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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

作者: 文咲 鉱

きっと、ひとめぼれだった。




私があなたを好きになるなんて思ってもみなかった。


身長は私と10センチくらいしか差がなくて、

可愛い顔をしていて、

でも男の子っぽいところもある

1つ年上の先輩。


たまたま委員会の席で隣になって、

短い挨拶を交わして、

ちょっといい香りがして、

それで気がついたら委員会の話し合いの間ずっと、

私の意識は隣に向いてた。


あなたの仕草のひとつひとつが気になった。

あなたの書く文字が気になった。


でも横目で盗み見るしかできない私は、

先輩に話しかける勇気なんて出なかった。


学校の廊下ですれ違うとき、

私がどれだけドキドキしているかあなたは知らない。

あなたに出会ってから、

あなたを見る時間が増えた。

気がつくと目であなたを追っている。

さすがに自分でも先輩のことが好きだと

自覚せざるを得なかった。


授業中、ふとあなたの名前を書く。

それだけでなぜか嬉しくなった。

あなたが友達と笑い合っているのを見るだけで、

私の1日は華やいだ。





ある日、先輩が転校することになったと

職員室で聞いてしまった。


ああ、私の恋はこれで終わるのか。

絶望が押し寄せる。


いつまでもいると思っていた。

そんなはずはないのに。

先輩と出会えただけでよかった。

あなたに恋をした、それだけで幸せだった。





なんて、思えない。

今の私はもう先輩と出会ったときの私じゃない。

欲の深い人間になってしまった。

先輩のそばにずっといたい。

あなたの好きな人になりたい。


振られても構わない。

いつも自信なさげなあなたに伝えなくてはいけない。

あなたを好きなった人はここにいると。

あなたのすべてが好きなのだと。





放課後、

下駄箱に教室名と自分の苗字を書いたメモを入れ、

待ち合わせ場所の教室で私はひとり待つ。

もう随分暖かくなったのに、

手がどんどん冷えていく。

何回目かの台詞の練習が終わる途中

教室のドアが開いた。



先輩は私に向かって歩いてくる。

私が今、1km全力で走りましたと言わんばかりに

鼓動を高鳴らせているとも知らずに。


練習したはずなのに、言葉はうまく出てこない。

自分の自己紹介も忘れてただ一言、


「好きです。」


と言った。


先輩は、

……彼女は、驚きで目を見開いた。


告白する人を間違っていないか、

そう聞かれるだろうと思っていた。


でも彼女は


「私でいいの?」


それだけだった。


……それだけなの?

疑問に思わないの?

それに、私でいいの?って……


戸惑いながら、先輩の質問に答える。


「もちろん、先輩がいいんです。」


そう言った瞬間、

目頭が熱くなり涙がこぼれそうになって下を向く。

受け入れてくれたことが、たまらなく嬉しかった。


涙が少し引いたころ、先輩が私の下の名前を呼ぶ。


私は驚いて顔を上げる。


先輩は少しいたずらな笑みを浮かべて

私を見ていた。





恋のかたちはそれぞれです。


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