第7話 出会い7 高校2年・冬 side 颯太
夏は地区大会にインターハイ、そして三年生の引退で俺は副キャプテンになった。
キャプテンには翔がなって、二人で練習メニュー考えたりと忙しく過ごした。
秋は学祭や体育祭の準備に明け暮れ、いつの間にか日々が過ぎていた。
それでも、胸のモヤモヤが晴れた事はなかった。
鞠も俺の変化に気がついてるのか、これまで以上に甘えては誘って来た。
そんな鞠に少々うんざりして別れようかと考えたが、この気持ちを少しでも何とかしたくて鞠との関係を続いていた。
「颯太、今日のミーティング早く終わらせて一緒に食事しね?」
「その後約束あるから無理だわ」
「せっかく、ミーティング終わらせた後結衣と一緒に食事しようと思ったんだけど。じゃ、三人で行くか。」
「は?だから俺は、行けないって。」
「分かってるよ。結衣、今日は予備校だろ。大抵、予備校のあと吉岡さんと夕食してんだよ。だから、今日は俺も一緒にってこと。せっかく颯太もって思ったのによ。」
「おい。お前、性格悪いぞ。約束、断るから俺も行く。」
色々なイベントも終わり、やっと落ち着いた生活に戻ったある日、翔から突然彼女・吉岡さんと出会いのセッティングを言われ、鞠との約束を慌ててキャンセルした。
どうやら翔は吉岡さんは勿論、結衣にも怪しまれない様に自然な形で彼女に会わせてくれる様だった。
彼女と夕食ができると思ったら、遠足前の小学生か?と思う位落ち着きをなくしている自分がいた。
ミーティングが終わって翔と結衣の予備校まで行くと、終了時間よりも早く到着したみたいだった。
翔が結衣にメールを打っていると俺の携帯が鳴った。ーーー着信相手は鞠だった。
鞠と話す気になれず無視しようとしたが、明日何を言われるか分からない。
そっちの方が厄介だと思い直し、翔から離れ電話に出た。
鞠はドタキャンされた事で、俺が他の子と一緒にいないか疑っている様で電話をなかなか切ろうとしなかった。
はやく彼女に会いたいのに、鞠との無駄は話に少し苛つきだして、とりあえず明日会う約束して電話を切った。
やっと終わった鞠との電話から戻ると、結衣達は授業が終わって翔と一緒にいた。
結衣の少し距離をとって後ろで立っている彼女を見た瞬間、鞠との電話で苛ついた気持ちやこれまで居座り続けていたモヤモヤが吹き飛んだ。
その代わり、初めて彼女を見かけた時の様な形容し難い感情が沸き起こって来た。
自分自身の事なのに、どうしていいか分からなかった。
ただはっきり確信した事は、ここ数ヶ月ずっとあった気持ちは、やっぱり『彼女』が原因だと言う事。
『今の颯太は、彼女に会いたくてもどうにも出来ないって感じだし?』
以前翔に言われた事が、頭によぎった。
(俺・・・彼女に会いたかった・・・?)
それを自覚したと同時にもう一つの事まで自覚してしまった。
自覚してしまったら、急に顔が熱くなるのを感じて思わず片手で顔を覆った。
(やばい。俺、彼女・・・吉岡さんに惚れたんだ。)
短距離走後の様にドキドキしている心臓と赤くなった顔を落ち着かせるために深呼吸した。
徐々に落ち着いてきたのを感じて、翔達の所に合流するために歩き始めた。
※ ※ ※
正面に座った吉岡さんは、試合の時遠目で見て思ったよりも可愛かった。
いや、これまで遊んだ子の中には吉岡さんよりも可愛い子がいたかもしれない。
あんまり興味がなくて、全く覚えてないけど・・・
全体的に薄い色素は、父方の祖父がハーフだったためらしい。
大きくクリンとした眼は、ほんの少しだけタレていた。
フワリとした女の子の雰囲気があるが、話すと大人しいタイプというわけでなく程よく明るい。
というか、彼女の存在自体が俺のツボだった。
彼女の癖なのか、話す時相手の目をじっと見る。
そのせいで、彼女から話しかけられても思う様に話せないし、顔が緩みそうになってしまうため眉間に力を入れ、笑顔も引きつりそうになる。
気を抜いたら、ずっと彼女の顔を見つめてしまう自分がいる。
もっと近づきたいと思うのに、どうしていいか分からない。
これまで自分がどうやって女の子と接していたんだろう・・・
内心焦っていた時、彼女の携帯が鳴り出し彼女が席をたった。
上手くいかな自分に知らず嘆息する。
「な?俺の言う通りだったろ?お前あからさますぎる。見ててこっちが恥ずかしい。」
翔が笑いながら言った言葉に結衣も同意する。
「大丈夫?いつもの颯太じゃないよ。ここまで違うとこっちの調子まで狂うわ。陽菜の事そんなに気になってたの?」
「うるせー。いつもの俺ってやつを俺も知りたいわ!まじ、全然話せないし・・・」
自分でも思う様に出来ないことに焦れったさを感じていた。
結衣も、いつもと違う俺の行動の原因が陽菜にあることを気付いていた。
幼馴染みだから分かったんじゃなくて、普段の俺を少しでも知っている奴なら今の俺を見たら明らかに挙動不審に見えるだろう。
「こんな颯太みたら、これまでの子達がビックリするわね。まぁ、これまでの様に適当にしたら承知しないけど。」
ふと、結衣の言葉で彼女がこれまでの自分がしてきた事を知っているのかどうか気になった。
あんまり、いや、かなりこれまでの事を知られたくない。
できれば、彼女にはそんな噂など知らずに自分を見て欲しかった。
そして、電話の相手の事も気になり出した。
(もしかして彼氏とか・・・)
勝手な憶測だったが、彼女に彼氏がいたら・・・そう考えるだけで胸の中がどす黒い色に覆われた。
一度気になり出すと、確かめられずにはいられない。
結衣に聞くと、 少し意地悪そうな顔をしながら彼氏はいないじゃないかと答えた。
「ただねぇ、前にも言ったと思うけど陽菜に近づきたい男達は沢山いるからね。いつ彼氏が出来てもおかしくないかもね。」
結衣の言葉にまた俺の心にどうしようない焦りが沸き上がってくる。
たったこれだけの事で動揺している俺が可哀想になったのか、電話から戻って来た彼女に翔が彼氏の存在を確認してくれた。
翔と違って結衣は全面的に協力ってわけじゃなかったが、彼女の好みのタイプには興味があったのか、彼女に水を向ける。
彼女の男のタイプを黙って聞いていた俺は、『フェアな人』って言葉がイマイチ分からなかった。
結衣は、それを聞いて呆れていたから彼女がよく言う台詞なんだろう。
きっと俺が彼女と近づけるためには、この『フェアな人』がキーになると思った。
そんな重要な条件を聞き逃すわけにはいかない。
もっと詳しく聞きたくて彼女に聞くと、チラリと俺を見て気まずそうに語り出した。
なんで彼女が気まずそうに俺を見て話し出したのか、その内容を聞いて納得した。
それは、俺とは180度違ったからだ。
そして、そんな彼女の態度は俺のこれまでの行いを噂で知っているんだろう、という事も物語っていた。
徐々に顔が氷の様に固まっていくのが分かった。
翔が爆笑しながら俺の背中を叩くその痛みで、固まった顔が溶解していった。
きっと、俺がショックを受けて何の反応も出来ていない事に気付いたのだろう。
気を取り直しても、ショックは隠せないしきっと情けない表情をしていると思われる顔を見せたくなくて、不機嫌そうな顔を作った。
そんな俺に一生懸命フォローする彼女は、見ていて可愛かった。
でも、彼女のフォローははっきり言ってフォローになってなかった。
『私はダメってだけだから』
その言葉は、俺をどん底に落とすには十分だったのに翔がだめ押しの様に、核心を突いた質問をする。
それにのせられる様に彼女が墓穴を掘る。
これまでの自分の行いのせいなのだから、自業自得だが目の前が真っ暗になった。
(全然だめじゃん。何やってたんだ、俺は?過去を消去してぇ。)
急に彼女の視線に耐えきれなくなって、店を出るまで顔を背けて何も話す事が出来なくなった。
過去をどんなに悔やんでも仕方がない。
彼女にとって、俺は恋愛対象じゃないという事を告げられた様に聞こえて、その日はよく眠る事が出来なかった。
やっと陽菜に会うことができて、『好き』だと言う事を実感した颯太。
自覚した途端、恋愛対象外ということが判明。
初めての『本気』になれそうなのに、今までの様に上手くいかない。
さて、颯太はこれからどうするのでしょう?