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第12話 思いがけない言葉と神様からのご褒美 side 颯太


入学して一ヶ月がたってしまった。

同じ大学に入ったと言っても、彼女と仲良くなる事はなく、学科も違う広いキャンパスで偶然出会うなんて事はそうそう簡単にはない。

そんな、出会う事もままならないのに彼女の噂は俺の耳に入ってくる。


―――彼女は俺が思っていた以上に可愛いと男達の間で噂になっていた。


惚れた欲目を引いても、彼女は可愛いらしい。

俺にとっては、不安になるだけで嬉しくも何ともない噂だ。

正直、今かなり焦っている。

翔達に頼んでみようととも考えたが、きっと彼女は結衣とばかり話すだろう。

それでは意味がない。少しでも個人的に打ち解けたい。


何か良い案はないかと考えていた時、クラスメートからクラコンに誘われた。

新入生代表をしたせいか、毎日懲りずに俺は女に囲まれることが多い。

昔の俺だったら、言い寄ってくる女を片っ端から受け入れていたと思う。

だけど、彼女に出会って以来どんな女に誘われても何とも思わない。


自分で禁欲(?)を決意した時、少し無謀かと思ったが、そんな事は杞憂だった。

どんな女ともヤリたいなんて思わなくて、大学入学後も女からの誘惑も軽く受け流していた。

それでも、懲りずにやって来るから本当に疲れる。

仲良くなりたい子とは上手くいかなくて、どうでもいい女ばかりやって来る?

世の中本当に思う様にいかない。



でも今日は違った。

俺を誘っているクラスの女の話を聞いていた英文科の子が、英文科でもクラコンが来週に開かれると言って俺を誘ってきた。

この誘いで、俺は閃いたんだ。彼女に会える方法を。


――― そう、合同クラスコンパ


クラスの女達は少し渋っていたが、そこは以前培ったトーク術と幹事をすることを引き受けることで合同コンパを実現させた。


いつもはこんな行事には参加しないが、彼女と接点を持てるなら面倒なんてちっとも思わない。

店を決めるのも、予約を取るのも積極的に動いた。

もちろん彼女の好みの店を結衣から聞いて、それに添うような店を探した。

同じ学部の男達も彼女(吉岡さん)と一緒に飲めると聞いて、クラコンの参加率が高かったし、彼女を誘って抜けれるかも、なんて話をしていた。


悪いが他の男に何て彼女を取られるなんて間抜けなことはしない。

この一年半ずっと彼女を想ってきたんだ。

絶対に、彼女とお近づきになるんだ。


※ ※ ※


そう思って気合いを入れていたのに・・・

―――・・・クラコン当日俺の期待を余所に、楽しそうに周りの男とクラスの女達と仲良く話す彼女を、俺は遠くはなれた席が見ていた。

まぁ、俺の周りに女が集まるのは予想出来たが彼女の席の近くに座る事は出来る自信はあった。

現実は、そう甘くなかった。

友達と少し遅れてきた彼女は、俺に見向きもしない空いた席に座った。


彼女がクラコンに遅れてこなかったら・・・悔やまれてならない。


本当だったら一緒に盛り上がっていたのは自分かもしれないと思うと、今の状況が空しくなってきた。

俺は、興味も楽しくもない女達の相手をしなきゃならないし、酒のピッチが早い彼女を見ると心配でしょうがない。

実際、周りにいる男が下心あり気な顔で彼女と話している。


いい加減周りの女たちの相手にウンザリしていると、彼女が部屋を出て行くのが見えた。

誰かにこのまま持ち帰られるんじゃないかと心配したのと、彼女と話すチャンスだと思いトイレに行く振りをして部屋を出た。

彼女を追って非常階段に出ると、深呼吸している彼女が振り返った。


「霜織君も酔いさまし?」


彼女は無邪気に首を傾げて俺を見つめて来る。

思ったより意識ははっきりしているが、見つめて来る瞳が酒のせいで潤んでいる。

やっと彼女と話せると思っていたのに、そんな潤んだ瞳で見つめられるとそのまま抱きしめてしまいそうになる。

他の女のあからさまなボディータッチは平気だったのに、彼女に見つめられるだけで、クラクラしてくる。


俺の気持ちに全く気付く事もない彼女は、クラコンで俺と話さなくてもいいと平気で言ってのける。

ここまで意識されてないと心がささくれてくる。


「そうじゃなくて、俺は吉岡さんと話したかったんだけど。」


つい、本音を言ってしまった。

思わず言ってしまった本音。彼女は、不快に思わなかっただろうか?

自分の迂闊さを内心罵ってしまう。

いくら好きでも、いきなり彼女にそんな事言ってしまったら警戒されないかと不安になる。

そんな俺に彼女が思いがけない事を言った。


――― 『いつでも話す機会がある。』


その一言にささくれていた心が、その刺々しさをなくす。

本当に彼女の一挙一動に、俺は振り回されていると思う。

だってそうだろ?さっきの『いつでも話せる』ってことは、俺の事を少なくても嫌いっていうわけじゃないって事だろ?

そう思ってしまったら、顔がにやけてきそうだったしドキドキしてきた。

たったこれくらいの事で、―――彼女はたったこれくらいの事で、俺の心を揺り動かす。


自分を落ち着かせるために、非常階段に残ると言った俺を彼女が振り返る気配がしたけど、今のにやけてしまいそうな顔を見せるわけにはいかないから、ずっと手すりに凭れて夜空を見上げていた。



※ ※ ※



平常心に自分を戻して部屋に入ると、そろそろ一次会の終わりの時間になっていた。この後は、二次会のカラオケに皆が流れていく。

俺は二人で抜けようと誘って来る女達をかわしつつ彼女を探すと、洗面所に続く奥まった廊下に蹲る友達を介抱している彼女を見つけた。

幹事でする事があるから先にカラオケに行くように邪魔な女達を追っ払って、彼女に近づいた。


「吉岡さん。二次会行けそう?一応人数確認したいんだけど。」


いかにも幹事の仕事と装って話しかけると、少し困った顔をした彼女が友達をちらりと見た。


「止めとく。彩音ちゃん動けそうにないし、家に連れて帰ろうと思って・・・」


「そうだね。彼女結構酔っているみたいだけど。大丈夫?手伝うよ。」


そう言って、酔っている彼女の友達を支えて歩きながらタクシーを捕まえるために外に出る。


「一人で大丈夫?俺も一緒に付いて行こうか?」


「大丈夫だよ。彩音ちゃんも歩けるし、家の前までタクシーで帰るから。」


「そう?じゃあ、何かったら携帯に連絡して。」


そう言って連絡先を交換した後、タクシーに乗って帰る彼女を見送った。

ずっと知りたいと思っていた彼女の携帯番号とメアドが俺の携帯のメモリーに入っている。

今回面倒な幹事をやって良かったと心から思った。

クラコン中はほぼ話す事が出来なかったけど、彼女からの思いがけない言葉と連絡先―――

今日は、自分が思った以上の収穫があったと思う。


次に会う布石ができた。

彼女の思いがけない言葉は、少なくとも嫌われていないという事だし、

会うための手段(連絡先)が手に入ったんだ。

クラコンで一回話すよりも、こっちの方が断然今後に繋げる事が出来る。


やっぱり、神様は俺の頑張りを見ていてくれたんだ。

彼女の連絡先は、頑張った俺へのご褒美に違いない。







颯太が最後ファンシーなキャラ(陽菜に関してだけです)になってしまいました。

最初のキャラと違う様な・・・

『恋は人を変える』を体現していると思って下さい。


さて、ここまでのんびりとした感じでしたが、そろそろ物語も動き始めます。

お気付きの方もいると思いますが、あの人・・・です。

でも、その前に・・・?


今後の参考や励みになるので、感想お寄せくださると嬉しいです。

minimone

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