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第16話 企みと相談 side 陽菜

翔君の浮気発覚(本当の所は分からないけど)から二日経った。

結衣もだいぶ落ち着いてきて、そろそろ翔君と話し合ってもいい様な気がする。

毎日の様に翔君から結衣の携帯にはメールや電話があるみたいだけど、一度も結衣が応えることはなかった。

きっと、結衣は真実を翔君から聞くのが怖かったんだと思う。

今日の朝ずっと泊まっていた結衣は、朝食を摂っている時に家に帰ると言った。


結衣がこの二日間、眠れず泣いている事を知っていた。

だって朝起きてくる結衣の目は、いつも赤くなっていたから・・・

最初の頃みたいな気持ちの昂りは落ち着いて一人で家に戻る事を決めた結衣だけど、

結衣からは翔君に連絡しないような気がした。

もちろん、翔君からの連絡に応対するとも今の結衣からは考えられなかった。

だからって、私が出しゃばるのも違う気がしなくもない・・・

どうすればいいんだろう・・・?


 ※ ※ ※


学食のテラス側に彩音ちゃんと座っていた私は、結衣の事を考えていた。

前に座っている彩音ちゃんは、持ってきている雑誌を読んで春の日差しを楽しんでいる。


「隣いいかな?」


その言葉に振り返えると、Aランチを持った霜織君と彼の友達の二人が立っていた。

霜織君と一緒にいたのは、この間のクラコンにもいた人で名前は梶君だったと思う。

一緒に地元話をした一人で、すごく気さくな人だった。

中学・高校と野球をしていたという彼の肌は少し焼けていて、白い歯が似合う爽やかスポーツマンって感じ。

本人曰く、日焼けはこれでも良くなった方らしいけど。

霜織君は返事も聞かずに隣に座ると、「この間は、無事に家に帰り着いて良かったよ。」と言いながらこちらを見てくる。


「あのっ、この前は酔っている所を運んでくれたって聞いて・・・あっ、あ、ありがとうございました。」


いつの間にか読んでいる雑誌を閉じた彩音ちゃんは霜織君にお礼を言った。

お礼を言われた霜織君は彩音ちゃんに顔を向ける。


「あー、だいぶ酔っていたみたいだったけど次の日大丈夫だった?二日酔いとか。」


彩音ちゃんは、近くで霜織君をみているためか顔を赤くしている。

近くで見る霜織君はやっぱり整った顔をしている。

そんな彼に気遣わしげな顔で尋ねられたら、誰だった緊張もするよね。

彩音ちゃんはコクコクと赤くなったままの顔で頷く。

彩音ちゃんの隣に座っていた梶君が彩音ちゃんと話し出すと、霜織君が顔を近づけてきた。

そして、声を潜めて話し出す。


「吉岡さん、結衣の事ありがとうね。どう?あいつ落ち着いた?」


かっ、顔が近いよ!

こっ、声がダイレクトに私の耳に届く!

耳元で聞こえる彼の声に、心臓が意味なくドキドキする。

いくら他の人に聞かれたくなくても、こんな近くに男の人が接近することに慣れていないから意識してしまう。

それでも、話の内容が結衣の事だったから、無理矢理緊張して早鐘を打っている心臓を落ち着ける。


「うん。夜はあんまり眠る事できないみたいだけど、最初の頃より落ち着いてきたよ。今日は家に帰るって言ってたけど、翔君に自分からは連絡とらないと思うんだよね。でも、どうしたらいいか分からなくて・・・」


「だよな〜」


少し思案顔していた霜織君がまた顔を近づけてくる。


「吉岡さん、ちょっと協力してもらってもいいかな。今日結衣を食事に誘ってくれない?で、店決まったらメールして。俺、翔を連れて来るから。」


こういうのは、苦手なんだけどなぁ、と言う霜織君に、恋愛に関してほとんど経験のない私は肯定の意味で頷く。

このままだと、事態は一向に解決しないと思っている私たちは、二人を会わせることにした。

二人が上手くいくか分からないけど、きっかけになると思う。


「おい。二人で何コソコソ話してるんだよ。」


あんまり他人には聞かれちゃいけない様な内容だったから、自然と二人で近寄って声を抑えて話していた私たちに梶君が話しかけてきた。


「別に。この前、吉岡さんにお世話になったからお礼しようと思って、その事話してただけだよ。」


素知らぬ顔して会話を逸らした霜織君の話に、彩音ちゃんが霜織君に話しかけた。


「私も、霜織君にお世話になったからお礼したいです。」


「じゃー今度一緒に食事にでも行こうか?俺は吉岡さんにお礼したいし、俺もそこで食事をお礼してもらうってのはどう?」


霜織君の言葉に、彩音ちゃんは頬を赤くして、可愛らしい笑顔を見せている。


(――ん?・・・もしかして、彩音ちゃんって・・・)


彩音ちゃんを見ていると、どうも霜織君がカッコイイから赤くなっているわけじゃないような気がした。

もしかして、彩音ちゃんは霜織君の事が好きなのかな?


「俺も、その食事参加したい。いいよね、吉岡さん?」


笑顔で梶君が肩肘をついたままの状態で手を挙げて、参加の意思を表してくる。

彩音ちゃんと霜織君で、どんどん話が進められているのをポケっと見ていた私は少し反応が遅れる。


「いいけど、お前は自腹だからな。」


私が反応する前に、霜織君がすぐさま梶君に言い返すと、「えー」と言いながらも了承する梶君。

結局、四人で行く事が決まったあと食事が終わった霜織君達と別れた。


「陽菜ちゃんって、霜織君と知り合いなの?」


突然の彩音ちゃんの質問に、何て答えたらいいのか分からなくてジッと見つめてしまう。

結衣と幼馴染みで面識はあったし、今は結衣との事で話しているから知り合いだと思うけど結衣達の事を話さずに、

それを説明するのは難しい。


「なんだか仲良さそうに見えたから・・・そうなのかなって・・・」


私の様子を窺う様に彩音ちゃんが聞いてくる。


「別に仲が良いわけじゃないよ。私の親友の幼馴染みで顔見知りってだけ。あまり話したことないし。」


頭の中で色々説明の言葉が浮かんできたけど、結局簡単な説明になってしまった。

彩音ちゃんは、ほんの少しだけ顔色が変わった様な気がするけど、すぐに元通りの彼女に戻ったから気のせいかな。


「あのね、陽菜ちゃん。もう気付いているかもしれないけど、私霜織君の事好きなの。もし知り合いなら、陽菜ちゃん応援してくれる?」


食堂で一緒にいた時に、もしかしたら?って思っていた事を本人に打ち明けられて、少し驚いた。

『応援してくれる?』って言われても、あんまり応援出来る様な事は無い気がしたけど、彩音ちゃんの縋る様な目に思わず頷いていた。

講義室へ向かう間、彩音ちゃんは色々と霜織くんについて聞いてきた。

でも、私が知っている事なんてほんとに少ししかなくて、ほとんど答える事が出来なかった。


講義室の席に着いてすぐに夕食のお誘いメールを結衣に送ると、すぐに承諾のメールが来た。

講義が終わると待ち合わせの正門前で結衣と合流して、そのまま結衣の家の近くにある創作ダイニングのお店に行く事にした。

お店の場所と名前をメールで霜織君に送ると、一時間後位には翔君を連れてお店にくるというメールが返ってきた。


案内された席に通され、二人ともビールを頼む。

結衣をこっそり窺うと、落ち着いている様で美味しそうにビールを飲んでいる。

これなら翔君とも話し合いできると思う。

結衣の様子に一安心すると、霜織君達がお店に到着するまでゆっくりと夕食を堪能する事にした。

そういえば、と何かを思い出した様に結衣が私に意味あり顔をこっちに向けてくる。


「ここ数日余裕がなくて聞かなかったけど、いつの間に颯太と連絡とるようになったの?」


霜織君アドレス交換していることを結衣が聞いてきた。

意味ありげに私を見る結衣に、アドレスを交換する事になった経緯を話した。

その流れで今日彩音ちゃんから「霜織君との事を応援して」と頼まれたことも一緒に話した。


「それは・・・少し、厄介かもね・・・」


結衣は軽く眉を顰めて言う。


「そうだよね。私も、そんなに仲良くないから手伝える事なんてないと思うんだけど・・・霜織君、好きな人いるって有名だもんね。」


結衣が『厄介』といった意味が、霜織君には好きな人がいるとことを指すと思った私は、一緒になって唸る。


「いや、それだけじゃなくて・・・彩音って子・・・」


???

言い淀む結衣が何を言いたいのか、さっぱり分からなくて首を傾げる。

少し思案顔をした結衣が私に声をかけようと顔を上げたまま硬直しているのに気付いて、後ろを振り向くと霜織君と翔君が歩いてこっちに来ていた。


「よぉ、結衣久しぶりだな。」


何事もなかった様に霜織君が話しかける。

その言葉で、固まっていた結衣が正気に戻って、立ち上がってお店を出ようとする。


「まだ料理きたばっかだろ?せっかくだから、一緒に食べようぜ。」


霜織君と翔君の横を通り抜けようとした結衣の腕をつかんだ霜織君は、結衣をそのままテーブルに戻し私の隣に座らせると、翔君と二人で席に着く。

以前四人でファミレスに行った時と同じテーブル席になっていた。

ただ、その時とは全く違って、緊張感のある雰囲気が私たちを包んでいたけど・・・



minimoneです。


2/16、17日に拍手を下さった方有り難うございます。

続きが読みたいと思ってもらえる様に頑張ります。

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