12. 洗礼
「レーヴァさん、怒ってます?」
「いえ、マスター。どうもいたしませんよ」
「なんだか、口調が違うくない?」
「ダンカンとかいいましたね。早く始めましょうか」
「お、おお、おれはいいぞ」
レーヴァはそう言って、ダンカンさんをせかすように連れて行ってしまった。見たことはないが彼女は絶対怒っていたに違いない。
―-―――――
(ダンカン視点)
俺はダンカン、このスタットの街の冒険者ギルドで首席教官をやっている。これでも昔は迷宮都市で活躍しており、C級冒険者まで上り詰めたものだ。
年齢による体力の衰えを感じて引退してしまったがな。
後進を育てるってのも、悪くはない。俺に向いているようだ。
さっきは珍しく黒い少年に不覚をとってしまった。見たことのない下段の構えから俺の武器だけを狙ってくるなんて、なかなか予想外だった。
武器を弾かれ、思わず本気を出してしまい、すかさず蹴り飛ばしたものの、間に合わずこちらもわき腹にいい一撃をもらっちまった。新人に一撃をもらうなんてこれが、初めての経験だった。
マコトと言ったか、こいつは強くなる、その確信とともにお互いの健闘を称えていると姉ちゃんから声をかけられた。
「私の試験がまだですよね?」
その感情のこもっていない声に少し寒気を感じる。
20歳過ぎ、いやもしかするとまだ10代かもしれないが、その身を包む装備から明らかに騎士、もしくはそれに準じる者なんだろう。
あまり金持ちそうには見えなかったか、マコトはどこかの御曹司なのかもしれんな。俺も気を抜いてはいられないな。
向かい合って剣を構えてみると、その隙のない立ち姿が、この娘がかなりの達人であることが伝わってくる。
ふと手の甲に水が落ちる感触を感じる。汗?この俺が気圧されているのか……?
「マスターを足蹴にしましたね、あなた」
声に顔を上げると、無表情ながら娘の目に灯がともっているのが見える。
汗がさらにこみ上げてくる。足が震えてくる。
なんだこれは、迷宮都市でS級冒険者を見たときのような存在感、いや、もしかするとそれ以上
「(これはもはや死に相応しい)」
器用に俺だけに聞こえるように娘がしゃべる。
カタカタカタカタ……
着込んだ愛用の装備が音を立てる、足だけでなくもはや全身が震えている。
女が剣を握って構えに入ったとき。
「すいませんでしたーー!!参りました!!!」
気がつくと俺は地面に土下座を決めていた。
これは二度と関わってはいけない種類の人間だ。俺は二度とこの二人に手を出さないことを決めたのであった。
―-―――――
この日、スタットの冒険者ギルドに伝説ができた。「ギルド最強の教官を土下座させた新人現れる」
この日以降、スタットの冒険者ギルドで僕達に話しかけてくるのはタニアさん以外にはいなかった。
これが洗礼?
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なんとか更新・・・・・・
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