第5話 出会い5 高校2年・春 side 颯太
・・・一瞬、体に衝撃が走った。すごく印象的な子だった。
『言葉が出ない』ってこういう事を言うんだなって無意識に感じてしまう程に・・・
試合前のセンターコートで翔とストレッチしていると、慶明館のメンバーの一人が二階スタンドの所に座ってる女生徒と話していた。
今日は、俺たち常陽にとってはアウェイ。
応援も慶明館の生徒が多いだろうと思っていたから別に気にもしなかった。
コートに座って前屈している俺の背中を後ろから押している翔が、結衣が慶明館の友達と試合を見るという話をしていた。
あんまり興味もなかったし試合に向けて意識を高めていたから、それに対して特に返事はしなかった。
「両方応援したいから。一方を応援したらフェアじゃないでしょ?今日は、見てるだけ。」
そんな声が聞こえて、自分のつま先を見てストレッチを続けていた視線を声の方に向けた。
さっきの慶明館のスタメンと話している子だった。
手を振っていた彼女は、全体的に細身で色素が薄いのか色が白かった。
髪の毛も茶色っぽかったが、人工的な違和感がなかった。
遠くて詳しい顔の造作は分からなかったけど、遠目でも分かる彼女の目はクルミの様にクリンと大きかった。
彼女を目にした時、全身に衝撃が走って呼吸が止まるかと思った。
思考回路が全部停止していたまま、翔に押され、かろうじてストレッチしていただけだった。
クリアに分からない彼女だったが、それでも印象的すぎた。
二階スタンドから結衣が名前を呼ぶ声が聞こえて、目をやると隣に彼女が座ってこっちを見ていた。
自然と目が彼女を観察しようと見ていた。
彼女はそんな俺に気付く事もなく、いつも周りの女から向けられるような視線もなかった。
平静を装って結衣に軽口を返したが、俺は彼女の視界に自分が入ったことで体中に甘い痺れを感じていた。
―― そう、それが彼女・吉岡陽菜が俺に与えた印象、いや衝撃だった。
陽菜を初めて見たときの颯太の第一印象です。
今回は少し話が短めになってしまいましたが
区切りが丁度良かったので・・・
次回はもう少し長くなるよう頑張ります。
minimoneでした。




