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第10話 入学式:新たな出会いと期待 side 陽菜


大学の入学式。

正門前は、沢山の人がいた。話には聞いていたけど・・・凄い。

何が凄いって結衣と正門を通り抜けて会場に行こうとしたら、

あっという間にサークルの勧誘をする人たちに囲まれた。

結衣と一緒だから目立ったんだと思う。

今日の結衣は、ベージュのパンツスーツを着ていて大人っぽい雰囲気の中に女性らしさがあった。

まだ、どのサークルに入るかなんて決めてないからって断ってるのに男の人は諦めてくれない。

どうしようかと困っていたら、急に腕を引っ張られ誰かに引き寄せられる。


「そろそろ式の時間だから、行こう。」


すこし、硬質な声が上から降ってくる。

そのまま引っ張られる様に手を繋いで歩いてたけど、恥ずかしさと居たたまれなくなって手を離す様にその助けてくれた人物に頼んだ。

その人は気付いてないみたいだけど、私たちは周りから注目されていた。

特に女の子達の視線が突き刺さってくる。

周りの事など全く気にしてないのか、私の訴えに振り返ったのは霜織颯太くんだった。


ファミレスで一度会ったきりだった彼が一緒の大学に入学すると結衣に聞いた時は驚いた。

あの当時でK大は合格圏内だったから、きっと彼ならもっと上の大学に行けたんじゃないかと思う。

彼に追いつこうと足早に歩こうとしたら、彼は自然と歩調をゆっくりにして私が歩きやすいペースを作ってくれた。


繋いでいた手を離すと、助けたことが迷惑だったか窺う様に尋ねてきた。

まさか霜織君が助けてくれると思ってなかった事と、

久しぶりに見た彼は、細身の黒スーツにストライプのシャツ、無地のネクタイをしていて大人っぽくなっていた。

同い年には見えなかったし、少し落ち着いた雰囲気になっていたと以前会った時と変わらない甘めのマスクと一緒だったけど、

あの時は少し軽い雰囲気があって自然と警戒してしまっていたけど、今はそんな雰囲気もなくなってあんまり警戒心を抱く事もなかった。

そんな彼に窺う様に顔を覗かれたら、どんな子でも赤面してしまうはず。

もちろん私も知らずに少し赤くなってたはず。だって顔に血が集まっているのが自分でもわかって、それを笑顔で隠しながらお礼を言った。


私たちの前を歩いていた結衣と翔くんを見ると、同じ様に囲まれていた結衣を見た翔君は少しご機嫌斜めになっているようだった。

普段、物事に動じなさそうな彼が結衣の事に関しては別になるらしい。

『少し、心配性なのよ。』結衣はよく言ってるけど、嬉しそうにそんな翔君のことを私に話してくれた。

そんな二人は私の理想のカップルでもある。


※ ※ ※ 


入学式の会場に着くと学部ごとに座るため、皆と別れた。

私の学部は、英文部。

小さい頃絵本を読む事が大好きだった。

私が好きな絵本はほとんどが海外の物で、翻訳されたものだった。

父親の海外出張のお土産にお気に入りの本の原文をもらった。

その原文を読みたいという思いで英語への興味に繋がった。

中学生になると、友達に誘われてよく映画に行くことが増えて、そこで感じる日本語と英語のニュアンスの違い。

翻訳じゃなくて自分で英語を理解したいと思った。

そして、私が尊敬している翻訳者がK大の講師として勤務している事を知って以来、私はひたすらK大を志望した。

この春長年の希望が叶って、私は押さえきれない気持ちで自分の席に着いた。


周りを見ると皆大人っぽかった。ちょっとドキドキ緊張していた私に隣の席の子が話しかけてきた。

彼女は、中山彩音ちゃんといって隣の県出身で、大学進学を機に一人暮らしを始めたらしい。

女の私から見ても、すごく可愛らしい。 声がソプラノで、ふふって笑う顔が小動物みたいで守ってあげたくなる子だった。


入学式が始まっても、小さい声で二人少し話た。

彩音ちゃんと仲良くなれた事で緊張していた気持ちが落ち着いた頃、新入生代表で壇上へ上がる霜織君が見えた。

堂々と新入生代表を述べている霜織君は、注目の的だった。

私の周りでも「うそー!カッコイイ!」「モデルか何か?」って騒いでる女の子が一杯いた。

初めて会った時も思ったけど、皆が騒ぎたくなるのは分かる。

カッコイイんだよね霜織君。人を惹き付けるオーラみたいなのがあると思う。

そう言えば、霜織君の乱れた(?)噂はいつの間にか無くなっていた。

うちの学校でも、霜織君に振られた子が結構いてそこから噂を聞いたんだけど、どうやら本気になった子ができたらしい。

そのために、これまでみたいな軽い事をやめるって色々な子との関係をスッパリ切ってしまったらしい。


そんな噂を聞いて、これまでの自分を一変に変える事が出来る程、人を好きになれるって凄いと思った。

それと同時に、一緒に食事をした時本当に失礼な事を言ったなと後悔もした。

まぁ、同じキャンパスだし今度会った時に謝罪しようと、そんな事を考えていたら彩音ちゃんが私の方を見た。


「あの人知ってる。霜織くんって言ってバスケがね、凄く上手くて優しいんだよ。」


会場内が暑かったのか、少し頬を赤くして私に霜織君のことを彩音ちゃんは話してきた。

どうして霜織くんの事を知っているのか不思議に思ったけど、気にする程でもなかったから彩音ちゃんの話に頷くだけにした。


「私の高校によく遠征に来てて、よく見かけたから知ってるの。でも、やっぱり彼って人気ありそうだね。」


少し困った様に笑う彩音ちゃんに相槌を打つ。


「そっか。霜織君はどこでも目立つんだね。高校の時もすごく人気だったよ。私の高校にもファンがいたみたいだし・・・」


彼の過去の噂に付いては何も言わなかった。

よく知らない他人が色々噂を話すのは良くないと思ったから。


「陽菜ちゃんも霜織君を知ってるの?」


「高校が近くで、やっぱり有名だったからね。一度うちの高校であった試合を見た事がある。彩音ちゃんの言う通りバスケすごく上手かったよ。」


不思議そうに霜織君について聞いてきた彩音ちゃんに、高校の時の事を話す。

彩音ちゃんは、私の話も楽しそうに話を聞いてくていた。

入学式当日にこんな良い子と友達になれて、大学生活は順調に始まった気がする。

これからの四年間に期待を膨らませて、残りの式に耳を傾けていた。






minimoneです。

やっと大学生編まできたって感じです。

そろそろ恋愛モードで二人には頑張って貰いたいところですが・・・

陽菜が恋愛体質じゃなくて、颯太が可哀想になってきます。


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