10. 今度こそ冒険者登録
「剣の頂点に位置する私の持ち主でもあるマスターは、全ての剣に愛されているだけでなく、剣の存在を引き上げることが出来ます。性能も足りず、十分に育っていない剣ではその負荷に耐えられないでしょう。マスターが使うべき剣は私が管理します。浮気はダメですよ」
「ワタシガ イシヲ モッタノモ アネサンノオカゲ。アネサン二 シタガウベキ」
手に持ったミスリル剣、セト(セトとは工房のドワーフ、ガンツさんというらしいの一族の名前から取って名付けることになった)がレーヴァをヨイショしている。
若干頭が痛いが、先程起こったことがようやくわかってきた。世の中にはインテリジェンスソードは数振りしかないらしく、今では家宝級から国宝級とのこと。ドワーフの寿命に比べると人間の寿命は短いので、死んだら返却という条件で貸し出しということで決着した。
レーヴァからは相当な金額の支払いがあったようで、ガンツさんにからは色々とおまけをつけてもらった、あまり重いものを装備すると動けなくなってしまうとのことで、チェーンメイルや軽量なすね当てなど、レーヴァとガンツさんの二人で厳選した装備をいくつか身につけている。特に僕がいま左手にしている守り手甲という魔法がかかっているらしい籠手はなかなか良いものであるらしい。
何にせよまずは剣が手に入った(そもそもレーヴァがいたはずなんだが)ことから、僕達は今は冒険者ギルドへと向かっている。
レーヴァにはナビ機能のようなものでもあるらしく、全く迷わずに僕の手を引いて街の中を進んでいく。
今のレーヴァは肌にピッタリと張り付いた鎧を着込み、腰には帯剣をしており、一介の騎士みたいな装いである。一方の僕は剣こそ立派なものの、そこらの人と大して変わらない布の服を着ており。彼氏彼女には思われるわけもなく。差し詰め騎士に連行される村人という感じだろうか……
着きました。
そこには剣と盾の模様の看板が門の上に掲げられた、立派な建物だった。
少しの緊張とともに門をあける。
そこには、冒険者という名の荒くれ者たちが……
いなく…………人っ子一人誰もいなかった。
まるで食堂のようにと食堂なんだろうが、テーブルと椅子がいくつも並べられた大きなホールにはビックリするくらい人がおらず、カウンターの向こうにすら人の気配がなかった。
「マスターこちらです」
横手にある階段のところからレーヴァが手を振っている。
「一般に冒険者ギルドの一階は食堂になってますが、この時間には誰もいないでしょうね。二階の施設はやっているはずです」
そう言ってレーヴァの後ろをついて階段を上がる。短めのスカートからは白い太ももが覗いており、しゃがめば下着が見えてしまいそうだ。彼女の正体を知っている僕でも目が釘付けなのに、普通の男であれば良からぬことを考えるかもしれない……
今日は他に人もいないのでいいとして、もう少し長目のスカートを履かせるようにしよう。
二階に上がってキョロキョロとしていると。
「冒険者登録の方ですか?」
カウンターの奥の方から声がかけられた。
「あ、はい」
「それでは、こちらへどうぞ」
お姉さんがカウンターの方まで移動するように促してくれる。
「こちらへは初めてですか?」
20歳半ばくらいか、落ち着いた雰囲気のメガネのよく似合うお姉さんが優しく声をかけてくれた。
「はい、どうしてわかるんですか?」
「ふふ、この時間に来られる方は大体そうなんですよ。それにお二人にはこれまでお会いしたことがないですしね」
たしかに……
お姉さんは冒険者ギルドについて色々と説明してくれた。冒険者には階級があり、基本的にはF級からスタートする。何故基本的かというと、冒険者になるに当たって最低限の実力があるかを見る実技試験がありその結果次第ではE級から始められるらしい。
クエストの受け方、報告の仕方、納品の方法、各種施設の使い方、冒険者割引のシステムなど、ひと通り教えてもらったが、最初に受付をした者がその後の担当になるようで、今後はタニアさんに聞いてもらったら良いとのこと。
「それではこちらの紙に記入していただいてよろしいでしょうか?」
残念ながら文字が読めないんだよな……その様子を見たのかタニアさんから
「代筆いたしましょうか?」
「いえ、私が書きますので」
レーヴァが重ねて喋る。そしてまた言葉が少し不機嫌そうに聞こえる。レーヴァは信じられないくらい美人なので好かれるのは正直嬉しいのだが嫉妬の対象は剣だけではないようだ……
最低限の相談を挟みつつうまくレーヴァが色々と記載してくれた。なにやら東の島国から来た設定のおのぼりさんという設定になったようだ。
東の国にいくと、日本人のような容姿の人間も多いらしく、いつかは訪問したみたいものである。
「それでは、実技試験に移りたいと思いますがいかがでしょうか?」
「はい、お願いします」
実技試験か一体どんな感じのものだろう……
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