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第6話 出会い6 高校2年・春 side 颯太


吉岡陽菜を見かけた日以来、ずっと胸がモヤモヤしたり、イライラしたり落ち着かない。加えていえば、彼女の事が忘れられない。

彼女について結衣に探りを入れたら、「吉岡陽菜よ。でも颯太、陽菜には変なことしないでよね。私、友達が泣くの見たくなし。」

と眼を細めながら牽制されてしまった。

仕方がないが、結衣の俺に対する異性関係の信用度は皆無と言っていい程ない。

信用が全くない俺に、なおも結衣の牽制は続いた。


「まぁ陽菜が可愛いのは分かるわよ。実際、予備校でも陽菜とお近づきになりたい男共が多いしね。」


その言葉に、なぜか苛立を感じつつ「お前じゃなくて?」と結衣に聞く。


「陽菜は男達の視線は私だと思ってるけど、実際は逆ね。気さくな子だから基本、誰とでも話すから寄ってくる男はいるんだけど・・・陽菜は意図的じゃないけどガードが固いのよ。だからね。そんな事全く気付いてない。颯太みたいなのは一番警戒されるんじゃない?だから、興味半分で近づいても無理よ。」


確かに結衣が言った通り、別に彼女じゃなくても相手に困ってるわけじゃない。

鞠だっている。

ただ、今も続いてるこの変な気持ちの正体が知りたい。

きっと彼女にこの気持ちの原因があると思った。

もう一度彼女・吉岡陽菜に会ったら分かる様な気がする。


だからって、欲望はしっかりとある。

むしろ強くなった?

鞠は相変わらず積極的に求めてくるし、他の子からの誘惑もあった。

ただ誰とヤッても下半身のすっきり感だけで、ずっと燻っているモヤモヤ感は晴れてくれない。

むしろ、ヤッてもヤッても、すればする程、物足りない感じが付いてまわる。

もし相手が彼女だったら?そう考えただけで、形容し難い感情が込み上げてくる。

込み上げてくる思いを何とかしたくて、また違う子を抱く。

そして、また言いようもない気持ちだけが胸に疼いて、彼女の事が頭に浮かぶ。

そして、彼女に会いたくなる。

こんな不毛なサイクルを繰り返し、気付くと今まで以上に派手に遊んでいた。


そんな俺を翔だけが嬉しそうに見ていた。

時々思い出した様に、吉岡陽菜の事を話題に持ち出してくる。

ある時、翔のベッドの上でゲームをしていた俺に聞いて来た。


「なぁ、今なら俺の気持ち少し分かるんじゃね?」


「お前の気持ち?って何時の?」


「結衣と付き合う前の俺。」


ゲームをしつつ翔を横目で見た後、中学の頃を思い出した。


※ ※ ※


翔は男の俺から見ても男気があって、バスケ部でも皆を纏めたりと頼りになった。

俺とは違って、少し太めの眉に奥二重で少し吊り上がった眼。

男の色気を感じさせる奴で、やっぱり学校でもモテていた。

中学三年にあがって、同じ幼馴染みの結衣と付き合い始めてから落ち着いたけど、それまで一緒に女遊びしていた。

俺と違って浮いた噂が回ってなかったのは、翔が結衣にバレない様に細心の注意を払って口の堅い子を選んでいたからだ。


翔は小さい頃から結衣一途だった。

そんな翔が結衣とは違う子とヤル様になった原因は、やっぱり結衣だった。

思春期真っ只中の健全な男子としては、性欲や興味もある。

そして、誘ってくる子も翔にはいた。

初めは断り続けていた翔が遊び始めたのは、中学二年の時結衣が一つ上の先輩と付き合う様になってからだ。

実は、どういう成り行きで翔と結衣が付き合い始めたのか知らないが、結衣との交際が始まってから翔の女遊びは止まった。


彼女が出来たからって、他の子との遊びを止めて一途になるって事が俺には理解出来なかった。

俺は同じ子ばかりだど、飽きてしまう。

その子との関係を続けようとするなら、別の子の刺激っていうのが必要だった。


「結衣って、遊ぶの止める程そんなにお前と相性いいの?」


翔が部屋遊びに来た時に聞いたことがある。

それまで読んでた雑誌を丸めると、翔は俺の頭を叩いた。


「バカか。相性じゃなくて、結衣だからいいんだよ。マジで好きな子とヤルと全然違う。これまでが何だった?って思うくらい」


翔が言う事は抽象的すぎて、俺にはやっぱり分からなかった。

どんな女の子ともする事は一緒なんだから、変わんねぇよ。

気持ち良いだけじゃん。

そう思いながら、俺も本気になれる奴に会ったら変わるのか?

ぼんやり考えながらタバコを銜えていた。


※ ※ ※


(今の俺が、あの時の翔の気持ちが分かる?・・・って、分っかんねぇよ。)


眉間に皺を寄せながら考え込む俺に翔が続ける。


「だから、結衣の事好きなのにその子は他の男と付き合ってて、俺は幼馴染みのポジションのまんま。何とかしたくても出来なくて、もどかしい。その気持ちをスッキリさせたくて、他の子で気晴らししようとしても、満足しない。」


「ど?この悪循環に身に覚えないか?多分ここ数ヶ月の颯太じゃないかと俺は思うんだけど。」


その言葉は意外だった。それじゃまるで俺が彼女に惚れてるみたいじゃないか。

俺が?まさか?

ちゃんと会って話した事もないし、遠くから少し見ただけの子を好きになる?


「あっりえね〜!俺が吉岡さんを好きってこと?ないない。」


「別に、俺は吉岡さんだって一言も言ってないけど?」


否定した俺に、翔はニヤリと笑った。


「やっぱりな。颯太が荒れる様になったのって吉岡さんが試合に見に来た位からだもんな。結衣に探り入れたりして、颯太が興味もった子って初めてじゃん?」


「だから、違うって言ってるだろ。吉岡さんは関係ないよ。」


本当は気になってたし胸のモヤモヤの原因は彼女だけど、それを認めたくなくて翔に嘘ついた。

翔は、俺の気持ちに対して何か確信めいたものを感じていたのか、吉岡さんの話を続けてきた。


「好きかは別にして、気になってんだろ?今の颯太は、彼女に会いたくてもどうにも出来ないって感じだし?一度彼女に会ってみる?」


「マジで?!」


突然の翔の提案に勢いよく反応してしまった。

いつの間に、翔との会話に集中していてゲームの事を忘れていた。画面を見るとゲームーオーバーの文字が映っていたことに、

気まずさを感じてテーブルの上においてあった飲みかけのコーヒーを一気に飲み干した。

苦みに少し眉を寄せたが、なぜかいつものモヤモヤが薄れていくのを感じた。




陽菜とは対照的に、颯太は陽菜に何かを感じている模様。

結衣には全く信用されてないけど、翔は颯太贔屓。

やっぱり男同士です。

今回は、少しだけ翔の過去話も登場です。

二人の話もいつか書けたら・・・

とりあえず、颯太と陽菜をなんとかしないとです。

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