたいなもんなんだけど、こいつは女じゃ無いんだぞ、男なんだぞ、っていう安心材料があるから踏みとどまれるというか。例えるなら女性は図鑑に載ってなくて毒があるかも分からない毛虫で、那月は毒が無いことが保証されている毛虫みたいな感じだ。」
「人を毛虫で例えるのはやめてくれよ.....でも、つまり女性よりは男の娘の方が怖くないってことなんだよね?」
あくまでも本当の女性よりはな。そこと比べると恐さは薄れるってだけで十分怖いのは怖い。
「じゃあさ、克服してみない?|――――男の娘で」
「.....は?」
「つまりさ、克服するにしてもいきなり女性からはハードルが高いだろ?そこでまずは男と女の中間的な男の娘から徐々に慣らしていけばもしかしたら女性も克服できるようになるかもしれないじゃん!だから逆にこっちから男の娘と仲良くなって体を慣れさせるんだ!」
「いや、でも男と女の中間と言いましたけど体感的には大分女性の方に寄っている気がするんですけど!」
「でも喋れるぐらいには大丈夫なんだろ?逆に考えてみなよ、男の娘と触れあえるチャンスなんてもう無いかもしれないよ?いやもう絶対無いね!それだったら女性恐怖症を治すチャンスはもう今しか無いんだよ!!」
そう、なのか?なんかそう言われるとそんな気もしてきたけれど。確かに治せるものなら女性恐怖症は治したい。それに、同じクラスにいる以上男の娘との接触は避けられないし、それだったらむしろ前向きに関わっていった方がいいのかも?
「オレが出来る限りサポートするから、な?」
どうしてこんなに那月がやる気満々なのかは分からないが、確かにこれが最後のチャンスなのかも知れない。サポートしてくれると言うことだし、とりあえずチャレンジしてみて駄目そうだったらその時はその時でもいいのかもしれない。
「分かった.....とりあえずは頑張って男の娘と仲良くしてみる」
「よっし!じゃあこれからよろしくな、灯夜!」
全く、その笑顔が可愛すぎて怖いんだっつうの。
「こちらこそよろしく、那月」
かくして俺と男の娘の学園生活は幕を開けたのだった。