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第17話 色々な君 side 陽菜

今、私は霜織君ファミレスで二人きりで座っている。

向かいあう様に座った霜織君は、長い指で優雅にコーヒーカップを持ちコーヒーを飲んでいる。

その一連の動作を見ながら、まるで高級カフェにでもいる様な錯覚を起こしてしまいそうになる。

実際は、そんな優雅にコーヒーを飲んでる場合じゃないんだけど・・・・


どうして私と霜織君が二人きりでファミレスにいるかというと、時間は数時間前に遡る。

結衣と創作料理のお店にいるところに、翔君と一緒に合流した霜織君が二人を残して私とお店を出てきたから。

「一度二人でよく話せ」って結衣と翔君を残して霜織君がお店を後にしていくのを見て、

何かあったら連絡するように結衣に言うと慌てて彼と一緒にお店をでた。

結衣達の話し合いが終わるまで、近くで時間を潰して待っていようかと思っていた所で霜織君から誘われて一緒に連絡を待つ事になったってわけ。

ちょっとだけ恨みがましそうな顔をしてこっちを見ている結衣に、少しだけ申し訳ないと思ったけど・・・


創作料理をほとんど食べる事なくお店を出た私たちは、ファミレスで夕食を食べて今は連絡待ちの状態。

二人と別れて、今二時間は経ったかな?

そろそろどちらかから連絡が来てもいい頃かな・・・

そわそわして落ち着かない私に、霜織君は笑いながら「大丈夫だよ。」と言ってくれる。


「別れたりしないよね?」


今回の件に関して翔君側の事情を全く知らない私は、無いとは思っていても翔君が心変わりをしていないか確かめたくて霜織君に聞いた。


「翔は、別れるつもりなんてないよ。あいつは、本当に小さい頃から結衣一筋だから。それは、一番近くで見ている俺が保証する。」


自信を持って言う彼のその言葉に、安堵の息が漏れる。


「あのね、結衣本当の事を知るのが怖くて翔君と話したくなかったんだと思う・・・前の彼氏の事とか、

その・・・翔君って結衣と付き合う前、遊んでたって言ってたから・・・」


霜織君の目が少し大きくなった。


「もしかして結衣と付き合っている間も、他の子と遊んでたんじゃないかって・・・それを知るのが怖かったんだと思う。」


霜織君の言葉に安心出来ても、やっぱり翔君の昔の事を知ってしまった私は結衣と同じ様にもっとはっきりとした確信が持ちたくて霜織君に言う。

そんな私の言葉に、ずっと翔君を避けている結衣の態度に納得がいったのか一つ嘆息する。


「なるほどね・・・結衣知ってたのか。翔の名誉の為に話すけど、翔が昔遊んでたのは結衣に彼氏がいたからだし。

今回の事だって、俺から詳しいことは言わないけど、翔がすすんでやった事じゃないから。」


一緒に寝ていたという女の子について、完全否定しているわけじゃないのが少し気になったけど、霜織君が私の心配している事を再度否定して安心する。


「翔君、優しいしカッコイイもんね。他の子が好きになってもおかしくないよね。」


あんなに完璧と思える結衣でも、翔君が人気があるのに不安を感じていただろうな。

きっとモテる彼氏を持つとずっとこんな風に心配してないといけないなんて、付き合うのにも覚悟が必要みたい。

それもなかなか大変だなって考えていると、霜織君の声が聞こえた。


「吉岡さんって翔の事好きだったの?」


思いがけない質問に、彼をじっと見つめてしまった。


「カッコイイとか思うけど、恋愛対象じゃないよ。それに、私にとって二人って理想のカップルなんだよね。端から見てもお互い好きって分かる所とか。」


「フェアな二人ってこと?」


どうやら彼は、高校生の時に話した事をしっかりと覚えてらっしゃったみたい・・・ね・・・

そう言えば、あの時彼に対して失礼な事を言ってしまったことを、ちゃんと謝ってなかったことを思い出した。


「覚えていたんだね。えっとあの時はあんな失礼な事言ってゴメンナサイ。」


頭を下げて謝る私に霜織君は、気にしなくていいよ。って言ってくれた。


「実際あの時の俺って、救いようのない奴だったからね。謝ってくれる事は、少しはイメージ変わった?」


その言葉に素直に頷く。

私の彼に対する印象は、高校生の時とは全く違った。

というか、高校生の頃の事なんて忘れるくらいだった。


「うん。霜織君は、すごく素敵だと思う。私は、霜織君誠実な人だなって思う。」


色々聞く彼の噂と、クラコンで見た彼。そして、幼馴染みの二人のために一生懸命な彼。

最近彼と接する機会が増えて、色々な彼を見ているんじゃないかと思う。

今私の前にいる霜織君は信用出来ると思うし、自分の特別な人に対する誠実さが伝わる。

昔の彼は別として、今の彼に思われる人は幸せなんだろうなって思える。


霜織君は、満足そうな顔をしてこちらを見ている。

彼について考えていると突然『特別な人』で、思い出した事があった。

―――そう、携帯のアドレス

クラコンの時、彼に集まる女の子達に彼のアドレスは『特別な人』しか教えないって言っていたのを思い出した。

私が彼のアドレスを知っていて本当にいいのか、不安になってしまった。


「私、霜織君の携帯のアドレス教えてもらって良かったのかな?そのっ、あんまり人に教えてないみたいだったから・・・」


自分でもよく分からないけど、意識して『特別な人』って言うのを避けた。

私が何を言いたいのか、分かったらしい霜織君はアイドル顔負けの笑顔を向けてくる。


「勿論。吉岡さんは、特別だから教えるのは当然。本当は、もっと前からアドレス交換したかった位だよ。」


きっと他意はないんだろうけど、『特別』って言われて自分の顔が赤くなるのが分かった。

彼の言う『特別な人』って、本当に大切な人なんだって思ってたから、自分もその中の一人に入っていた事が、嬉しかった。


自分で思っていた以上に・・・


だって、体がフワフワ軽くなった気がする。

私どうしちゃったんだろう?

彼にとって『大事な幼馴染みの親友』ってこと何だろうけど、

それでも嬉しいと思えてる。

きっと、自分が『誰か』の『特別』になれる事が嬉しいだろうなぁ〜


「ご飯食べに行くって話、いつにする?」


きっと締まりのない顔をしていた私に、霜織君は思い出したかのように昼間の話を持ち出した。

突然かわった話題に、霜織君を好きだという彩音ちゃんの事を思い出した。

急に錘が付いた様にフワフワしていた気持ちが沈んだ気がした。


「私は大抵いつでもいいから、彩音ちゃん聞いてみないと・・・あの、霜織君のアドレス彩音ちゃんに教えてもいいかな?

日程合わせるのに、お互い連絡とれてた方がいいかなって・・・」


彩音ちゃんに応援を約束したからには協力をしようと思ったから、霜織君にアドレスを教えていいか聞いてみるけど、心が暗くなってくる。


「別に、彼女に教えなくてもいいんじゃない?連絡は、俺と吉岡さんがとればいい訳だし。」


彼の言葉に暗くなった心が少しだけ明るくなることに後ろめたさを感じながらも、断ってくれた事にホッとしている自分がいた。



※ ※ ※



結衣から連絡がきたのは、ドリンクバーで二回目の紅茶を飲み終わった時だった。

翔君との話は終わったらしい。

別れる事はないって霜織君が言っていた通りになったみたい。

このまま二人で家に帰るという事だったし、詳しい事は大学で会った時にって言われた。

二人が別れない事に安堵していると、結衣に霜織君に替わって欲しいと言われ、彼に携帯を渡す。

結衣と話していた霜織君は、何度が頷きながら「大丈夫だって」と苦笑しながら話を終わらせ、携帯を返してきた。


「あの二人は、上手くいったみたいだから俺たちも帰ろうか?」


テーブルにある伝票を持ってレジへと歩き始めた。

自分の分を払おうとする私に笑顔で制される。


「ここは俺に払わせて?」


理由もなく他人に御馳走になるのは気が引けるから彼の言葉に、なおも言い募ろうとする。


「今日は吉岡さんと話せて俺嬉しかったんだよ。だから払いたいんだ。そんなに気にするなら、また別の時に奢ってくれる?」


勿論、今度の食事とは別で。と爽やかに言われると断れなくなる。

これって少なくともあと2回は彼に会えるって事だよね。

そう考えると、今日は御馳走になってもいいかな?って思ってしまう。


私、断りたくなかったのかな・・・?


家まで送ってくれると言ってくれた霜織君の言葉に甘えて、送ってもらった。

ここから2駅先が私の最寄り駅。そこから歩いて15分程歩くと家に着く。

街灯が全くないわけじゃないけど夜遅くなると人通りが極端に減ってしまうため、なるべく早めに家に戻ってくる様にしている。


慣れている駅からの道のりが、今日はやけに早く感じる。

それはきっと霜織君のおかげだと思う。

彼が纏う雰囲気に私は、心地よさを感じている。

まるっきり気負う事なく話す事が出来るし、彼の話す話は退屈なんて感じさせない。

色々な事に興味があるのか、他愛もない会話の中にも知的さを感じさせる。

会う度に色んな面を持っている彼に興味を引かれる。


最初は、他校でも女の子とイチャつく軽い所。

次に会った時は、軽そうな雰囲気だけど案外普通っぽい所。

入学式では、サークルの勧誘から助けてくれた男らしい所。

昨日は、『特別な人』を大切にしている真面目な所。

今日は、幼馴染みを何とかしようとする、友達のために一生懸命になれる所と、話題に事欠かない博識な所。


あとどの位私の知らない彼がいるんだろう?

家まで送ってもらった後でも、彼の事が頭から離れなかった。

こんなに興味を引かれる人はこれまでいなかった。

もっと彼を知りたいと思っている自分がなぜだか恥ずかしくなってしまった。

ーーー 私、どうしちゃったんだろう・・・?



minimoneです。


2/18、19、20に拍手を下さった方、コメントくださった方本当に有り難うございます。

皆さんに読んで頂けるだけでも嬉しいのに拍手やコメントまで頂けるなんて、本当に幸せです!!

颯太の頑張りで、やっと陽菜も颯太に興味をもってくれるようになりました。翔&結衣の問題も解決し、次は颯太&陽菜です。

また続きを読んで貰えると嬉しです。


PS. 

コメントを頂いた方のお名前を出すか迷いましたが、今回は控えさせて頂きました。

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