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第13話 アフェア? side 陽菜


私は今悩んでいる。

じっと携帯の液晶を眺めること数十分・・・未だにメールの送信ボタンを押せない。

送信先は、霜織君。

幹事の霜織君は、酔っぱらっている彩音ちゃんをタクシーに乗せるまで支えてくれてうえに心配してくれた。

やっぱり昨日のお礼と無事に帰り着いた事を伝えた方が良いだろうと思ってメールを打ったんだけど、送信しようと思った時に少し迷ってしまった。


だって、昨日色々な女の子達からメアドを聞かれて断っている所を知っているから。

「特別な人だけ」って霜織君は言ってた。

それを思い出したら、なんだかメールを送ることが気が引ける。

アドレスを特別な人にしか教えない霜織君は、幹事ってことで交換したしてくれたけど、やっぱり仲良くない子からメールが来るのは良い気がしないかもしれない。


そこまで思い至ってメールを送信するべきかを私はこの数十分悩んでいた。


(他の女の子からメールがきて、特別な人から誤解されたくないよね。でも、何も連絡しないのも失礼だし・・・)


やっぱり人としてお礼はちゃんとするべきだと決心して、ボタンを押す。

液晶にすぐ「送信終了」の文字が浮かんだ。

送信してしまえば、今まで悩んでいた事が嘘みたいに気持ちが軽くなった。

すんでしまった事は、後悔しても始まらないしね。



 ※ ※ ※



朝目が覚めた彩音ちゃんは、午後からバイトがあるからと一緒にブランチして帰っていった。

ご飯を食べながら、タクシーまで結衣を支えるのを手伝ってくれたのが霜織君だと分かると、彩音ちゃんは「お礼が言いたい」って言ってた。

少し赤くなっている彩音ちゃんは、よっぽど酔った姿を霜織君に見られたのが恥ずかしかったらしい。

もし私が同じ立場でも、酔っぱらった姿を親しくない人に見られるのは恥ずかしいと感じるんだから、私より女の子らしい彩音ちゃんにはもっと恥ずかしいはず。

お礼が言いたいと言っていた彩音ちゃんに、霜織君の連絡先を聞いた事を話そうか迷ったけど、霜織君自身が簡単に教えていない連絡先を勝手に教えるのも悪いかなって思って黙ってた。

私自身も、きっと今回限りで霜織君と連絡をとる事もないだろう。


彩音ちゃんが帰った後、何をして過ごそうかと外を見ると、気持ちのいい風と温かい太陽、小春日和って感じだった。

こんな日は私にとって洗濯日和。

私は、洗濯するのが大好き。

洗濯物を取り込んだ後のお日様の匂いと柔軟剤の香り。それに囲まれるだけで、幸せになれる。

ベッドシーツや掛け布団のシーツを外し、洗濯機に入れる。

洗濯機がまわっている間、布団をベランダに干して部屋の掃除をする。

なんとか一通りの事が落着いた頃、携帯の着信音が聞こえた。

携帯に出てみると、相手は結衣からだった。


「陽菜?結衣。これから時間ある?会えない?」


「今、洗濯物干してるからそれ取り込んだら大丈夫だよ」


いつもは比較的落ち着いている結衣が、少し興奮しつつ矢継ぎ早に話している事にビックリしながら答える。

結衣と三時に近くのカフェで待ち合わせする約束をして携帯を切ると、急いで出掛ける準備にとりかかった。



※ ※ ※



待ち合わせのカフェに入ると、すでに結衣が来ていた。

結衣の座っているテーブルに近づく。

話しかけようとした時、結衣を見て固まってしまった。

だって、結衣が泣き腫らしたような顔をしていたから・・・

さっきのいつもの結衣らしくない電話と泣き腫らした顔を見て、なんとなく嫌な予感がした。

オーダーをとりにきた店員に紅茶を頼んで、二人になった所で口を開く。


「どうしたの?ここに来るまで泣いてたの?」


私の質問に結衣は何も答えず、黙ったまま下を向いている。

無理に聞き出す事はせずに、結衣が話し出すまで待つ事にした。

何も言わない結衣だけど、肩が少し震えて時々鼻を啜る音が聞こえるから泣いている事だけは分かった。

結衣が泣くなんて、めったにある事じゃない。なんとなく翔君が関係しているんだろう思う。

結衣が泣く理由なんて、翔君の事以外思いつかなから。


オーダーした紅茶を店員が運んできた後、結衣が静かに話し出した。


「翔が浮気してた。・・・私、翔と別れるかも・・・」


結衣の話に反応する事が出来なかった私に気にせず、結衣は話し続ける。


「昨日、私実家に帰ってたんだけど、今日は翔と出掛ける予定だったから実家からそのまま翔の部屋に行ったの。そしたら、ベッドで翔と女の子が一緒に抱き合って寝てた。」


結衣が話している事が信じられなかった。

だって、結衣と一緒にいる翔君は本当に結衣の事が好きなんだな。って思える程結衣を大事にしている事が私から見ても明らかに分かっていたから・・・

浮気なんてないと思ってた。


「本当に、浮気したのか翔君に確認したの?」


私の言葉に首を横に振る結衣。


「翔から直接話は聞いてない。あの場を見て、すぐに家を出て行ったから・・・」


「じゃあ、本人に確かめた方が良くない?翔君から連絡ないの?」


「分かんない。陽菜に連絡とった時以外携帯の電源、切っているから・・・だけど、今は翔の言い訳聞きたくない・・・」


結衣は、静かに泣いている。

私には恋愛経験がないから、こんな場合なんて声を掛けていいか分からない。

ただ、こんな状態の結衣を一人にする事はできない。


「今日、うちに泊まる?気持ちが落ち着くまで、一緒にいよう?」


力なく結衣が笑って頷いてくれる。トイレで顔を洗って来るといって席を立つ結衣を見送くると、私の携帯に霜織君からメールがきた。


『昨日は無事に帰れて良かったです。ちゃんと帰れたか心配だったから連絡貰えて安心しました。ところで、今って一人でいるの?』


霜織君が結衣と翔君の事を知っているか分からなかったから、無難に結衣と一緒にカフェにいることだけメールで伝えると、すぐに電話がかかってきた。


「吉岡さん?霜織だけど、結衣と一緒にいるって本当?」


「うん。昼頃、連絡もらって一緒にいるよ。」


「そっか。あのさ俺、今翔と一緒にいるんだけど結衣、吉岡さんに何か言ってた?」


「・・・うん。その、翔君が浮気してたって・・・言って、別れるかも・・・って」


私の言葉に霜織君は嘆息した。


「翔が結衣と話したいって言ってるんだけど、結衣の携帯繋がらないし・・・結衣に替わってもらえるかな?」


霜織君の頼みに少し考えてしまう。今結衣はいない。

翔君と話すのは、結衣に聞いてみてからの方がいい様な気がした。


「今、結衣席を外しているから戻ってきてから聞いてみるね。一度電話切っていいかな?また後で連絡から。多分急に翔君と話せって言っても、結衣気持ちが追いつかないかもしれないし・・・」


そう言って、電話を切ろうとしたら霜織君から呼び止められ、手を止めた私に電話口から翔君の声が聞こえた。


「吉岡さん!結衣とどうしても話したいんだ。吉岡さんからも結衣に言ってもらえないかな?!」


「うん。私も、翔君と話した方がいいと思うから結衣に言っておくね。」


「ごめん。あと、結衣の事宜しく。」


「大丈夫。結衣の事は任せて。」


翔君は、一言「ありがとう」と言って電話を切った。

あんなに翔君の焦った様子は、今まで知らなかった。

その事で、やっぱり翔君は結衣の事を一番に思っていること感じられて、安堵する。


洗面所の方に目をやると、遠くに結衣が歩いているのが見えた。

戻ってきた結衣は、「すごい顔になっててビックした」と照れ笑いして席に着く。

少し落ち着いた結衣に霜織君から連絡があって、翔君が話たいということを伝えると、結衣は、顔を曇らせて翔君と連絡を取るのを拒んだ。

そのこと結衣の様子を知らせるために霜織君にメールした。


『結衣に翔君の事言いました。まだ、翔君と話す事が出来ないです。今日は、私の家に泊まるので、結衣がもう少し落ち着いてからの方がいいみたいです。』


『分かった。今日はそっとしておこう。また明日連絡するよ。』


霜織君からすぐに返信が来た。

携帯を閉じると、私と結衣はそのままカフェを出て家に戻ることにした。




拍手を下さった有り難うございます。

細々と続けているこの小説を読んで頂けて本当に嬉しかったです!!これからも、少しでも楽しんでもらえる様に頑張ります。


メイン二人を差し置いて、ピンチなのは幼馴染みカップルの二人。

サブタイトルもそのまんま「AffAIR=浮気」です。




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