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ドキッ!?  美希のバレンタイン大作戦

2016年1月30日、2月6日、14日に書かれたものをまとめて投稿したものです

すべての物事には始まりがある。というか、始まりがなければ物事というのは生まれないのだ。この作戦が開始されたのも、ある男の欲望から始まったのだった。


平成27年1月30日 

ライブが終わり、美希は帰宅の途につこうとしていた。いつも通りの道を通って、いつも通りの自分の生活をしている家へと向かおうとした。いつも一人で帰っているものだから、少し寂しいと思うときもあるが、最近は慣れてきた。

だけれども、今日はそのいつも通りという事ができなくなってしまったのだ。



「バレンタインデーというものを知っていますか、ミス美希」

「お前が私の名前を呼ぶなんて珍しいな」


ライブを実施している地下秘密基地アイカフェの社員通用口の入り口でジョンは待っていたのだ。安心してほしい、ジョンはこそこそと隠れながら待っていたわけではない。むしろ、通用口の警備員と軽い雑談をしながら待っていたのだ。これほど堂々と待てたのも、地下秘密基地アイカフェの従業員から信頼を勝ち得ているからなのだ。

そのかいあってジョンは美希を迎えることが出来、話を切り出すことができたのだった。

今回の物語はすべて、ここから始まったのだ。


「だから、あなたはバレンタインデーを知っていますかと聞いているのですよ。さっさと答えてください」

ジョンは非常に苛立った様子で聞いてくる。


「なんでそんなに苛立っているんだよ?」

美希もその苛立っている様子を見て、苛立ち始めてきた。

いつもならばここでジョンは一歩引いてちょっとだけ怯えた声で、改めて丁寧な口調で聞いてくるが、今回に限ってはジョンは一歩も引くことをしなかった。


「はやく教えてくださいよ」

すごーく、怖い。いつものジョンとはまた違った姿だ。


「・・・なんで今日に限ってそんなにイラついているんだよ」と、静かに美希は呟いた。

「なんですか!」 ジョンは、厳しく追及した。


「なんでもないよ! バレンタインデーなんて知らないわよ!!」

あんまりにもジョンがうざかったもので、強めに言い返した。しっかりと質問にも答えられているので、よしとしよう。悪いのは全部、全部ジョンだ。


美希が言い返したあと、通用口にはちょっとばかり変な雰囲気になった。


美希は「あっ、やっちまった・・・」と思ったらしく、口を手で覆っている。これは美希なりの驚きの表情だ。


「やはり、そうですか・・・」

うんうんと頷きながら、ジョンは美希を見つめる。


「な、なによ・・・」

ちょっとだけ美希は、照れてしまった。


「まぁ、あなたもノブと一緒の過去からやってきた人間ですからねぇ・・・といか、何年か生活しているのにまだ知らなかったんですね・・・・・・」

「悪かったわね!」


なんだか良く分からん会話がされていて、通用口付近の人たちは「こいつら、何についてはなしてるんだか、よう分らんな。ちょっと、ヤバイ奴等なのかもしれんな」と考えているのだった。その考えは半分当たっていた。素晴らしい洞察力だ。尊敬したい。


「とりあえず、いつものカフェに移動しましょう。話はそこでまたしましょう」

「うん」

とりあえず二人は、これ以上通用口の人達に迷惑をかけないようにカフェに移動するのだった。



―――― 



カフェに移動した二人は、いつも通りコーヒーとドーナッツを食べている。


「あなたもドーナッツをいける口になりましたか」

「うん。これでも、一応は現代の女子だからね」

「どの口が言うんですか、フフッ」

「殺すぞ?」

「すいません」


コーヒーを一杯飲みほした後、ジョンはついに話を再度切り出し始めたのだった。


「で、バレンタインデーなんですけれども・・・」


非常に思い面持で、ジョンは語りだしたのだった。


「・・・」 美希もまた、その語りをじっくりと聞くのだった。


「そもそも、バレンタインデーというのはローマ時代のキリスト教殉教者、つまりキリスト教のために2月14日に命を失ったウァレンチヌスの死を惜しむ宗教的行事でしたが、14世紀ごろから若い人達が愛の告白をその日にするようになりました。そして、この日本では昭和三十年代後半ごろからマスコミなどを通じてチョコレートを作る会社が「バレンタインデーはチョコを送ればええよ!」という広告を流して、このころから日本ではバレンタインデーといえばチョコレート、という感じになっていったのです。チョコレートを送る文化は女性の心をつかみ、女性はバレンタインデーにチョコレートを男性に送るという習慣も作り出したのです。女性が送るチョコレートには二種類あり、一般的に送られるのが義理チョコ。そしてもう一つが本命チョコというものです。通常では、友達、もしくは友達以上恋人未満の男性に送るのが義理チョコ。恋人以上に送るのが本命チョコとなっています。まぁ、男性からしたらチョコレートをもらうだけでもうれしいのですがね・・・」


長々と、ジョンは語った。語っている間は一回も目を閉じることをしなかった。怖いな。


「・・・で、何が言いたいわけ?」

語っている間、ドーナッツを黙々と食べていた美希はジョンが語り終わると同時に聞いている間に思った疑問を切り出した。


するとジョンは「フフフフっ」と笑った。


「なんで笑うのよ。気色悪いわよ」

引き気味で、震えながら美希は言った。確かに、気色の悪い笑い方だった。


「ようは、簡単ですよ」

ジョンはいつも通り、ニヤッとしながらこう言った。


「2月14日にチョコレートを下さい、ということです。好きなアイドルからもらうチョコレートはまた格別なものだと思いますから」


美希は即答した。

「嫌だ」 と。


「嫌、と言われましてもこればっかりは日本にいる女子は避けられない運命なのですよ」


美希はジョンの台詞を聞いて一つだけわかったことがある。こいつ、ただ単に私からチョコが欲しいだけなんだ、ということだ。


「またそんなことを言って、どうせ避けられない運命っていうのも嘘なんでしょ?」

美希は冷静にジョンの言葉を返す。

するとジョンは、「ふふふっ」と笑い、「そんなに疑うのならば、あなたの持っているスマートフォンで調べてみてはいかがですかぬぁ?」と言ったのだった。

最後の“な”の部分をわざと“ぬぁ”と言ったところは誰であってもイラッと来るところだが、美希は冷静さを失わないために、イラつかないでおいた。


「全く・・・分かったわよ」

とりあえず美希は、スマートフォンでジョンの言っていたことが本当かどうかを調べることにした。


――――


「・・・」

美希はジョンの言っていたことが本当かどうかを調べた。そして、調べ終わった後美希は無言になってしまった。


「どうですか? 私が言っていたことが本当だったんで、何も言えないでしょうに」

にやにやと、ジョンは美希に対して笑っている。


「・・・そうよ」

本当に、ジョンが言っていたことが情報として、インターネット上に書かれていたのだ。美希は、ジョンの冗談だと思っていたことが実際に書いてあったという驚きで、びっくりしてしまい、何も言えなくなってしまったのだ。


だけれども、これでジョンの言っていたことが正当化された。

「ということで、あなたはチョコレートを私に、ついでにノブにも渡すという義務が発生したのですよ!」

正当化された瞬間に、ジョンは自信をつけてこういった。そして小さく「あぁ、昨日のうちにいろいろとこの時代の情報を書き替えておいて良かった」と、つぶやいたのでした。


美希は、ため息をした後「分かったわよ」と小さくつぶやいた。


「チョコレートを渡せばいいんでしょ、2月14日に」

「理解が早くて、助かりますよ」

ジョンはほっとした顔つきになった。


美希は、一度コーヒーを飲み「ふぅ・・・」と息をもらした。


「じゃあ、2月14日。チョコレート楽しみにしてますからね!」

ジョンはにこやかに言う。


「まぁ、既製品のチョコレートなんだからあんまり期待しないで待っててよね」

美希もニコッと笑った。


「既製品でも、好きなアイドルから貰えるということが一番大事なんですよ」

「そういうものなのか?」

「そういうものです」


いつも以上に、この二人の会話は平和的だった。



――――しかし、バレンタインデー当日に事件は起こってしまったのだった。


・・・決戦の日・・・


「えっ・・・チョコってこんなに高かったっけ?」

美希はスーパーに行き、ジョンと信長用のチョコレートを買いに来た。しかし、日本のチョコ会社の陰謀によりチョコレートの値段は通常時の値段よりも倍の値段に釣り上げられていたのだ。そのことを知らずに、彼女はスーパーに来てしまい、驚愕しているのだ。

とりあえず、値段の安いチョコレートを探そうとするも、値段の安いチョコレートは手作り用としてすでに完売していたのだった。

ここで、「安いチョコレート売ってなかったから、買わなかったよ」と言ってしまえば、相手にちょっとした失望感を与えることになるが、それで終了、終結ができる。

だけれども彼女は、“約束”というものに強い使命感があり、これを破ることを決して許さなかったのだ。


「はぁ・・・仕方がないけれども、この高いチョコでも二つ買っていくか」

美希は妥協して、あるチョコレートを買ってしまったのだ。


高級チョコレートを・・・・・・。


※※※※


「よし。チャイムを鳴らすか!」

ジョンたちの家の扉の前に立ち、チョコレートをもって彼女はチャイムを鳴らすことを決意した。

そして、勢いよくチャイムを押した!


ピンポーン


「・・・!」

ドタドタドタッ、と部屋の中から音が聞こえる。そして、奴が扉を開いた。


「チョコレート配達ご苦労様です」

玄関を勢いよく開けて、ジョンはそんなことを口走る。


「配達しに来たわけじゃないわよ! いいから早く部屋に入れなさいよ!」

典型的なツンデレのような対応を美希は取った。その対応をにやにやと見つめ、ジョンは美希を部屋へと招き入れた。


部屋の中に入ると、美希はあることに気づいた。


「あれ? 信長様はどうしたの? 今日はアルバイトのシフトじゃないのに」


部屋の中には、いつものほほ~んとしている信長が居なかったのだ。


「あぁ、ノブなら今ゲームセンターに行ってますよ」

美希に出すお茶を作りながら、ジョンは答える。

「なぜにしてゲームセンター?」

「自分がモデルになってる新しいゲームが出たから、それをやりに行ってるんですよ」

信長はいつも、自分がモデルになっているものが発売、展示されるとバイトで稼いだお金をそれにつぎ込んでいるのだ。

「へ~、どうせ私が悪者になってるシミュレーションゲームでしょ? よく信長様も飽きないわね」

どうやら美希も、よく理解しているらしい。

「いえ、それがですね。新しいゲームはパズルゲームらしいんですよ」

「信長とパズルゲーム・・・開発者、頭おかしいわね」

「同意見です」

奇跡的にも、この二人の意見が合致したのだ。


――――


「どうぞ、お茶です」

「こりゃどうも」


ジョンは美希にお茶を出した。いつものお茶だ。

そのお茶を美希はいつもと同じように、机の上に置いてあるせんべいをポリポリと食べながら飲んでいる。


「あの~・・・」

「んっ?」

ジョンが申し訳なさそうな顔をして、美希に尋ねる・


「チョコレートを下さい」

にっこりと、欲しいということを明らかにさせる。

それを聞いた美希は、「あぁ・・・そういえば今日はそれを渡すために来たんだっけ」と言った。


「そうですよ! さぁ、早く私のチョコレートと、ついでにノブのチョコレートを渡すのです!!!!」

ジョンは、美希が言った後一転して強気になった。


ぺチン!


「イタっ・・・ちょっと強気になりすぎました。ごめんなさい」

「分かればよろしい」

美希はジョンの頭を軽くたたいて、どちらのほうが立場が上か明らかにさせた。


「じゃあ、チョコレートを贈呈してやろう」

フフフッ、と笑いながら美希はジョンにあの、高級チョコレートを手渡したのだ。


「まぁ、安くても全然いいですか・・・あっ?」

「あん?」


手渡されているチョコレートを見て、ジョンは目が点になってしまった。


「ヘイへ・・・イ・・・これはどういうことですか」

ジョンはかなり困惑しながら、美希に尋ねた。困惑するの仕方がないだろう、だって高級チョコレートを素面に渡してきたのだから、どういう反応をしたらいいのか分からなくなってしまったのだ。


「いや、別にそのままの意味だけれども・・・」

美希も、別に意味など無いから「そのままの意味だけれども」と言ったが、この台詞は高級チョコレートの受け取り手にとっては、ものすごく大事なセリフになってしまうのだ。


「そのままの意味ですか・・・」

ジョンは悩んだ。もしかしたら美希は自分に好意があるのかもしれないと。ここで、本当に好意があるのか心をのぞいて確認したほうがいいのか。いや、確認してはいけない。こういったことを確認するのは、男として最低なことだ。・・・とまぁ、馬鹿みたいに色々なこと詮索をした。

そして、ジョンはこういったのだ。


「ミス美希。あなたの気持ちは分かりました」

「お、おう」

ジョンがあまりにも、いい顔をしていうものだから美希はすこし引き気味で答えた。


「あなたの気持ちを善処したいと思うので、今日は帰ってください。ノブのチョコレートはしっかりと本人に渡しておきますから」

「えっ・・・ちょっと・・・」

「いいんです! もう、今日は分かりましたから、今日は帰ってください」


ニコニコしながら、だけれどもそのニコニコを頑張って隠そうとしている表情でジョンはそういってくるものだから、美希は何も言えずに帰ることにした。



「全く、何なのよ」

美希は家に帰った後、ジョンがなぜあんな表情になったのかを考えたが、結局結論は出なかった。


しかしその後ジョンから花束を渡されて、謎のメッセージを言われて初めて、「あぁ、高級チョコレートを渡したからこんな態度を取っているのか」と気づき、その後ジョンをボッコボッコにしたという。


ついでにだが、ノブは高級チョコレートを食べた後、そのチョコレートの虜になってしまったようだ。

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