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第18話 侮れない男 side 颯太

彼女と一緒にファミレスに行った日から数日が経った。

翔の浮気疑惑(途中まではしてるけど)は、なんとか事なきを得て別れずにすんでいる。

別れずにすんだ翔は本当に安心して何度も礼を言ってきた。


実は俺も翔達には感謝している。

翔達のお陰で二人きりで食事をする事が出来たから。

二人の事を話している時に、彼女が翔に対して好感を持っていることが端々で窺えた。

俺の中で少しだけ不安がよぎる。

――彼女は翔の事が好きなんじゃないか?

そんな事を思ってしまうと、どうしても彼女に確かめたくなる。

実際に確かめてみると、彼女は翔というよりも結衣と翔の二人に自分の理想を見ていただけだった。

思わず安堵の息が漏れる。


結衣から話し合いが終わったという報告が彼女にかかってきた。

携帯を彼女から受け取り結衣と話す。

二人このまま帰るため彼女を家に送り届ける様に言われた。

結衣に言われるまでもなく、こんな夜に一人で帰らせる訳がない。

彼女みたいな可愛い子が一人歩いていたら、変な奴らに絡まれるに決まっている。

そんな危険な事みすみす見過ごすなんて出来るか。

携帯を切ろうとした時、「変な気起こさないでちゃんと送ってよ。」としっかり釘を刺される。


結衣に言われるまでもなく変な気を起こすつもりは全くなかった。

彼女には、ゆっくりと進めていくつもりだし、今日は二人で食事をする事が出来たんだ。

それだけで俺にとっては十分満足いくものだった。

変に焦ってしまうと、これまでの一年半という時間が無意味になってしまう。


それにしても会計をする時、自分の分を払おうとする真面目さが、彼女らしくて胸が温かくなった。

これまで周りにいた女達は奢られるのが当然の様にしている奴が多かった。

金に困っている訳じゃないから奢る事に何も感じる事はなかったが、

彼女の様に真面目に自分の分を払おうとする姿を見ると、これまでの女達って奢られることが当然だと思っていたんだな。って思った。

反対に、彼女にはもっと甘えてもらいたいと思った。

別に金銭的な事だけじゃなくて、もっと頼って欲しいと思う。

彼女の性格からして、簡単に人に頼る様な事はしないだろうと思うが・・・

いつか彼女から頼られる様男になりたいと思う。それには、彼女にもっと信頼してもらわないと。


なんとか自分の分を払おうとする彼女に、以前した食事の約束以外の約束を取り付ける事で納得してくれた。

今回奢られて次に食事では彼女が奢る。

これって彼女の言うフェアってやつだろ?

俺的には全然フェアじゃないって事に彼女は気付いていないんだろうな。

この提案は彼女のフェアっていう考えを利用して、次に会う機会を作ったんだから。

そんな俺の思惑に気付かずに、彼女は家に帰る間ずっと楽しそうに話していた。


初めて行った彼女の家は、女の子が好みそうな外観をしていて新しくセキュリティーもしっかりしていた。

実家から通うことも可能な距離にある大学だったが、彼女は一人暮らしをしていた。

父親の海外赴任が決まり、彼女の大学に入学と同時に母親も父親の所へ行ったそうだ。

駅から彼女の家までは、そんなに遠くなかったけれど存外暗かった。

彼女と二人で歩きながら、やっぱり彼女を家まで送って良かったと思う。

彼女を送り届けた後の帰り道、これからもこうやって彼女を送るのが自分であればいいのに。と思った。


次の日大学で翔と会って、昨日の事を聞いた。

あの後、結衣にメチャメチャ説明して何とか許してもらおうとしたらしいが、

結衣は詳しい事を聞いた訳じゃないらしいが究極の所ヤッたか、ヤッてないかという所を確認したらしい。

あんなに避けていたのに、思ったよりもあっさり自分を許してくれて少し拍子抜けしたと言っている翔に、

彼女から昨日聞いた、翔の中学時代を結衣が知っているという事を教えた。

それまで結衣との関係が修復したと喜んでいた翔が、急に顔を強張らせたと思ったら急にどこかへ走りだしっていった。

恐らく結衣の所へ行ったんだと思うが、翔は自分の過去を結衣が知っていて、その事実と今回の事が一層結衣を傷つけたという事にすぐに気付いたみたいだった。

その後、二人がどんな話をしたのか分からない。

俺からその事を聞くわけでもないし翔も何も言わなかったが、二人はこれまでと何ら変わらず一緒にいる。

まぁ、当分の間エッチなしって言って落ち込んでたが仕方がないと思ったし、ぶっちゃけ笑ってしまった。

俺が知っている中で今回の事は、付き合い出して以来一番の危機だったと思う。

それでも変わらずにいる二人は、彼女の言う『お互いが同じだけ想い合い、想い返している』フェアな二人なんだろうな。



 ※ ※ ※



以前食堂で会った時に約束した食事について、 今度の金曜日が都合がいいというメールが彼女から来た。

すぐに横にいた梶に金曜日の予定を確認して、彼女にメールを送り返す。


「俺、かなりテンション上がるわ〜」


梶の言葉にチラリと目をやるが、気にせず梶は話を続ける。


「吉岡さんと一緒に食事出来るなんて、颯太が彼女と仲良くなってくて良かったよ。それに、吉岡さんと一緒にいた子も可愛かったし。」


「何、お前吉岡さん狙いなの?」


どうしても彼女に好意をもっているような言葉に敏感になる。

それが友達であっても、だ!

軽く不機嫌になった気持ちを隠し平気な顔して梶に聞く。


「いや。そうじゃないけど、可愛い子と食事出来るのは誰だって嬉しいだろ。お前だって、俺との食事と吉岡さんとの食事だったらどっちがいいよ?」


暢気に少しズレた質問返しをされた。

即答で吉岡さんを選ぶと答えた俺に、「だろ?」と梶が頷く。

どうやら梶は、可愛い子と食事できるのが嬉しいだけらしい。

彼女の事をそんな目で見て欲しくないが、本当に可愛いんだから仕方がない。

別に誰が彼女を気に入っていようと譲る気も負ける気もないが、なるべくなら友達とは女の趣味は被らないほうがいい。



 ※ ※ ※



お互いに夕方まで講義があるため、正門前で待ち合わせする事になっていた。

梶と待ち合わせ場所に行くと、まだ彼女たちは講義が終わってないらしく正門に来ていなかった。

二人で彼女達が来るのを待っていると、梶が徐に話しかけてきた。


「あのさー吉岡さんと一緒にいた子って大丈夫なん?」


時間を確認するために、時計に落としていた視線を梶に向ける。


「あ〜大丈夫なんじゃね?興味ないし。」


梶が言いたい事が分かった俺は、面倒臭いとばかりに答える。

彼女と一緒に来る彩音という女が、俺に好意を持っているんだろうと梶は言いたいらしい。

そのことは、この間一緒に昼を食べた時に気付いていた。

自意識過剰ってわけじゃないが、ある程度経験がある奴なら彼女の態度は分かりやすかったと思う。

実際、梶も気付いているから俺に聞いているのだろう。

・・・彼女は、気付いてなさそうだったけど・・・

あの後、ファミレスで俺のアドレスを彼女に教えようとして所をみると、

彩音っていう女は俺の事を気に入っているとか、彼女に余計な事を言ったんだすぐに分かった。

だからアドレスを教えることを拒否した。


というか、彼女だから教えただけであって別の女からの連絡なんていらねー

悪いけど、彩音という女には興味全くない。

クラコンで助けたのも、一緒に昼食を食べたのも、今日一緒に食事に行くのも、俺が吉岡さんと居たかったからだ。


「やっぱりね。どちらかと言えば吉岡さんに興味あるって感じだもんな、颯太は。」


にやりと笑い俺を見る。

彼女には好意をみせていると思うが(あんまり気付いてないけど)、梶の前では見せてないと思う。

確信があるのか、かまをかけているのか、いまいちはっきりしないが、なかなか鋭い洞察力を持っているらしい。

梶は意外に侮れない男だ。

自分の気持ちがバレているかもしれないと思うと気恥ずかしくなって梶から目を外し英文科の校舎がある方へ目をやると、彼女達がこちらに向かっているのが見えた。



minimoneです。


2/21,22に拍手を下さった方、コメントくださった方、誤字脱字を教えて下さった方有り難うございました。

皆さんに読んで頂けるか不安でしたが、拍手やコメントを頂ける度に本当に胸一杯になってます!


PS.

ここ最近、更新が遅れていてスミマセン。次はちゃんと更新したいと思います。


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