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第24話 彼女の性格 side 颯太

デスクの前に座って立ち上げたパソコンで週明け提出のレポートを書いていると、ポケットから振動を感じ携帯を取り出す。

無造作に携帯をみると翔からの着信を伝えていた。


『なぁ、次の週末あいてるか?せっかくだから結衣が皆でどっか行こうって』


俺が言葉を発する前に翔が話し始める。


「せっかくってどういう意味で?脈絡がないんだけど」


昔はよく遊んだりしたが、お互いに彼女が出来たりして三人で出掛ける機会は少なくなっていた。

しかもわざわざ事前に連絡してくるのも翔たちにしては珍しいうえ、一体何が『せっかく』なのか分からず、聞いた俺に少し呆れた翔の声が返って来た。


『はっ?来週、お前誕生日だろ?結衣が吉岡さん誘って祝おうって言ってたから、俺が颯太の予定を確認電話してんの。で、暇?』


そっか。そ〜いや来週って誕生日だったっけ?

気をきかせて、吉岡さんを誘ってくれるのはいいけど皆で集まるより、過ごせるなら吉岡さんと一緒に過ごしたい。

もちろん二人っきりで。


「あ〜それ、いいや」


『なんで? お前がいいならいいけど・・・じゃ、どっか行くか?』


吉岡さんを連れてくるって誘いを断った俺が不思議だったのか、翔が気遣わしげに聞いてくる。

きっと、俺が吉岡さんに嫌われる様な事をしたとか変な誤解してそうだった。

翔は、面倒見がよく察するってことが出来る奴だが時々変な方向に察する事がある。

このままでは誤解されたままになりそうだったので、翔たちの誘いを断った理由を言う。


「いや。俺が吉岡さん誘うから」


正しく俺の意図するところが分かったのか、翔はそれ以上言わずに「じゃ、別の日に改めて飲みにでも行こうぜ」と言って電話を切った。


翔との電話を終わらせると、すぐ吉岡さんに来週会えるかメールする。

さほど待つ事もなく吉岡さんから返ってきたOKのメールを見て、ついニヤついてしまった。

これで、誕生日に一緒に過ごすことができる。

意識が来週の事に向いてしまって、仕上げるはずのレポートがなかなか捗らない。


吉岡さんには、あえて誕生日ってことは言わなかった。

もし誕生日だって知ったら気を遣うに決まってる。これは、断言できる。

自分にとって、今まで誕生日なんてそれほど重要視しているわけではなかったし、その日を誰かと一緒に過ごしたいと思ったこともなかった。

だけど、今は自分が生まれた日を吉岡さんと一緒に過ごしたいと思った。

吉岡さんに何か特別にして欲しい訳でもない。

ただ横にいて幸せそうにしてくれるだけでいい。


ホント数年前の俺に見せてやりたいくらいだ。

彼女でもなければ、キスさえもしたことない、ただのお友達という俺と吉岡さんの関係。

女とは、すぐにエッチだった俺にとって、側に居て笑って欲しいと思っていること自体不思議に思う時がある。


女に自分から何かをしたいなんて思ったことはなかった。

なのに、吉岡さんが喜ぶなら、俺ができる事は何でもしたいと思う。


吉岡さんが幸せそうに笑ってくれる事は、俺の幸せに繋がってる。


歌なんかで、『君の幸せが僕の幸せ』なんてよく聞くフレーズを今まで「んなことあるわけねぇじゃん」ってバカにしてたけど、今ならその気持ちよく分かる。


彼女が幸せそうに笑ってくれるなら、それだけで嬉しい。

その側で一緒に笑って、彼女を笑わせるのが自分なら、もっと幸せだと思う。



 ※ ※ ※



「彩音ちゃんの事は解決できたん?」


講義が終わって、梶と二人夕食がてら居酒屋でビールを飲みながら、食べ物をつまんでいると梶が彩音の事を聞いてきた。


「んぁ?大丈夫。ちゃんと断ったよ。」


とっくに記憶の彼方になって彩音の事だったため、軽くいなす。


「それより、吉岡さんの方は?何もしてないだろうな?」


彩音の事よりも、吉岡さんの事を聞きたい。


「もちろん、ちゃんと家まで無事におくりましたよ〜それより吉岡さんの事がバレた途端、お前あからさまに俺に隠さなくなったな」


呆れた様に苦笑しながら梶は、ビールを飲む。


「別に吉岡さんのこと隠したいと思ってない。けどな〜まだ態度にはっきり出す時期じゃないんだよ。」


初めの頃に比べたら、だいぶ近づいたと思う。

徐々にメールの回数も増えてきているし、少しずつ好意を持ってもらっていると思う。

だけど、吉岡さんがもう少し意識してくれていると確信をしてから行動を起こしたい。

それまでは正直、友達として付き合いながら様子を見ているつもりだ。


「なぁ、吉岡さんとは実際どうなん?」


「どうって、どうもなってないよ。彼女は、俺のことただの友達としか思ってないよ」


実際友達なのだから仕方がないが、ただの「友達」と言葉にすると軽く凹んだ。


「そう」


自分から俺と吉岡さんの事聞いてきたのに、梶は少しニヤついてこっちを見ながら御座なりに答える。


「なんだよ。何か言いたそうな顔してっけど?」


凹んでいる俺をニヤついてみる梶が恨めしく思って、ムッとした声になる。


「別に。なんていうか、吉岡さんって自覚なしだよね。」


梶は全く異に介さず、そんな俺を無視して話を続ける。


「それっていい意味で?」


「う〜ん。両方かな?吉岡さんって、可愛いじゃん?」


無言で頷いて、梶の意見に同意する。

まじで彼女を可愛くないって言う奴がいたらお目にかかりたい。


「なのに、恋愛慣れしてないっていうか、駆け引きっていうのができないよね。このあいだの彩音ちゃんの事も全く気付いてないし、警戒心もない」


梶は吉岡さんと数回しか会ってないが、しっかりと彼女の事を見ていることに、感心しながら頷く。


「確かに。そうかもね。吉岡さんは、何にでも真面目なんだよ。駆け引きできないのっていいじゃん。素直で可愛い」


「そりゃ、そうだけど。もし彩音ちゃんが颯太の事諦めてなかったら、お前にとってややこしくなるんじゃねぇのって事」


彩音に関しては、ややこしくなる事は明らかに予想がついた。

だから先手を打った。

彩音の事は終わったことだと思っていたため梶の言う事に、いまいち納得出来なかった。


「第三者から見た方が分かる事もあるってことだよ。でも颯太は諦める気はないんだろ?」


クイっと梶の口元が片方あがる。


「当たり前だろ?俺、これでも片思い歴長いけど?」


「颯太は、陽菜ちゃんにマジ恋だもんな」


少しおどけて答える俺に、梶もそれに呼応するようにおどける。

これを合図に俺たちは話を他の話題に変え、遅くまで飲んだ。




minimoneです


3/16,117,118,119,21,22,23,24に拍手&コメントを下さった方ありがとうございます。


本当にお待たせしました。もう何も言う事ができません。

こんなに遅れているのに見放さず拍手と温かいコメントをいただけて嬉しさと申し訳なさで一杯です。

ちゃんと続けていくので、これからも宜しくお願いします。



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