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世界の果て  作者: 凪
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世界の果ての街

世界の果てを見たことありますか?


ある日、街中に張り出されるようになったチラシの一文だ。

誰が貼っているのか。いつ貼っているのかわからない。しかし誰もが一度は目にしたことがあるし、何より不思議なのは、色あせてボロボロになった物が貼られているのを見たものもいない。

大量に張り出されるようになったのは、今年の春先だっただろうか。

その前から街角に貼られていたこともある、というものもいるが、人々の目につくほどに大量に貼り出されるようになったのは、春の訪れを告げる大風が吹いた後なのだけは確かである。


世界の果てを見たことありますか?


この一文を見る度に、この街に暮らす人々は鼻で笑う。

誰が呼んだか、世界の果ての街、と呼ばれるこの街こそが、世界の果てと言って差支えがない、と。

国の首都からはるかに遠い辺境の街。街が背負う山の名前も、遥かな過去より世界の背骨と呼ばれている。

それは、この山こそが世界の果てに聳え立つものと信じられているからこそ、そう名付けられた言っても間違いはないだろう。

実際問題、この街は人間が暮らせる世界のどん詰まりである。

世界の背骨は山頂が雲に隠れるほどの高山で、その裾野に広がる森は鬱蒼と木々が生い茂り、多くの獣が暮らす異界である。街の人間が切り開けた開拓地は、精々川沿いの平野くらいであり、未だにその森や山には人の手は入っていない。

街に住み着く入植者の多くは、流れ着いた流民ばかりである。戦争で街を焼かれたもの。貧困から逃げてきたもの。飢饉で畑を失い、新たな土地を求めて彷徨い追いやられたもの。

住み着く人々の数は増えても、団結力のない難民しか集まらないから纏まらず、人々を動員して大規模な開拓ができるような体力も資金力も街にはなかった。

ここはどん詰まりだ。人生の底だ。救いもなく、それでも生きるためには、この世界の果てにしがみついて生きていかなければいけない。たとえこの土地が枯れ果てて、畑を作ることにすら苦労するとしても。

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