第3話 出会い3 高校2年・冬 side 陽菜
いつもの様に予備校帰りに少し遅めの夕食を結衣と食べようと表に出たら、結衣の彼氏・翔君が待っていた。
「あれ?今日ってミーティングって言ってなかった?」
「さっきメールしたけど見てない?ミーティング早く終わったから一緒に飯食おうと思って待ってた。」
結衣が首を傾げながら翔君に寄って行ったので、私は少し離れた所で二人を待っていた。
二人は少し話した後、翔君が私に声を掛けた。
「吉岡さんも、夕食一緒で大丈夫だよね?俺たちも、まだなんだ。」
あのバスケの応援以降、何回か翔君を交えてご飯を食べに行ったことあったから、特に迷いもせずにOKする。
(・・・ん? 俺たち・・・?)
その言葉に違和感を感じた時、後ろから聞き慣れない声が聞こえた。
「ごめん。待った?電話少し長くなってさ。」
合流して来たのは、背番号8番で二人の幼馴染みの『颯太』が立っていた。
とりあえず、近くのファミレスに入って四人で食事をすることになった。
ファミレスに入ると、それなりに込んでいたがなんとか席につく事が出来た。
結衣が窓際、私は通路側。結衣の前は翔君で、その隣は霜織君。
この席順は、当然といば当然だった。
(・・・当然なんだけど・・・えっと、なんか霜織君って話に聞いていたのと違うのかな?)
何て言うか、直接会って話した霜織君は思ったよりも静かだった。
三人の小さい頃の話とか、お互いの高校の話とか話してたんだけど、霜織君と目が合うと、それとなく逸らされる。
会話中は、以前見かけた様な軽い感じが出てるんだけど、私が話しかけると少しだけ眉を顰めて言葉がぎこちなくなる。
遊んでるって聞いたわりに結構普通ぽかった。
四人で話していると楽しくて夢中になっていると、ポケットに入れておいた携帯が鳴った。
着信相手がクラスメートからだと確認してから、皆に断りを入れて席を外した。
戻ってくるとすぐに翔君から、彼氏から?って聞かれたからクラスメートからだよ。と答えて席についた。
「そう言えば、私陽菜の好みのタイプとかって聞いてたこと無いかも。」
私の話ばっかりで狡いって結衣が詰め寄って来て、これは誤摩化しても追求されることを悟った。
正直に言って、好みのタイプって分からないから聞かれても困るっていうのがホントの所。
でも、外せない条件がある。
(・・・けどなぁ〜、本人を前にしては言いづらいっていうか、何だかなぁ・・・)
ちらっと、霜織君を見た後に結衣達を見ると、全員こっちを見てた。
仕方なく覚悟を決める。
これから言うことが相手の気分を害しません様に・・・と祈りつつ。
「好みの外見とかって言うのは、無いと思う。てか、好きになった人まだいないし。でも、フェアな人がいい。これは外せないかな。」
また陽菜の「フェア」がでたよ。と言いつつ食後のコーヒーを結衣が飲みながら呆れていた。
どうやらこれでこの話題も終わったな。って安心した所に
「フェアな人ってどういう意味?」
と霜織君に聞かれた。
(あ〜ぁ。せっかく誤摩化したのに、言いづらい人に聞き返されたな。)
霜織君を見ると思ったよりも真面目な顔をしたて見つめられ、
私は出来れば穏便にやり過ごしたいと思っていたけど、無理そうだった。
この場の雰囲気が悪くなる可能性はあるけど、もう霜織君とは会うこと無いかもしれないと思うと、
何となく、いっか。って、開き直った。
「 私は、好きな人には自分と同じ位気持ちを返して欲しいって思う。同時に別の人を好きになることは出来ないと思うし、相手にも自分だけを見て欲しい。まぁ気持ちなんて、計れるわけじゃないけどね。私にとって、それってフェアって思うわけ・・・ですよ。」
なんだか熱く語ってしまった自分が急に恥ずかしくなって、最後は変にゴニョゴニョと小声になってしまった。
恥ずかしさと霜織君に対する申し訳なさで、霜織君を見ていた目線を下を向けてしまった。
だって、私が今話した事って霜織君の批判みたいにも受け取れるから。
ブハハって豪快な吹き出し笑いの後に
「それって、颯太と全然真逆のタイプじゃん。まじウケる!」
その声に下げていた目線を翔くんにやると、霜織君の背中を叩いている翔君がいた。
ぶすりとしながら翔君の手を振り払う霜織君は、ほっとけよ。と一言言い返しただけで不機嫌そうになって顔を背けた。
思った通り霜織君の機嫌を損ねてしまって、私は慌ててフォローする。
「えっと。これって私の私見だし、女の子には霜織君みたいな人がタイプって人もいるよ。実際モテるって聞いてるし。ただ、私はダメ。って言ってるだけだから。」
一生懸命フォローしてたんだけど、何がツボなんだか翔君は増々爆笑して
「吉岡さん、追加攻撃してどうすんの?それ、全くフォローになってないから。ホント即死だから」
そう言いながら遂にテーブルに突っ伏して笑ってる。
結衣も、翔やめなよ。可哀想じゃん。と言いながら苦笑いして私を見ていた。
霜織君は背けてた元に戻して、テーブルに肩肘ついた手に顎を置きながら、今度は視線を合わせてくる。
「てことは吉岡さんは、俺の噂知ってるんだ?」
翔君に言われた通りフォローするどころか、自分で彼の噂を知っていながら熱く語ったことを暴露してしまったらしい。
自分の迂闊さに、呆れながら渋々頷く。
「うちの学校の子と付き合ってたとか、だよ。あっ、でも頭もいいって。私どうしてもK大行きたく予備校行ってるんだけど、
霜織君は合格圏内に入ってるって聞いたよ。すごいね。」
以前、模試の結果を見ながら結衣が話しているのを思い出して夢中でフォローを試みた。
「で、颯太が色々な子をとっかえひっかえしてるって?」
「うん。そう。それもサイクルが早いって。」
焦り過ぎて、翔君の質問にもフォローと同じ位必死になって頷きながら聞かれてもいないことまで話していた。
もう、ここまでくると人間どうでもよくなってくる・・・
これを魔のループと言わずになんて言うんだろう。
それからファミレスの席を立つまで霜織君は一度も目を合わせる事なく何も言わなくなった。
ファミレスから帰る時には、楽しかった気持ちもその楽しさが半減していた。
それから、霜織君と会うことはなかった。
初めのうちは、自分の失礼な物言いを気にして、その事を結衣に何度か聞いたが、結衣が気にしなくていいと言ってくれたので、いつの間にか彼のことを忘れて日々の生活を送っていった。
やっと陽菜と颯太の絡みです。
まったく陽菜は颯太の事を意識していない様子。
恋には程遠い感じですかね・・・
一方、颯太は?
次回は、颯太サイドです。